子どもから大人まで!事例から考える、ビジョントレーニングで期待できる効果

  • 戸田 友里
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10年ほど前から書籍やテレビでも、しばしば話題になるビジョントレーニング。特に2017年頃には、ビジョントレーニングを取り入れたプロボクサーの村田諒太(むらたりょうた)選手が世界チャンピオンになったことで注目を集めました。しかし、実際その効果がどういったものなのかについては、あまり広く知られていません。そこで今回は、ビジョントレーニングの狙いについて、一般的にいわれている事を事例を交えて紹介します。

ビジョントレーニングで期待できる基本的な5つの効果

まず、ビジョントレーニングで期待できる効果として、「素早く目を動かし、見たいものを見られるようになる」「左右の目のバランスを整える」「見たものを認識し、記憶しやすくなる」「目と体を協調して使えるようになる」「周辺視野を広げることができる」という5つがあげられます。

具体的にどういうことなのか、詳しくお話しします。

1.素早く目を動かし、見たいものを見られるようになる

私たちは見るために目を動かしています。これは視覚を支えるもっとも基本的な機能で、「眼球運動」といいます。眼球は筋肉の働きによって精密な動きをしていますが、実は思ったように動かせていない人が多いといいます。

眼球運動がスムーズにできないと、見たいものにピントが合わせられず、ボールなど早く動くものを目で追えない、本を読んでいるときに同じ行を何度も読む、行を飛ばして読むなどの問題が出るといわれています。

ビジョントレーニングでは、眼球運動を鍛え、眼を素早く動かしてピントを合わせたり、見たいものをきちんと見たりするトレーニングを行います。

2.左右の目のバランスを整える

人は、左右の目をバランスよく使ってものを見ることで、ものの立体感や距離感を把握します。このバランスが崩れると、立体感や距離感をうまく掴むことができません。

立体感や距離感がうまくつかめないと、人やものとぶつかりやすくなる、見えやすいほうの目で見る癖がついて姿勢が悪くなるなどの弊害もあるのではないでしょうか。

ビジョントレーニングでは、左右の目のバランスを整え、立体感・距離感をうまく把握できるようなトレーニングも行います。

3.見たものを認識し、記憶しやすくなる

文字や図形を覚えるとき、私達はまずその形を覚えます。見たものを認識する力が弱いと、字の形を正確に把握し、覚えることができないといった課題につながることも。

見たものを認識し、記憶する力が弱いと、その結果として漢字を覚えるのが苦手、丁寧な字が書けない、まっすぐな線が引けないといった問題を抱えやすくなるのではないでしょうか。

ビジョントレーニングでは、見たものの情報をきちんと処理し、認識できるようなトレーニングを行います。

4.目と体を協調して使えるようになる

ぶつかりそうになったときに人を避けたり、道具を使ったりするときには、目で見たものを頭の中で処理し、体をどう動かすか考えて行動しています。

この力が弱いと、体を動かすのがぎこちなくなる場合があるそうで、球技などのスポーツ、折り紙などの手先を使った細かい作業や箸使いなどに難しさを感じることも。

ビジョントレーニングでは、目と体を協調して動かすためのトレーニングを通じて、見ているものとそれに合わせてスムーズに行動できるよう、トレーニングを行います。

5.周辺視野を広げることができる

自分の周囲の空間にある人やものを把握するためには、周辺視野を広げることが大事です。

周辺視野が狭いと、意識が一点に集中してしまいます。その結果、スポーツをしている最中に敵・味方の動きが全体感で把握できない、視界の端から飛び出してきたものにうまく対応できないなどの問題を抱えることがあります。

ビジョントレーニングでは、この周辺視野を広げる事を狙ったトレーニングも行います。

ボクシング村田諒太選手で話題になった効果

2017年に、WBA世界ミドル級のチャンピオンになったプロボクサーの村田諒太選手がビジョントレーニングを取り入れていることが話題になりました。

特に注目を集めたのは、世界戦の予備検診時に、村田選手の左目の視力が1.0から2.0に上がっていたことです。しかし村田選手本人は、「変わったのは視力ではなく目の動き方」と答えています。また同時に「ビジョントレーニングを取り入れてから調子がいい」とも語りました。

目と手の反応が良くなり、パンチをする力、パンチをブロックする力が上がった

村田選手のビジョントレーニング指導者のひとり、オプトメトリスト(※)の北出先生がJ-CASTニュースのインタビューに語ったところによると、村田選手は当初、目を動かすときに頭も一緒に動かしていたそうです。そこで頭を動かさず目だけを動かすトレーニングを中心に、ビジョントレーニングを毎日行うことにしました。

