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見えない・見えづらい方へのお役立ち情報

ソーシャルディスタンスの重要性と視覚障がい者の苦悩

ソーシャルディスタンスをとる男女

新型コロナウイルスによって私たちの日常生活は大きく変わりました。
さまざまな所で影響が出ていますが、私たち視覚障がい者も「見えづらい」や「見えない」ことにより、大きな影響を受けています。
今回はそんな視覚障がい者の状況とソーシャルディスタンスでの声かけによるサポート方法を紹介します。

人とのつながりは絶たないでいい「ソーシャルディスタンス」と「フィジカルディスタンス」の違い

現在、新型コロナウイルスの感染防止対策として、人と人との距離をあける「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」という言葉がよく使われています。
しかし、この言葉は「人と人との社会的なつながりを断たなければならないとの誤解を招きかねない」ということで、世界保健機関(WHO)では「物理的距離の確保」を意味する「フィジカルディスタンス」もしくは「フィジカル・ディスタンシング」に言い換えるよう推奨しています。

視覚障がい者とソーシャルディスタンス(社会的距離)

実際、ソーシャルディスタンスが広まってからは視覚障がい者はサポートを受けづらくなりました。
私も通勤など外出の時に、声をかけていただく回数が減ったように感じています。
例えば「手引き」の場合、肩や肘を持つため密接になってしまうことや、歩きながら周りの状況を声に出して教えてもらうため、いろんな場所を触った手から感染するかもしれないという不安や、飛沫による感染の心配がお互いにあります。

また視覚障がい者が一人で歩く場合、手すりやつり革などを持たないと危ないため、手にウイルスがつく可能性が高くなり、そこから自分や周りの人が感染してしまうのではないかという不安もあります。
いつ、どこで感染するか分からないような今の状況では、お互いに不安を感じてしまっても仕方ないことだと思います。そこで、白い杖を持った人が困っていたら、次に紹介する「離れたところからでもできる声かけ方法」を覚えておいてもらえると嬉しいです。

▼基本的な手引きの方法はこちら
町で目の不自由な方が困っている時の声かけサポート方法をご紹介

ソーシャルディスタンスでの声かけ方法

それでは白い杖を持った人が困っている時にどのような声かけができるのか、実際に私が声をかけてもらった中から「すごく助かったな」と思ったものをご紹介します。

スーパーやコンビニエンスストアでの声かけ

私は明るい所だと少し見えているので、商品や値札に顔を近づけて確認することがあるのですが、それでも見えない時に近くにいた方が代わりに読んでくださったことがありました。
またレジ待ちの列に並び、前の方が進んだことに気づいていなかった時に「前の人が進みましたよ。2歩前に進んでください。」と具体的にどのくらい進めばよいか教えていただいたこともあり、とても助かりました。

横断歩道での声かけ

私は夜盲症という症状があり、日が落ちて暗くなるとほとんど見えなくなるので、夜道を歩いていても横断歩道があることに気がつかないことがあります。以前、音が鳴らない横断歩道で信号が赤になっていることに気がつかず渡ろうとしていた時に、隣にいた人から「赤だから危ない」と声をかけていただき助かりました。

音が鳴る信号機もたくさんあるのですが、全国の音が鳴る信号機のうち、約8割が近隣騒音の問題で音が鳴る時間が短くなっているというニュースを見たことがあります。毎日新聞2020年12月29日記事
もし白い杖を持った人が赤信号で渡ろうとする様子や、青信号になっていることに気がついていない様子を見かけたらぜひ声をかけてください

食事の時の声かけ

私には小学生の子どもがいるのですが、食事の時に「ご飯のお茶碗は8時」「おかずのお皿は4時」と時計を例えに、何がどこにあるのかを教えてくれます。
これは「クロックポジション」といって、机の上などを時計の文字盤に見立てて、お皿などが何時の方向にあるのかを伝える方法です。
この方法なら離れたところから伝えることもでき、見えていなくてもお皿などの場所を的確に知ることができます。

時計に例えて場所を知らせるクロックポジション

また「2時の方向に進んでください」や「10時の方向に机があります」など食事の時以外でも使うことができます。

この他にも最近、視覚障がい者の方が駅のホームから落下されて亡くなってしまったというニュースを見ました。駅で白い杖を持った方が歩いていたら、皆さんから手引きや声かけをしていただけると悲しい事故も減ると思います。
ちょっとしたサポートでも見えていない人にとっては大きな助けになりますので、これまで紹介してきた内容を一つでも覚えておいてもらえると嬉しいです。

まとめ

全国の視覚障がい者の皆さんの中にも私が体験した以外の「ヒヤッとした体験」をたくさんお持ちかと思います。
また、困っている人を見かけた時に手伝いたい気持ちはあるけど感染に対する不安がある方もいらっしゃると思います。
離れたところから声をかけることでサポートになる場面もたくさんありますので、「困っているのかな?」と思ったら声かけを実践してみてください。

皆が不安な時期だからこそ、物理的な距離はとりつつも、人と人とのつながりはしっかり保ち、皆で一緒に乗り越えていきましょう。

 

この記事を書いた人

山本 旭彦

わかさ生活ヘルスキーパー。網膜色素変性症によって視野が狭くなり、暗いところも見づらい症状をもつ。視覚障がいへの理解、気軽にサポートできる環境を広めようと、「あきひこさんの一日」と称した出張授業を小学校などで継続的に実施しています。

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