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目の症状や病気と予防・治療法

「暗い部屋で本を読んだら目が悪くなるよ!」はホントかも!?子どもの近視研究から分かったこと

子どもの頃、「そんな暗い部屋でマンガを見たらダメでしょ」「本を読むなら、電気をつけて部屋を明るくしなさい」などと注意されたことが、一度や二度はあるのではないでしょうか。

大人になって、自分も子どもに同じように注意しているけれど、本当のところどうなんだろう…と思ったことはありませんか?

実は2018年10月に発表されたオーストラリアのコホート研究(※1)の中で、子どもの近視と薄暗い光の関係について研究された事例があります。詳しく見ていきましょう。

光と近視の関係を調べるため光センサーを子どもに1年間装着して計測

これまで光と近視の関係については、「屋外の光を浴びることが近視の抑制には重要」ということは知られていました。しかし、子どもの日常生活で、どれくらいの明るさの光を、どれだけの時間浴びていたら近視になりやすいのかは分かっていませんでした。

そこで、アメリカとオーストラリアの研究チームは、子どもに光センサーをつけてもらい、どのような光環境で生活しているかを調べることで、近視との関係を明らかにしようと試みたのです。

1年間にもわたって子どもの光環境を測定

まずオーストラリアに住む10~15歳の男女80名を、近視の子40名、近視でない子40名、性別や体格もほぼ均等になるように2グループに振り分けました。

子どもには腕時計型の光センサー搭載測定器(Actiwatch)を装着してもらい、1年間にわたり季節をまたいで、日常どのような光環境で生活しているかを調べました。

光環境の評価は4段階設定

子どもが浴びる光環境の強弱は以下のように4段階に分けて評価。どの強さの光環境で、平均してどれだけの時間浴びていたかを算出しました。

①Scotopic(暗視的 ほぼ暗い 1ルクス以下)

②Mesopic(薄暗い 1から30ルクス)

③Indoor Photopic(屋内 30から1000ルクス)

④Outdoor Photopic(屋外 1000ルクス以上)

結果は…近視の子どもは薄暗い部屋で過ごす時間が長いことが判明!

1年間にわたる実験の結果、②の薄暗い光環境下で過ごす子どもの特徴をみると興味深い結果になりました。

・平日では、近視の子は平均5.56時間/日、近視でない子は平均5.16時間/日

・週末では、近視の子は平均6.40時間/日、近視でない子は平均5.75時間/日

近視の子どもは、薄暗い光環境下(②Mesopic)で過ごす時間が、平日も週末も多かったのです。

さらに、近視の子は、近視でない子よりも、週末の夜、就寝前に①の暗い環境下で過ごす時間が比較的短く、そのかわりに夕方から寝るまでの時間をより長く②の薄暗い光環境下で過ごす傾向にあったことも分かりました。

一つの解釈の仕方としては、近視の子どもは近視でない子どもと比べ、1日を通して薄暗い光の下で生活している時間が長いということかもしれません。

もちろん、これだけが近視の要因ではないかもしれませんが、薄暗い光と近視の関係が新たに発見された点は注目すべきでしょう。

今後はもっと多くの人数でも検証すべきであると同時に、他の年代(10~15歳以外)や、より年齢の低い子どもでも関連性を調べる必要があると研究チームは述べています。また、なぜ光の明るさや暗さが視力に影響するのか、そのメカニズムを今後さらに深く研究していくことが求められています。

「薄暗い部屋で本を読んだら目が悪くなる」は間違っていないかも!?これからはスマホも注意しよう

今回の研究結果から分かるように、「薄暗い部屋での作業は目が悪くなる」と昔から親が子どもに注意してきたことは、間違いであるとは言い切れないようですね。

薄暗い環境下で過ごす時間を減らすことが、近視の予防につながる可能性が研究結果から類推されるので、注意すべきでしょう。

また研究チームは、近視の子どもが夜間、薄暗い環境で過ごすことが意味しているのは、就寝前にタブレットや携帯電話を使っていたと考えられるのではないかと推測しています。

これからは「薄暗い部屋でスマホを見ていたらダメだぞ!」と、子どもに注意することが重要かもしれませんね。

もし子どもが「なんでダメなの?」と納得できない様子なら、オーストラリアの研究ではここまで分かっているんだよ、とこの記事を読んでしっかり根拠を伝えてください。ちゃんと理由が分かれば、子どもも近視について真剣に考えてくれるはずです。

日本でも、これ以上近視の子どもが増えないように、学校生活や自宅の光環境を今一度見直していただくことも、検討されてはいかがでしょうか。

 

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※ 本サイトにおける各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。個別の症状について診断、治療を求める場合は、医師より適切な診断と治療を受けてください。

【参考】
※1: Dim Light Exposure and Myopia in Children

【画像】
Dmytro Vietrov / Shutterstock

この記事を書いた人

小川 健二郎

薬学博士

宮崎大学 農学系食品科学研究領域 テニュアトラック助教。目の健康をテーマに宮崎県産の食品の健康機能研究を行う。視覚障がい者マラソンに伴走者として参加し、活動を通じて全盲の女性と結婚。目に障がいをもつ妻とともに歩んでいるからこそ見えてくる苦労や目の大切さを多くの人に伝えるため、メノコト365では目の研究を中心に、病気や障がいを防ぎ健康維持に役立つ情報を発信しています。

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