※オプトメトリストとは欧米先進国を始め、アジア・アフリカなどの多くの国で国家資格として認められている視覚機能検査・訓練士のことです。

その結果、動いているものにより素早く反応することができるようになり、相手のパンチをブロックする力、動いている相手にパンチを当てる力が向上したとのこと。

ビジョントレーニングで視力が上がったということが注目されがちでしたが、実際はこのように、目の動き方や目と手の反応がよくなったということです。

アスリートも高齢者も、大人にとっての効果

スポーツウェアを着た男女の写真

「見る力」に問題を抱えている人は、大人にもいます。北出先生の『発達が気になる子の学習・運動が楽しくなるビジョントレーニング』によると、書類の見落としなどのミスが多い大人の中にも、「見る力」に問題を抱えている人がいるといわれています。そこで、ビジョントレーニングを大人が行った場合の事例について紹介します。

60代から80代の読書スピードが上がった

スポーツと視野を専門とする石垣尚男(いしがきひさお)愛知工業大学教授が出した『高齢者の眼球運動トレーニングの読書への効果』という報告(※1)では、67~83歳の高齢者に眼球運動トレーニングを実施した事例が紹介されています。

1日1回の往復眼球運動を週4回、3ヵ月続けて行ったところ、眼球運動能力が向上し、特に縦書きの文章を読む速度が早くなりました。また、被験者のアンケートでも、読書スピードが早くなり新聞や本を読むことが増えたとの意見も一部みられました。

大人でも、ビジョントレーニングをすることで眼球運動をスムーズにして、見る力を鍛えることができるようです。

ボールの見え方が30代前半から変わらなかった

オプトメトリストである内藤貴雄(ないとうたかお)先生の『スポーツのための速読ビジョントレーニング』(※2)には、アスリートの事例がいくつか紹介されています。

ソフトバンクホークスなどで活躍した小久保裕紀(こくぼひろき)元プロ野球選手は、週1~月3回程度、内藤先生監修のもとビジョントレーニングを行っていました。プロ野球選手といえども、一般的に年齢が上になるほど速球への反応は鈍くなりがちです。しかし小久保元選手は、30代前半頃のボールの見え方をキープすることができていたといいます。

最初に紹介した村田選手の事例同様、アスリートにとっても、ビジョントレーニングで見る力を鍛えることは大切なことと捉えられているようです。

小学生から高校生まで、子どもにとっての効果

笑顔の子どもたちの写真

字がうまく書けない子どもが書けるようになった

北出先生の著書『学ぶことが大好きになるビジョントレーニング』(※3)には、マスの中にきれいに字が書けない小学2年生の子どもの事例が紹介されています。

この子どもを詳しく検査したところ、眼球運動がスムーズにできないことが考察されました。そこで月2回、1回75分間の「数字カード取り」や「ひらがな探し」などのビジョントレーニングを実施。結果、線がまっすぐ引けるようになり、マスの中にきちんとおさまる字が書けるようになりました。

また、同じく『学ぶことが大好きになるビジョントレーニング』(※4)には、高校生の事例も紹介されています。

この事例では、目のジャンプや両目のチームワークのトレーニングを中心にビジョントレーニングを行ったところ約1~2ヵ月で字がきれいになり、約6ヵ月で眼球運動が改善されたそうです。

ビジョントレーニングは、小学生はもちろん高校生でも効果が出たという事例があるのです。トレーニングを行う年齢が比較的高くても、改善できる可能性があるというのはうれしい結果ですね。

片付けができなかった子どもの机の周りがキレイになった

同じく北出先生の著書『学ぶことが大好きになるビジョントレーニング2』(※5)では、机の周りが散らかる子どもの事例が紹介されています。

この子どもも、眼球運動がスムーズにできませんでした。そこで、「文字探し」「おはじき数え」を中心にビジョントレーニングを行いました。約2ヵ月後には、机から落ちそうになったものを素早く止める、落ちたものを拾うなどができるようになり、机の周りに落ちているものがなくなりました。

ビジョントレーニングを行い眼球運動をスムーズにしたことで、子どもが抱えていた悩みの解決につながったというのは、興味深い結果といえるのではないでしょうか。

特別支援学級でも、発達障害の子どもにとっての効果

前出の『学ぶことが大好きになるビジョントレーニング2』(※6)には、発達障害の子どもの事例も紹介されています。

小学校1年生から5年生まで、ADHD(注意欠陥多動性障害)やPDD(広汎性発達障害)の子どもが在籍する特別支援学級の国語の授業で、ジオボード(※)などを使ったビジョントレーニングを取り入れました。

※ジオボードとは5行5列、合計25本のピンに複数の輪ゴムをかけて図形を完成させる学習用教材です。形態や空間をイメージする力の発達を促すのに効果的な教材のひとつといわれています。

特別支援学級の子どもたちには、空間認知が弱く、漢字が定着しにくい、板書が苦手、手先が不器用などの苦手を抱えている子どもが多く見られました。しかし、ビジョントレーニング後は漢字の定着率も上がり、整った字が書けるようになったそうです。

国語の時間にビジョントレーニングを取り入れることは、時間がかかり効率が悪そうにもみえましたが、時間がかかっても子どもたちの「分かる」「できる」が増えていくことは、意味のあることだったといえるのではないでしょうか。

効果についてエビデンスや研究論文、文献はあるの?

