問題視される子どもの後天性内斜視に眼科医77%がスマホの関連を示唆-調査結果を海谷先生が詳しく解説

  • 大江 絵美
  • 編集長
海谷院長先生の写真①

最近患者が増加していて、メディアでも取り上げられている「後天性内斜視(※)」。子どもに多い、スマホの使用が原因などといわれており、不安に思っている保護者の方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、日本弱視斜視学会・日本小児眼科学会の両学会に所属され、眼科医として多くの内斜視の患者を診てこられた医療法人社団海仁の理事長である海谷先生に詳しくお話を伺いました。

※正式名称:若年者の後天共同性内斜視


医療法人社団 海仁 海谷眼科 海谷 忠良(かいや ただよし)理事長・院長

1946年山形県生まれ。1971年新潟大学医学部卒業後、同医学部附属病院眼科学教室へ。その後いくつかの病院を経て、1998年に海谷眼科を開院し同院長に就任。2000年医療法人社団海仁を設立し同理事長となる。
海谷眼科は最先端の医療機器を用い、白内障や緑内障、レーシックなど眼科疾患にかかわるあらゆる手術を年間約3000件実施している眼科専門医院。

医療法人社団 海仁 海谷眼科HP


4割もの医師が診察経験あり、後天性内斜視が増加中

海谷院長先生の写真②

大江編集長(以下、大江)今、子どもたちの間で「後天性内斜視」が増えているという発表が2019年6月に学会で行われ、その後テレビなどのマスメディアでも大きく報じられていますが、現状について詳しく教えていただけますか?

海谷先生(以下、海谷):後天性内斜視の患者様がここ数年で急速に増えていることから、日本弱視斜視学会と日本小児眼科学会の合同で全国規模の調査をしようということになりました。その予備調査として行われたのが今回の内容です。

大江:予備調査にも関わらず、こんなに大きくメディアに取り上げられたとは驚きです。

海谷:そうですね。私は直接予備調査自体には関わっていないのですが、眼科医の間でももちろん話題になっていて、学会でも注目度が高い調査でした。

今回は長年内斜視の患者様を診てきた私の日頃の経験を踏まえ、眼科医としての立場から研究結果について紹介、解説したいと思います。

大江:よろしくお願いします! 新聞によると2018年の調査ということなので、最近ですよね。

海谷:2018年の1年間で内斜視の若年層(5〜35歳)を診察したことのある眼科医がいるかを、日本弱視斜視学会/日本小児眼科学会の2学会の会員・名誉会員で、重複を除く主に眼科の医師1083人を対象に調査されました。実際に回答が集められた眼科医371人のうち約42%に当たる158人が診察したことがあると答えたのです。

大江:2018年だけで4割を超えたんですか!

海谷:はい。症状としては急性のものを対象とし、頭蓋内疾患や神経疾患を除外されています。この4割という数字は重く受け止める必要があると思っています。

大江:内斜視って、そんなに多い病気だとは思っていなかったのですが…。

海谷:ここ数年で、急性の内斜視を引き起こしている子どもが増えているということではないでしょうか。

後天性内斜視の原因の約8割がスマホ!?

海谷:さらにその眼科医らに対し「デジタルデバイス使用は関連があると思うか」についてアンケートを取ったところ、約77%の眼科医らが「あると思う」と回答したのです。

大江:約8割がスマホですか?

海谷:ある程度想定はしていたものの、実際に122人の眼科医らがデジタルデバイスとの関連性について「あると思う」と答えたことは、私も正直驚きでした。

大江:どういったことから、先生方はそのように感じられたのでしょうか?

海谷:医師が診察を通じて感じたことはもちろん、患者様自身や患者様の保護者が関連について言及した例もあります。

大江:今回のアンケート調査では、デジタル機器の中にスマホだけではなく、パソコンやゲームも含まれていたんですよね?

海谷:そうです。テレビ画面でするゲームや、タブレットやポータブル機器でDVDを見ている人なども含まれます。その中でも、特にスマホがね。

大江:さまざまなデジタル機器がある中で、特にスマホというわけですか。

スマホの長時間使用で目の筋肉が固まってしまう!

海谷院長先生の写真③

大江:スマホの何が悪いんでしょうか?

海谷:共通点として顕著にみられたのは「長時間使用の背景があった」ということです。関連性が「あると思う」と答えた眼科医ら122人に、その根拠について聞いたところ、何と112人が、そう答えているんです。

大江:9割以上とは多いですね! 長時間使用が内斜視につながるって、どういうことなんでしょう?

