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見えない・見えづらい方へのお役立ち情報

視覚障がい者の新たな働き方を提供する取り組みを紹介

白杖を持って階段を歩く若い視覚障害の男性

視覚障害と聞くと「見えないから何もできないのでは」や「仕事といえばマッサージ」と思う方も多いかもしれません。視覚障がい者が働ける場所は少しずつ増えてきてはいますが、まだまだ選択肢は少ないです。そんな中新たな働き方を提供する取り組みを紹介します。

視覚障がい者の雇用が進まない要因

現在日本には30万人以上の視覚障がい者がいるといわれていますが、仕事の選択肢は非常に少なく雇用も進んでいません。その理由として「どのような障害配慮を行ったらよいかがわからない」「現場の従業員とのコミュニケーションが上手くいかない」などの企業側の要因。また視覚障がい者自身が見えないから出来ないだろうとあきらめてしまうことが要因として考えられます。そんな状況を変え、視覚障がい者の働き方の選択枝を増やそうと行なわれている新たな取り組みを2つ紹介します。

視覚障害がある大学生とない大学生が共に創ったカフェ「Moonloop Cafe」

カフェで楽しそうに働く若い女性店員

まず1つ目は、東京都杉並区にある「Moonloop Cafe」です。ここは、視覚障害のある大学生とそうではない大学生が共に創り上げた「月の満ち欠けと視野の違い」がテーマのカフェです。日々忙しく過ぎる時間の中で、ふと夜空を見上げると、変わらずそこに月が輝いている。そんな月のように、訪れる人の心にそっと寄り添う場所として誕生しました。誕生のきっかけは一般社団法人ビーラインドプロジェクト代表理事の浅見幸佑さんの「カフェのアルバイトに憧れていたけど目が見えないから諦めてしまった」「アルバイトがしたいけど中々選択肢が少ない」という些細な願いを覆し、新しい働き方の可能性を切り拓きたい。』という想いです。

視覚障がい者が接客業の店長を務めるカフェは、日本ではまだ前例の少ない取り組みですが、このカフェでは、視覚障害のあるスタッフも店長となり、その日のスタッフの視野の満ち欠けに合わせたチャイとデザートが楽しめます。
見えなくてもカウンターや壁を利用したスタッフの移動、ポットや特殊なカトラリーを活用した配膳、スタッフ同士の連携など工夫次第で視覚障害があってもカフェで働くことができるそうです。

耳で焙煎したコーヒー豆を販売している「領家グリーンゲイブルズ」

コーヒー豆からコーヒーを煎れる2つ目は、埼玉県上尾市にある福祉作業所「領家グリーンゲイブルズ」です。ここでは、コーヒー豆のローストから販売までを手がけていて豆の焙煎は視覚障がい者が行なっています。焙煎するときは通常豆の色を見るのですが、ここでは目では見えない生豆の水分量を音で聞き分けています。
コーヒーづくりを始めた当初、見えていないと焙煎作業はできないと思われていたのですが、近所の喫茶店の店主さんの「視覚障がい者の聴覚の鋭さがあれば音でいけるんじゃないか」という提案がきっかけで視覚障がい者が焙煎を担当するようになりました。
販売開始から数年が経ち、今では「美味しい」と評判となり訪れる方が後を絶ちません。

終わりに

この2つの取り組みは始まったばかりですが、大きな一歩だと感じています。
私は視覚障害があり、マッサージの仕事をしています。
視覚障がい者の友人たちもマッサージをしている方が多く、音楽活動や通訳などの仕事をしている方もいますがごく一部です。
障がい者専門の職業安定所でも視覚障がい者の選べる仕事は限られていますので、今回紹介したような働き方が増え社会での活躍の場が広がることを願っています。

参考URL
公式サイト
https://blinedproject.org/moonloopcafe

 

この記事を書いた人

山本 旭彦

わかさ生活ヘルスキーパー。網膜色素変性症によって視野が狭くなり、暗いところも見づらい症状をもつ。視覚障がいへの理解、気軽にサポートできる環境を広めようと、「あきひこさんの一日」と称した出張授業を小学校などで継続的に実施しています。

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