私は網膜色素変性症という目の病気で5歳くらいから少しずつ視力が下がり始め、視野も狭くなってきていて、今は文字を読んだり人の顔を認識することもできなくなり、白杖と点字ブロックのおかげで外出することができています。
点字ブロックは視覚障がい者が安全に歩けるように考案されたもので駅やバス停、交差点など様々な場所に設置されているので、とても頼りになります。
そんな点字ブロックが更に便利になるようにコードや模様をつけ、スマートフォンのカメラで読み取ることで自分がいる場所や周りに何があるのかを知ることができる技術が次々と開発されていますので紹介します。
点字ブロックは日本発祥
点字ブロック(視覚障害者誘導用ブロック)は、発明家の三宅精一さんによって考案されたもので、きっかけは友人が視覚障がいによって外出することが難しくなったという話を聞き、「なんとか力になりたい」と制作を開始され、1965年に完成しました。
そして、1967年3月18日に岡山県立盲学校近くの国道2号線の歩道に世界で初めて設置されたことから3月18日が「点字ブロックの日」に制定されました。
誕生してから50年以上たった今では日本のみならず世界中に普及し、最新の技術によって新たな点字ブロックも誕生しています。
コード化点字ブロック認識アプリ「Walk&Mobile」
このアプリは、視覚障がい者の歩行課題を軽減する社会インフラの整備をめざす共同研究の取り組みとして、金沢工業大学情報工学科の松井くにお教授が中心となり開発されたものです。
コード化点字ブロックには、画像認識技術が利用されており、点字ブロックに印としてつけた黒丸や三角をスマートフォンのカメラで認識させるとコードごとにサーバーに登録してある案内情報がスマートフォンに届く仕組みです。
そして、この点字ブロックを設置するにあたり、設置場所から見てどちらの方向に何の施設があるのかという情報を生成し、登録するのに時間と手間がとてもかかることがわかりました。
そこで、松井教授は長年研究してきた人工知能を使った「言葉と数値の変換」が使えないかと考え、研究を続けた結果、地図から半自動で案内情報を生成することに成功しました。
たとえば兼六園と金沢駅の間にコード化点字ブロックを設置すると決めたら、『東に兼六園』『西に金沢駅』という具合に自動的に生成してくれます。
半自動というのは、情報によってはどうしても人間による確認が必要になるということでトイレの位置を伝える場合、視力に問題がなければ「5m先にトイレがある」という情報があれば男性・女性を間違うことはないでしょう。しかし、視覚障がい者には「5m先の左に男子トイレ、右に女子トイレがある」というように具体的に伝えてもらえないと間違えてしまう可能性があります。
男女のトイレを間違えて入ってしまい、それ以来トイレに入るのが怖いという視覚障がい者も多いので、細かな精度の案内情報が可能になるコード化点字ブロックがあればこうした事態を減らすことができます。
さらにコード化点字ブロックの情報の読み取りにはブロック上の凹凸などは無関係なので、コースターのような小さくてフラットなシートや、クッキーなどの食べものにもコードをプリントすることができるので、様々な場所での利用ができるコード化点字ブロックに多くの期待が寄せられています。
しゃべる点字ブロック
「薄型ソーラービーコン内蔵点字ブロック」
この点字ブロックは4つの企業が協力して開発したもので、利用者が点字ブロックに近づくとブルートゥースにより、コミュニケーションアプリ「LINE」に位置情報の書かれたメッセージが届きます。
その内容をスマートフォンの音声読み上げ機能(ボイスオーバーなど)を使って確認する仕組みです。
すでに点字ブロックが設置されている場所でも、通常の点字ブロックと同じサイズ(縦300㎜×横300㎜×厚さ7㎜)なので、既設の点字ブロックからの貼り替えも容易で、蓄電機能と防水性を備えているため、屋外での利用も可能です。
点字ブロックだけではわからない自分の現在地が把握できるので、目的地への道順がわからない時に役立つのではないかと期待されています。
点字ブロックを使った音声案内アプリ「パンダナビ」
「パンダナビ」は視覚障がいがあるエンジニアの芝田真さんが、「視力を失っても自由に出歩きたい」という想いから点字ブロックの活用を思いつき、開発されました。
このアプリは、ブロックの突起にはめ込んだ黒いリングの配置パターンをスマートフォンのカメラで読み取ると、現在地や自分が向いている方向に何があるのかなどを音声で確認できる仕組みです。
しかも、屋内などのGPS(衛星利用測位システム)が働きにくい場所でも使用することができ、外国語で音声データを入力すれば外国の方の道案内なども可能です。
分岐点や下り階段など注意すべき場所の「警告ブロック」の丸い突起(JIS規格では、警告ブロックの突起は最低で25個と定められている)に、8個の黒いリング(直径5㎝)をはめ込むことで455のパターンを作ることができ、それぞれに違う情報を登録できます。
パターンが455種類だと少ないと感じるかもしれませんが、同じパターンのものを違う場所に設置した場合、GPSとのつながりでそれぞれ違う情報を登録することができるので、様々な場所で利用することができます。
まとめ
日本で生まれた点字ブロックは少しずつ設置場所が増えていき、世界各国に普及し、多くの視覚障がい者を助けてくれています。
駅のホームや歩道・交差点などに点字ブロックが設置してあるおかげで、危険な場所も安心して歩くことができます。
そんな点字ブロックがさらに便利になるように様々な技術の開発や取り組みが行われていますので、開発が進めば視覚障がい者だけではなく年齢による見えづらさを感じている方など様々な方にとって暮らしやすい社会になると期待しています。
☆引用元URL
コード化点字ブロック認識アプリ「Walk&Mobile」
https://www.kanazawa-it.ac.jp/kitnews/2021/0118_walk_and_mobile.html
しゃべる点字ブロック「薄型ソーラービーコン内蔵点字ブロック
https://wavee-plus.com/solar-beacon-in-tactile-paving/
点字ブロックを使った音声案内アプリ「パンダナビ」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/154584
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