海谷:スマホを見ているときは近くにある小さい画面に、長時間視線が集中していますよね。このとき目の内側にある内直筋は強く収縮している状態になります。

この状態が長く続くことで筋肉が固まり、内直筋の収縮が戻りにくくなってしまうのではと考えられます。元に戻らなくなったことで、ものが二重に見えるなどの症状が出てくることもあるのではないでしょうか。

大江:使用時間について、他に先生方からの回答はあったのでしょうか?

海谷:根拠を尋ねた122人の眼科医のうち、「使用時間を短縮したら改善した」という回答が37人から出ました。

一度、内斜視と診断された人でも、使用時間を見直すことで筋肉の収縮が戻る場合もあったということでしょうね。

大江:なるほど、使用時間短縮が、症状改善につながる可能性があるんですね。目の筋肉が固まってしまわないように、スマホの使用時間は気をつけた方が良さそうですね。

今回の調査では、なぜ子どもが問題になった?

大江:調査は5〜35歳を対象に行なっているのに、今回はなぜ子どもの後天性内斜視が問題視されたのでしょうか?

海谷:その中でも特に子どもが多かったということです。

大江:子どものほうが、後天性内斜視になりやすい理由があるんでしょうか?

海谷:子どもの場合、物を見る力、ピントを合わせる機能が大人より何倍も強いから、症状が出ていると思われます。

大江:物を見る力の強い、幼い子どもほどなりやすいということですか?

海谷:高校生より中学生、中学生より小学生、小学生より幼児…といった具合に、目の調節機能の強さからいえば、幼い子どもほど内斜視になるリスクが高いといえるでしょうね。

また、視覚の感受性時期は生後1ヵ月から18ヵ月がもっとも高く、8歳ごろまで感受性が残存していると言われていますので、特にこの期間では注意が必要であると考えます。

大江:最近は電車やショッピングセンターなどで、小さなお子さんがスマホの動画を見ていらっしゃる姿を見かけることもありますから…。心配ですね。

海谷:幼い子どもほど、後天性内斜視になりやすい傾向にあるということは、知っておいてほしいです。

子どもの後天性内斜視の調査、3年後に注目

大江:今回の調査では、元に戻せるのは何時間までの使用が良いなど、何か分かっているのでしょうか?

海谷:残念ながら調査は始まったばかりなので、スマホなどのデジタルデバイス使用との直接的な因果関係も含めて、まだそこまでハッキリといえることは立証できていません。

ただ、学会がこれから行う研究では「小学生以上と幼児以下の比較」「1時間以上使った場合と1時間未満の場合でどう違うか」「中学生が2時間以上使っている場合はどうか」など、さらに調査が進められる予定です。

大江:子どもがスマホを使うことを止めさせるというのは難しいと思いますが、目にとって正しい使い方を実行することはできると思うので、少しでも早く分かればいいですね。

海谷:まずは適度な休憩をはさみながら、長時間の使用を避けていくことを心がけていくことが重要であると感じます。

今回の予備調査を元に、全国の患者様を対象にした長期的な調査が進められています。スマホとの因果関係を調べ、3年後をめどに予防方法に向けた提言をまとめたり、効果的な治療方法を探っていったりということも考えられています。

「スマホ使用がどう目に悪いのか」お母さんは子どもに伝えるきっかけにしてほしい

海谷院長先生と大江編集長の写真

スマホが目によくないだろうということは親御さんも何となく感じていて、「スマホばっかり見てたら目が悪くなるよ」などと注意するものの、お子さんがなかなか聞いてくれず困っているという方も多いのではないでしょうか。

でも、「スマホの長時間使用が後天性内斜視という目の病気につながる」という可能性がでてきたことで、具体的にお子さんに何が悪いのかを説明できるようになったと思います。

ぜひこの記事を読んだことをきっかけに、お子さんと目の病気について、目とスマホとの関連性について、話し合う機会を作ってもらえればと思います。

 

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※ 本サイトにおける各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。個別の症状について診断、治療を求める場合は、医師より適切な診断と治療を受けてください。

 

【取材協力】
海谷 忠良(かいや ただよし)理事長・院長
医療法人社団 海仁 海谷眼科

この記事を書いた人

編集長

大江 絵美

わかさ生活みらい研究所研究員。健康食品管理士。岐阜薬科大学薬効解析学研究室に4年間出向し、眼のこととビルベリーの健康効果についての研究を行ってきたスペシャリスト。眼のこと、サプリメントの素材について新しい研究や調査を行っています。

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