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見えない・見えづらい方へのお役立ち情報

視覚に障害があっても触れて、聞いてわかるハザードマップ

日本地図 ハザードマップ

近年自然災害が増えていますが、みなさんは自分が住んでいる地域のハザードマップを見たことがあるでしょうか。
ハザードマップは全国のほとんどの自治体で作成されており、ホームページなどで閲覧することができます。しかし、私のように文字や地図を見ることができない視覚障害者は確認することができません。そこで今回は、そんな方のために作成されたハザードマップをご紹介します。

 

ハザードマップとは

白杖をもって横断歩道を渡る視力障がいの男性ハザードマップとは、自分の住んでいる地域で洪水、地震、土砂災害、火山噴火など自然災害が起こった時、どの地域にどんな危険や被害が起こりうるのかというリスクを災害別に記した災害の被害予測図のことです。
そして、避難しないといけない状況になった場合にどこに避難すればよいのかという情報も記されています。
各市区町村の役場で配布されていたり、全国の自治体が公開しているハザードマップへアクセスできる「ハザードマップポータルサイト」などで確認することができます。

 

視覚障害者のためのハザードマップ

自治体によっては視覚障害者のために点字や音声のハザードマップを作成しているところがありますのでご紹介します。

東京都日野市

日野市では、「土砂災害ハザードマップ」の点字版が作成されていて、土砂災害警戒区域等の説明、土砂災害の種類と前兆現象、避難時の心得などの防災情報が確認できます。
また、「日野市防災マップ・洪水ハザードマップ(平成29年度版)」の点字・音訳版も作成されていて、避難場所や日頃からの備え、避難情報と取るべき行動などの防災情報を知ることができます。

※問い合わせ先
総務部 防災安全課
直通電話:防災係 042-514-8962 安全安心係 042-514-8963
代表電話:042-585-1111
Fax:042-587-5666
〒191-0016 東京都日野市神明1丁目11番地の16 防災情報センター1階

大阪府豊中市

豊中市では、視覚障害者が災害時に的確な避難行動が取れるよう風水害が発生した場合に被害が想定される箇所や避難場所をまとめた「豊中市総合ハザードマップ」の点訳版(冊子2巻)・音訳版(CD)が作成されています。

※令和4年(2022年)9月より「点字広報」「声の広報」を利用している希望者に送付するとともに、豊中市役所危機管理課や庄内出張所、新千里出張所、障害福祉センターひまわりで配布されています。

京都府福知山市

福知山市では、視覚障害者団体の要望を受け「総合防災ハザードマップ」の音声版が作成されています。同市のホームページで地区ごとの浸水想定区域や土砂災害警戒区域などを音声で聞くことができるほか、ファイルは携帯電話などにも保存できるようです。
※この音声版は、「福知山市朗読ボランティアサークル」の方々によって作成されました。

福知山市危機管理室
電話:0773-24-7503
Fax:0773-23-6537

北海道苫小牧市

苫小牧市朗読赤十字奉仕団の協力により、防災ハンドブックの音声版が作成されています。予測される噴火や地震、津波浸水災害などについて同市のホームページで聞くことができます。

苫小牧市防災ハンドブック
https://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/kurashi/bosai/jishin/onseihandbok.html

 

わずか2.6%…!?

点字がつづく道路このように、いくつかの自治体で視覚障害者のためのハザードマップの点字版や音声版が作成されていますが、国交省の調査によると、2021年の時点でこのようなハザードマップを作成している自治体は全国でわずか2.6%しかありません。しかもほとんどの自治体で作成の予定がないということがわかりました。
そのような状況を何とかしようと、ハザードマップの情報を自治体から聞き取り必要な方に伝える活動を行っている市民団体や音声や点字以外でも何とか必要な情報を伝えられないかと活動されている方がいます。

 

触って浸水場所などが確認できる立体地図

中でも国立長野高専で福祉工学、リハビリテーション工学が専門の藤沢義範教授の活動が注目されています。
藤沢教授は、ハザードマップの確認ができないと悩んでいた全盲の方から相談を受けたことがきっかけで、「ハザードマップがわからず困っている人の力になりたい」と立体地図の制作を開始されました。
立体地図は2019年の台風19号で浸水した長野県総合リハビリテーションセンターや、しなの鉄道北しなの線三才駅を中心にアクリル板を使って作られています。
アクリル板は厚さ5mmで2枚一組、並べて同時に使います。
1枚は道路や線路、建物などが彫られていて、もう1枚は同じ範囲で想定される浸水の深さが線であらわされています。
線の間隔が広ければ浅く、狭くなるほど深くなるため触ることで見えなくても浸水する深さを感じることができます。
この取り組みは、視覚障害者にもわかりやすいということで全国各地のハザードマップを立体地図にできるようプログラムの開発が進められているようです。

 

まとめ

最近地震や大雨が増えていて、自分が住んでいる場所は「大丈夫かな」と不安になることがあります。
私も以前、ハザードマップを確認したことがありますが、スマートフォンの音声読み上げ機能を使ってもわからなくて残念でした。
そんな中、視覚障害者が少しでも安心して生活できるようにと点字や音声などのハザードマップがあることを知り嬉しくなりました。
まだまだ対象地域が少ないので私の住んでいる地域も含め全国にこのような取り組みが増えていくことを望んでいます。

参考

ハザードマップポータルサイト
https://disaportal.gsi.go.jp/

この記事を書いた人

山本 旭彦

わかさ生活ヘルスキーパー。網膜色素変性症によって視野が狭くなり、暗いところも見づらい症状をもつ。視覚障がいへの理解、気軽にサポートできる環境を広めようと、「あきひこさんの一日」と称した出張授業を小学校などで継続的に実施しています。

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