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目の症状や病気と予防・治療法

ビルベリーエキスがパソコン作業時の目の疲労感を抑えてくれるってホントなのか?3つの研究論文から解説

ブルーベリーを商品名としたサプリメントは世の中に多く出回っています。ところがその多くのサプリメントの成分表をみると、原材料には「ビルベリーエキス」と書かれていることが多いんです。

なぜブルーベリーではなく、ビルベリーエキスが主に入っていることが多いのでしょうか。

実はビルベリーエキスは、パソコンを代表とするVDT作業(パソコンなどディスプレイを持つ機器を使って作業すること)時の目の疲労感を軽減するという研究結果がいくつか発表されています。

VDTとは、パソコンやポータブルゲーム、スマートフォンなどディスプレイを持つ機器のことをいいます。もともと私たちの目は、近くを見続けることに適した仕様になっていません。そのためディスプレイを見る作業を長時間続けると、目に負担がかかり疲れを感じやすくなります。

ビルベリーエキスには、この目の疲労感を軽減する働きがあるというのです。果たしてこのビルベリーの機能は本当なのでしょうか? 同じような実験内容の研究論文を3つ詳しく解説してみたいと思います。

VDT作業負荷による一過性の目の疲労感をビルベリーエキスが抑制

1つ目は、ユニキス株式会社の瀬川潔氏らが、「薬理と治療」2013年41巻2号に掲載した論文(※1)です。

【研究内容】

ビルベリーエキスを1日160㎎(アントシアニンとして57.6mg)、28日間摂取し、VDT作業後の目の疲労感にどのような影響を与えるかを検証しました。被験者はVDT作業従事者および眼精疲労の自覚症状をもつ人を中心とした22名で試験を開始し、そのうち試験を完了した21名で結果の解析を行った。そのうち11名をビルベリーエキス群とし、10名のプラセボ群と比較しました。

ビルベリーエキス摂取0日目、14日目、28日目にVDT作業を60分行ってもらい、その前後で「眼精疲労関連のVAS(Visual Analogue Scale)評価(目が痛い、かすむなど11症状)」「調節力」などの検査を行った。

【研究結果】

眼精疲労関連のVAS評価の各時点のVDT作業前後の変化量は、プラセボ群では一定の傾向がみられなかったが、ビルベリーエキス群は0日目に比べて徐々に低下する傾向を示し、28日後は統計的に有意な違いが出るほどの低下を示した。

また、調整力についても同様で、0日目に比べ、プラセボ群で各時点での著しい差がみられなかったのに対し、ビルベリーエキス群では28日目で統計的に有意な幅で調節力の改善がみられた。さらに、ビルベリーエキス群では、14日目、28日目で調節力が負荷による影響をほとんど受けなくなったことが示唆された。

この実験結果により、ビルベリーエキスを1日160mg、4週間摂取すると、VDT作業によって起こる一過性の自覚症状、「目が痛い」「かすむ」などといった症状を感じにくくなり、さらに疲れ目に影響しているといわれる調節力の低下を抑制している可能性が示されました。

ビルベリーエキスの摂取がVDT光による眼精疲労症状を軽減

2つ目は、早稲田大学の矢澤一良氏らの研究グループが2014年11月発行のProgress in Medicine34号に掲載した論文(※2)です。

【研究内容】

ビルベリーエキスを1粒に160㎎とそのほか25種類の成分を含有したサプリメントを、1日3粒、12週間摂取し、ゲーム等でVDT光を浴びたことによる眼精疲労症状にどのような影響を与えるかを検証しました。被験者は1日平均4時間以上VDT光を浴び、眼精疲労症状を自覚している42名の男女で試験を開始し、そのうち試験中に脱落のなかった39名の男女の結果を解析。ビルベリーエキス群とプラセボ群にランダムに振り分けて比較した。

サプリメント摂取から0週間後、12週間後にゲームを2時間行ってもらい、その前後で「眼精疲労関連のVAS評価(目の疲れ、痛みなど20項目)」の検査を行った。

【研究結果】

ビルベリーエキス群のVDT作業前の眼精疲労関連のVAS評価は、0週間時点と比べ2項目については軽度にスコアが上昇したものの、残り18項目全てにおいてスコアは低下。特に一部の参加者では、「いらいらする」「頭が重い」「近くが見えにくい」といった項目のスコアが顕著に低下する結果がみられた。

一方、プラセボ群は6項目のスコア上昇、1項目の変化なし。残り12項目の低下がみとめられたが、顕著な差はみられなかった。

この実験により、ビルベリーエキスを1日480mgを含んだサプリメントを12週間摂取することで、VDT負荷が原因の慢性および急性のいずれの眼精疲労自覚症状に対しても、軽減効果をもつことが示唆されました。

ビルベリーエキスの摂取と目の休息が疲労回復を促す

3つ目は、株式会社オムニカの小齊平麻里衣氏らが、「薬理と治療」2015年43巻3号に掲載した論文(※3)です。

【研究内容】

ビルベリーエキスを1日160mg(アントシアニンとして59.2mg含有)、4週間摂取し、VDT作業による眼精疲労を感じている人にどのような影響を与えるか検証した。

被験者は、VDT作業従事者であり、眼精疲労の自覚症状をもつ30名で試験を開始し、そのうち28名の男女の結果を解析。プラセボ群とビルベリーエキス群にランダムに振り分けた。

それぞれプラセボとビルベリーエキスの摂取をはじめて4週間後、iPhoneでゲームを30分間行ってもらい、その前後、及び20分の休息後において「自覚的アンケート」と「縮瞳率」などの検査を行った。

【研究結果】

自覚的アンケートでは、プラセボ群に比べ、ビルベリーエキス群は4週目での「最近の目の疲れ」の項目で疲れのレベルの低下がみられ、また「休息後の目の疲れ」についても、疲労からの回復を感じていた。

眼精疲労、調節異常を評価する縮瞳率は、ビルベリーエキス群はプラセボ群に比べ、負荷直後は著しい差がみられなかったが、休息後20分後には著しい回復がみられた。

この実験により、ビルベリーエキスを1日160mg、4週間摂取することが、VDT作業による目の疲労感の軽減に、有効である可能性が示されました。

VDT作業による目の疲れにビルベリーの機能は期待できそうです!

今回紹介した3つの論文はいずれも、「ビルベリーエキス4週間以上の継続摂取がVDT作業時の眼の疲労感の軽減に有効である」可能性を示しました。

パソコン作業やスマホ使用などVDT作業による目の疲れや、一時的なピント調整力の低下に対して、ビルベリーが有効であることが研究されているようですね。

ビルベリーの機能と目の疲れにおいてさらなる研究が進み、関係性が明らかになることを期待したいところです。目の疲れ予防の分野で、ビルベリーがどのような役割になっていくのか今後が楽しみですね。

 

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※ 本サイトにおける各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。個別の症状について診断、治療を求める場合は、医師より適切な診断と治療を受けてください。

【参考】
※1 : VDT作業負荷による眼精疲労自覚症状 および調節機能障害に対するビルペリー果実由来
※2 : ビデオディスプレイ端末光への曝露に起因する眼精疲労自覚症状に対するビルベリー果実抽出物含有食品の保護的効果
※3 : 標準ビルベリー果実抽出物による眼疲労改善効果

この記事を書いた人

大江 絵美

薬学博士

岐阜薬科大学薬効解析学研究室に4年間出向し、目のことやビルベリーの健康効果の研究を行ってきました。目のこと、サプリメントの素材についての研究や調査をもとにした情報発信を行っています。

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