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足への振動で視覚障がい者の外出をサポートする全く新しい歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」

白状をもつ人の足元

視覚障がい者の外出

を含めて多くの視覚障がい者が「一人でどこへでも出かけられるようになればもっと自立した生活が送れる」と考えています。
しかし、視覚障がい者の外出時の単独歩行は「ぶつかってしまう」「道に迷ってしまう」など常に危険や困難と隣り合わせです。
そんな状況を回避するための方法として、同行援護を利用しての外出、ナビゲーションシステムなどの補助機器・補助アプリの使用、盲導犬との歩行などがあります。
しかし、様々なサポートがありますが、同行援護者も盲導犬も不足しているのが現状です。そこで期待が高まっているのが、ナビゲーションシステムなどの機器やアプリなどのテクノロジーの進化です。
ここ数年様々な機器やアプリがリリースされていますが、その中でも特に注目されているのが全く新しい視覚障がい者向け歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」です。 

「あしらせ」とは 

あしらせ画像

引用:あしらせ

足に振動を伝える靴装着型デバイスとiPhone専用アプリ(android対応の時期は未定)をBluetoothで連動し、目的地まで案内してくれる歩行ナビゲーションシステムです。
開発したのは、自動車大手メーカー「Honda」初の社外スタートアップ企業である「株式会社Ashirase」です。
「あしらせ」は、視覚障がい者の行動範囲を拡げていくことを後押しするため、150名以上の当事者の体験やインタビューを元に、「スマートフォンを持たなくていい」「聴覚を邪魔しない」といった、視覚障がい者の外出時の安心感につながることをコンセプトに開発されました

3つのポイント

「あしらせ」3つのポイントをご紹介します。

 「安全に歩くこと」と「迷わないように歩くこと」の両立をサポート

覚障がい者は残っている視力や視野、聴覚、足の裏や白杖などで周りの情報を収集しながら歩いているのですが、かなりの集中力が必要です。
安全に迷わず目的地までたどり着くのは大変なのですが、振動によるナビゲーションであれば「安全に歩くこと」に集中できます。 

 独自のアルゴリズムによるナビゲーション

発当初から視覚障がい者の声を元にユーザーが負担なく使うことができるよう独自のアルゴリズムを開発されました。
デバイスは前後左右4方向振動する仕組みで、直進する場合は両足の前側、右に曲がる角では右側が振動するなど様々な振動パターンが組み込まれています。
また道がわからなくなった時にはスマートフォンを確認しなくても靴で地面を「トントン」とたたくだけで、進行方向の確認ができる機能もあります。 

簡単・シンプルで時間を短縮

靴を履いてアプリに目的地を入力すればあとは振動を頼りに歩くだけ。目的地の方向や曲がり角も振動で教えてくれるので目印にしているお店などを探したり、何度もスマートフォンのナビゲーションアプリを確認しなくても大丈夫。出発してから目的地に到着するまでの時間を短縮することができます。

※デバイス購入費以外にアプリを使用するための月額利用料が必要です。
※ナビ中はアプリで音声による振動パターンの説明や目的地までの距離、所要時間なども音声で聞くことができます。 

クラウドファンディングでも大注目!

2023年1月から3月まで実施された購入型クラウドファンディングで先行販売モデルが発売され、開始からわずか2日で目標金額の100%を達成、2週間で400%、最終的には750%を超える実績でした。
支援に参加した方や当時者の方からは、

「発売をとても楽しみにしていました!たくさんの人に使っていただけるよう応援しています!」
「私は弱視で、普段あまり知らない場所へは出かけられず、不便を感じていました。「あしらせ」があれば、行動範囲がぐっと広がるのではないかと期待しています。」
「これまで行ったことのない場所にも勇気を出していけそうな気がして、わくわくしています。応援しています!頑張ってください!」
などの声が寄せられたことからも注目度の高さが伺えます。
そして、目標以上に集まった資金は、サービス改善、製造費用に充て、より多くの視覚障がい者の方に、1日でも早く1人で自由に歩くことを体感してもらえるよう利用されるそうです。  

 

ロービジョン機器展示会での体験

ロービジョン機器展示会は視覚障がい者をサポートしてくれる機器やアプリなどの最新情報を知ることができる催しです。以前大きな展示会に行った時に前から気になっていた「あしらせ」が出展していたので体験しました。
靴を履いてみるとデバイスがついていても全く違和感はなく、歩きながら様々な振動パターンを試させてもらいました。振動の大きさも変えられるということで誰でもしっかり振動がわかりそうです。私は徐々に見えなくなる目の病気「網膜色素変性症」があり、最近急に視野が狭くなったので、一人で外出するのが怖いと感じていました。「あしらせ」があれば勇気を出して行ったことがない場所にも行けそうな気がします。 

 

最後に 

クラウドファンディング以降ロービジョン機器の展示会では整理券が配られるほど体験希望の方が増えているという話を聞きました。それだけ多くの視覚障がい者が一人で外出することに悩み、テクノロジーの進歩に期待しているということです。
現在販売されたのはクラウドファンディングでの先行販売モデルのみで、本発売は2024年夏予定ということで、発売されるのが楽しみです! 

参考URL
「あしらせ」の購入予約・体験店舗はこちら
https://www.ashirase.com/
「あしらせ」の特徴
https://www.ashirase.com/feature
「あしらせ」のアプリ、ダウンロードページ
https://apps.apple.com/jp/app/%E3%81%82%E3%81%97%E3%82%89%E3%81%9B/id1631484935 

 

この記事を書いた人

山本 旭彦

わかさ生活ヘルスキーパー。網膜色素変性症によって視野が狭くなり、暗いところも見づらい症状をもつ。視覚障がいへの理解、気軽にサポートできる環境を広めようと、「あきひこさんの一日」と称した出張授業を小学校などで継続的に実施しています。

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