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見えない・見えづらい方へのお役立ち情報

視覚障がい者の外出は常に危険と隣り合わせ。視覚障がい者の外出時の安全をサポートしてくれる取り組みを紹介します。

男性が白杖を持って歩いているシルエット

私は視覚に障がいがあり、視野や視力がほとんどありません。
仕事や買い物、友人との食事には一人で白杖を持って出かけています。
街中で点字ブロックを頼りに歩いたり、路面の状態や障害物の有無などを白杖で確認するなかで、危険な場所や状況はたくさんあります。
今回は、視覚障がい者が外出する時に少しでも安全に歩けるように様々な取り組みや新しいシステムが導入されていますので、ご紹介します。

視覚障がい者の外出時の危険とは

視覚に障がいがあると毎日通っている道でも、危険なことや困ってしまうことがいっぱいあります。
私自身、今までに危険な状況になったことが何度もありました。
歩道を歩いていたはずが、いつの間にか車道に出てしまっていて、近くにいた方に歩道まで連れて行ってもらったことや、横断歩道では信号が青なのか赤なのか判断が難しく、周りの人や車の状況を音で確認して渡ったら赤だったということもありました。
また、駅のホームは視覚障がい者にとって「欄干のない橋」と言われており、私も人を避けて歩いているうちに点字ブロックから外れてしまい、ホームから落ちそうになったことがあります。
また、あまり利用したことがない駅では改札の場所や、どの電車に乗ればよいかわからない時があります。
このように、見えない・見えづらいことによって危険な状況になることがとても多いのです。

「音」で安全確認、スギ材を使った新たな歩道

スギ材を使った歩道を白杖を持って歩く女性

引用元: 九州大学景観研究室

それでは、様々な危険な状況に対してどのような取り組みが始まっているのか紹介していきます。
まずはアスファルトに代わる新たな歩道として福岡県の九州大学ではスギ材を使った歩道の開発に取り組まれています。
視覚障がい者が誤って車道に出るのを防ぐ目的で、白杖でたたいた時にアスファルトの道とは違う「音」が響くことで、区別できる仕組みです。
歩道は、ペットボトルキャップをリサイクルして作ったプラスチック製の2本の基礎に、細長いスギ板を複数渡してつくられています。
木琴と同じ構造で板の下に空洞ができることで音が響くことと、材質が軟らかく、歩いた感触もアスファルトとは違うのが特徴だと言われています。
この歩道を考案した九州大学の樋口准(ひぐちじゅん)教授(きょうじゅ)は、お祖母様が病気で失明された経験から、2007年に研究をスタートされました。
当初は路面をザラつかせるなどしたそうですが、違いがあまり出ず、たまたま木製デッキ風の歩道を作ったところ好評で、手に入りやすいスギ材にたどりついたそうです。
実際、視覚障がい者にコンクリートとアスファルト、スギ材の歩道と同じ構造物を白杖でたたいてもらう試験では、101人のうち98人が音の違いを区別できたそうです。
また、試験歩道を歩く実験でも、スギ材だと車道にはみ出す方はいないという実験結果が出ています。
木材を利用するため、SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みとしても注目を集めている取り組みです。
点字ブロックは何かの拍子に見失うと自分がどこにいるのかどちらに進めばよいのか分からなくなるため、スギ材の歩道が設置されれば、間違って車道に出てしまうことも減らせるのではないでしょうか。

横断歩道での音響信号機の設置状況と、視覚障がい者が安全に渡るためのシステム

信GO!ロゴマーク

続いては、横断歩道を安全に渡るための取り組みです。
横断歩道の音響信号機(視覚障害者用付加装置)は、(令和03年3月末現在)、全国で20,621基(全国にある信号機のうちの約1割)設置されていますが、夜間はそのうちの8割以上が音が鳴らないようになっているため、それを頼りにしている視覚障がい者にとってとても危険な状況です。
また、歩行者が持つ端末装置等や反射シートが貼付された白杖を検出するなどして、信号の状態や横断開始時期等の音声情報を提供するもの(歩行者支援装置)は、(令和03年3月末現在)、全国でわずか534基です。
そんな中、目の不自由な人や高齢者らが安全に横断歩道を渡れる環境づくりを進めようと、兵庫県警が新たなシステムを神戸市、尼崎市へ導入しました。
この信号機に設置した通信装置とスマホアプリ「信GO(しんゴー)!」がBluetooth(近距離無線通信機能)で連動し、「南北方向が青、東西方向が赤」や「南北方向の青が間もなく終了します」などの情報を音声や振動で通知してくれるシステムです。
私も分からず周りの人や車の動きを確認して渡ることが多いので、もっともっと設置場所が増え、横断歩道での事故の減少に繋がることを願います。

駅を安全に利用するためのアプリ

点字ブロックQRコードにスマートフォンをかざしている画像

引用元:東京メトロニュースリリース

続いては駅を安全に利用するためのアプリを紹介します。
駅で点字ブロックを頼りに歩いている視覚障がい者は多いのですが、人とぶつかったり避けたりした時に点字ブロックから外れてしまい方向がわからなくなったりして迷ってしまったりすると、転落事故につながってしまう可能性があります。
ホームドアの設置も進んでいますが、まだまだ設置されている駅は少ない状況です。
そんな中、視覚障がい者が利用する点字ブロックにQRコードをつけて、スマホのカメラで読み取ると音声で「右側3メートル先、エレベーターがあります」「直進5メートル、その先改札です」などと案内してくれるアプリ「shikAI(視界)」が東京メトロの一部の駅で導入されています。
このようなアプリが多くの駅に導入されれば視覚障がい者の事故減少も期待できます。

※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。

まとめ

このように、現在、視覚障がい者が少しでも安全に外出できるように様々な取り組みが行なわれていますが、取り組みが始まって間もなかったり、一部の地域だけでの運用にとどまっています。
視覚障がい者は慣れている場所でもケガや事故など危険な状況になることも多いです。ましてや初めて訪れる場所はとても大変です。
またスマートフォンなどの機器をうまく操作できない方もたくさんいらっしゃいます。
様々な取り組みがもっと広がって、誰も取り残されない社会になることを願います。
まだまだ視覚障がい者にとって危険な場所はたくさんありますので、もし街で白杖を持った方や盲導犬を連れている方を見かけた時は見守っていただき、もし危険だと感じたら「白杖(盲導犬)の方危ない!」など、見えていなくても自分に声をかけてもらっていることがわかるような声かけや、困っているのかなと感じた時は「何かお手伝いしましょうか」と声をかけてサポートしていただけるととても助かります。

 

参考URL
◆東京メトロニュースリリース
https://www.tokyometro.jp/news/images_h/metroNews210118_g01.pdf

◆九州大学景観研究室
http://kyudai-keikan.net/work/barrierfree/example7-1/

◆ソーシャルディスタンスの重要性と視覚障がい者の苦悩 | メノコト365 byわかさ生活
https://menokoto365.jp/2516/

◆街で白い杖を持った人が困っている時のサポート方法をご紹介 | メノコト365 byわかさ生活
https://menokoto365.jp/2237/

この記事を書いた人

山本 旭彦

わかさ生活ヘルスキーパー。網膜色素変性症によって視野が狭くなり、暗いところも見づらい症状をもつ。視覚障がいへの理解、気軽にサポートできる環境を広めようと、「あきひこさんの一日」と称した出張授業を小学校などで継続的に実施しています。

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