ビジョントレーニングの効果についての研究論文は、「スポーツビジョントレーニングの事例研究(※7)」「動体視力に関する研究(※8)」などありますが、まだその数は少ないようです。

ただ紹介したように、ビジョントレーニングの現場で多くの人たちがその効果を感じている事実は存在するようです。

そもそも、ビジョントレーニング先進国といえるアメリカでもエビデンスを見つけることは難しいようです。それは日本で「虫歯にならないために歯みがきをする」というのが当たり前のことのように、アメリカでは「ビジョントレーニングが視覚機能を向上させる」というのが当たり前だと認識されているからのようです。

どれくらいの期間やれば効果が見えてくるの?

効果を実感するためには、どれくらいの期間ビジョントレーニングを続ける必要があるのでしょうか。

石垣先生は著書『スポーツ選手なら知っておきたい「眼」のこと』で、ビジョントレーニングの期間を週3回ペースを3ヵ月間以上は必要(※9)と言っています。また、北出先生の著書『学ぶことが大好きになるビジョントレーニング』によると、1日10~20分、最低でも2~3分を毎日続ければ、早い人で3ヵ月くらいで効果が出てくるとあり、向上した能力が定着するのには1年くらいの期間が必要(※10)とも書かれています。

こういったことから考えると、ビジョントレーニングは短時間であっても毎日行い、3ヵ月~1年以上は続ける必要がありそうです。

まとめ

ビジョントレーニングは、眼の動きをスムーズにすることで、ものを見る力、見たものを認識する力を鍛えるものです。専門家の著書に紹介されている事例から考えると、子どもから高齢者まで、幅広い年齢層でトレーニング後の変化が期待できるようですね。ただし、専門家によると変化が実感できるまでは3ヵ月以上はかかるそうなので、毎日こつこつ取り組むことが大切なのでしょう。

 

ビジョントレーニング注意事項(行う前に必ず読んでください)

■「ビジョントレーニングにチャレンジしたい方」はこちらをチェック
ビジョントレーニング無料プリント・ドリル教材

■「ビジョントレーニングのやり方」を知りたい方はこちらもチェック
ビジョントレーニングの方法・やり方「基本の5種類から始めてみよう!」
ビジョントレーニングのおすすめ本7選!ニーズに合わせて実践しやすい本を選ぼう!

【参考】
※1 : 高齢者の眼球運動トレーニングの読書への効果|愛知工業大学研究報告P142
※2 : 内藤貴雄,スポーツのための速読ビジョントレーニング,2010,P30~34
※3 : 北出勝也,学ぶことが大好きになるビジョントレーニング,2009,P126~127
※4 : 北出勝也,学ぶことが大好きになるビジョントレーニング,2009,P132~133
※5 : 北出勝也,学ぶことが大好きになるビジョントレーニング2,2012,P119
※6 : 北出勝也,学ぶことが大好きになるビジョントレーニング2,2012,P120~121
※7 : スポーツビジョントレーニングの事例研究(2)-大学女子バレーボール選手におけるビジョントレーニングの効果について
※8 : 動体視力に関する研究-眼調節のトレーニングが動体視力に及ぼす影響について
※9 : 石垣尚男,スポーツ選手なら知っておきたい「眼」のこと,2015,P45
※10 : 北出勝也,学ぶことが大好きになるビジョントレーニング,2009,P38

※ 本サイトにおける各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。個別の症状について診断、治療を求める場合は、医師より適切な診断と治療を受けてください。

【ビジョントレーニング注意事項】
・眼に病気がある方、また気になる方は、眼科を受診してビジョントレーニングを行うことが可能かどうか医師に確認してください。
・遠視、近視、乱視などがありメガネなどで矯正する必要がある場合は、矯正を行ってからトレーニングを始めてください。
・トレーニング中に眼の痛みを感じた場合はトレーニングを中止して、眼科を受診してください。

【画像】
number-one,polkadot_photo,siro46 / Shutterstock

この記事を書いた人

編集部員

戸田 友里

わかさ生活プロアドバイザー室勤務。お客様の健康相談対応のほか、小学校、幼稚園、企業、医療機関での勉強会、セミナーで講師を務め、全国に目の健康の大切さを啓蒙している。

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