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見えない・見えづらい方へのお役立ち情報

知っておくことで生活の質が変わる? ロービジョン外来でできること

近年、眼科の広告で目にすることが増えた、「ロービジョンケア」や「ロービジョン外来」ですが、実際にどのようなものなのか、解説していきます。

ロービジョンケアやロービジョン外来とは?

目が見えない、見えづらい、いわゆる弱視、ロービジョンと呼ばれる状態にある方々のなかには、「治療法がないから眼鏡を新調するなどの必要に迫られたときしか、通院しない」とおっしゃる方もいます。
かつての私もその一人でした。
当時学生で、経済的余裕がなく、通院にかかる医療費をもったいなく感じたこともあり、「治療法があるわけでもないのに、通院する必要はない」と考えていたのです。
しかし、今ではロービジョン外来に定期通院し、ロービジョンケアを受けています。

ロービジョンケアと聞いても、ピンとこない方も多いと思います。
ロービジョンケアは近年耳にすることの増えた言葉ですが、その意味まで浸透しているわけではないのが現状です。

日本ロービジョン学会では、ロービジョンケアを以下のように定義しています。

“視覚に障害があるため生活に何らかの支障を来している人に対する医療的、教育的、職業的、社会的、福祉的、心理的等すべての支援の総称である。発達・成長期にある小児に必要なハビリテーションあるいは主に成人の中途障害に対応するリハビリテーションを目的とする。
よりよく見る工夫(例:視覚補助具、照明)、視覚以外の感覚の活用(例:音声機器、触読機器)、情報入手手段の確保(例:ラジオ、パソコン)、その他の生活改善(例:点字図書館、生活訓練施設)、進路の決定(例:特別支援学校、職業訓練施設)、福祉制度の利用(例:身体障害者手帳、障害年金)、視覚障害者同士の情報交換(例:関連団体、患者交流会)等ができるよう情報提供し、諸種の助言、指導あるいは訓練を行う。”
(日本ロービジョン学会 ロービジョンについて https://www.jslrr.org/low-vision より引用)

このようなロービジョンケアを受けられる場所として、ロービジョン外来があります。この定義を読んでみると、病院でこんなこともしてもらえるのかと改めて驚きます。

実際にロービジョン外来では何が行われているのか

では実際のロービジョン外来ではどのようなロービジョンケアが行われているのでしょうか。
日本ロービジョン学会の公式サイトには、全国各地のロービジョンケアを受けられる医療機関のリストもあります。(https://www.jslrr.org/low-vision/institutions
このリストには、その医療機関で受けられるロービジョンケアの内容が書いてあります。
医療機関によって、内容が少し異なるので、受診の際はご注意ください。
拡大鏡や弱視眼鏡、遮光眼鏡、拡大読書器などの補助具の選択、使用のための訓練を手伝ってくれる医療機関が多く見られますが、なかには、療育・就学・就労相談、情報提供なども行っている医療機関があります。
日本ロービジョン学会の定義そのものの、「医療的、教育的、職業的、社会的、福祉的、心理的等すべての支援」がロービジョンケアの内容は多岐にわたって行われており、その支援によって非常に助けられています。

私が受けているロービジョンケア

より具体的なイメージがわくように、私が受けているロービジョンケアについても、少しご紹介します。
私の眼疾患は、基本的に治療法がありません。
よりよく見えるように、補助具の使用や作業環境の向上をしていくしかないのです。
今までは、身体障害者手帳申請のための検査、遮光眼鏡の新調のための検査や相談、診断書作成、定期検診(視力検査や見え方に関する相談)をしてもらっていましたが、これに加えて、大学院進学を見据えた就学相談も次回からお願いする予定でいます。
入学試験の際、そして、入学後の合理的配慮について、どのようなことを大学側にお願いできるのか、また、どのようなやり方が私に合っているのかを一緒に考えていきます。

ロービジョンケアを受けていてよかったことは、自身の診療情報が蓄積されている医療機関で、ちょっとした困りごとも相談できること、また視力低下をはじめとした自分でも気づきにくい状況に定期検診で気づいてもらえる安心があることです。
定期的に受診していなければ、医師の助言を得るために、初診から始める必要があります。
そうすると受診を面倒に感じてしまい、小さな困りごとが大きくなるまで放置するといったことも起こりえます。
気軽に聞く機会があるからこそ、小さな困りごとについても話しやすくなるのだと思います。

まとめ

ロービジョン外来は、ただ治療を受けるだけの場ではなく、ロービジョンの方それぞれのニーズに合わせて、ロービジョンケアをしてくれる場所です。
今現在、非常に困っていることがなくても、少しやりにくいなと感じることができたときに医師に相談しやすい環境を作ることで、ロービジョンの方の生活の質は変わるでしょう。
転ばぬ先の杖と考えて、定期的にロービジョン外来を受診してみることをおすすめします。
参考文献・Webサイト日本ロービジョン学会 https://www.jslrr.org/

 

この記事を書いた人

雁屋 優

科学や医療、マイノリティに関する記事執筆を行うフリーライター。アルビノ(眼皮膚白皮症)による先天性のロービジョン。大学時代の専攻は生物学。読書が趣味。

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