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「3歳児の視力検査はなぜ大事!?」子どもの医学的弱視のしくみから高橋ひとみ教授が解説

子どもの弱視は、不幸にも起こってしまう病気だと思っていませんか? 確かに回復が困難な弱視もありますが、子どもに起こる弱視の多くは「早期発見により治療が可能な医学的弱視(※)」なのだそうです。

この医学的弱視を予防する方法が、実は「3歳児の視力検査」にあるのだとか。

今回は、3歳児の視力検査を広めるために、視力検査キット「たべたのだあれ」を発案された高橋ひとみ教授に、「3歳児の視力検査と医学的弱視(※)の関係」についてお話をうかがいました。

※医学的弱視とは日本眼科学会HPによると「視力の発達の感受性期に適切な刺激を受け取ることができなかったために生じた弱視で、眼鏡をかけたり訓練をしたりすることで視力が良くなる可能性があります。」と定義されています。

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高橋 ひとみ(たかはし ひとみ)教授

情報化社会における、視力検査の意義や有効性に関する研究を行っている。視力検査は3歳から必要との考えから発案した、視力検査キット「たべたのだあれ」は、「第9回キッズデザイン賞」で経済産業大臣賞を受賞。
現在「たべたのだあれ」は、幼稚園や保育園などから注目を集め、講演なども数多く行っている。


 

毎年約2万人の子どもが弱視に!?他人事ではない「医学的弱視」という病気

高橋ひとみ教授と大江編集長の写真

大江編集長(以下、大江):医学的弱視を防ぐためには3歳児の視力検査が大切だということですが、一般の方はまず医学的弱視が何かをご存じないかもしれません。

高橋教授(以下、高橋):視力が発達する時期に、目に病気や異常、ケガなどがあると「見る」ことが妨げられ、視力が停滞したり遅延したりします。これを医学的弱視といいます。弱視になると、メガネをかけても一定(0.3~0.04)以上の視力は期待できません。

そのため日常生活に不便があり、学習能率や作業能率も低くなってしまいがちです。

大江:それはお子さんにとってはもちろん、親御さんにとっても放ってはおけない病気ですね。

私自身、周りに弱視の人がいないので「めったになる病気ではない」と思っていましたが、実際はどうなんでしょう?

高橋:視力が発達する時期に視力検査を受ける機会がなくて、視力不良を見逃したために医学的弱視になる子どもが2~3%いるといわれています。パーセンテージで聞くと少ないと思うかもしれませんが、年間約2万人の子どもが医学的弱視になっています。

大江:2万人! それは多いですね! 医学的弱視は防げるということですが、具体的には何をすればいいのでしょうか?

高橋:視力検査ができるようになる3歳頃を目途に「視力検査」を受け、視力不良を見つけて治療を行えばよいのです。

大江:え? 視力検査なんですか!

知らないと怖い子どもの年齢と医学的弱視の仕組み

大江:3歳児の視力検査で医学的弱視を予防できるとは、初めて知りました。もう少し具体的に教えていただけますか?

高橋:そのためにはまず、一般的に私たちが言っている「見る」という機能がどのように発達するのかをお話ししたいと思います。

生まれたての赤ちゃんに視力がほとんどないことは知っていますよね?

大江:はい。視力はしだいに発達し、徐々に見えるようになるんですよね。

高橋:一般的に「見る」のは目だけの仕事と思われていますが、目と脳が連携して「見える」のです。

具体的には、外界の光情報が目に入り、「網膜上に焦点」を結びます。すると、網膜の視細胞が光情報を電気信号に変えます。この電気信号が視神経を通って脳に伝わり、脳がそれを認識して、はじめて「見える」のです。

視神経は、「光刺激が網膜上に焦点を結ぶ」ことにより伸びていき、回路を形成していきます。「いつも見る」ことによって、視神経の回路は作られます。

大江:なるほど、赤ちゃんのときから「いつも見る」ことで、視神経が作られていくわけですね。

高橋:そうです。視神経の回路が作られる期間は生まれてすぐに始まり、6~7歳頃までです。この期間が過ぎると視神経は作られません。

この期間を過ぎてから「ハッキリ見えない」ことが分かり、メガネをかけても、目の情報を脳へ伝える路(=視神経の回路)がないので、矯正視力はでないんです。

大江:6~7歳まで…。お母さん、お父さんで、これをちゃんと知っている人は少ないですよね?

高橋:そうなんです、視神経の回路が形成されるこの期間を知ってもらい、お子さんが「ハッキリ見えているか」を確認することが重要です。
この期間に、「ハッキリ見えていない」ことが分かり対処するなら、医学的弱視にならないですみます。

医学的弱視と3歳児の視力検査にどういう関係が?

高橋ひとみ教授が3歳児の視力検査について語る写真

大江:では、「ハッキリ見えているか」の検査は、6~7歳までにしても大丈夫なのでしょうか? 3歳児に視力検査をした方がいいのはなぜでしょう?

高橋:医学的弱視の治療効果は低年齢ほど大きいのです。また、「三つ子の魂、百までも」といわれる大事な幼児期を「周囲がボンヤリとしか見えない」状態で過ごしているのですから、早めに「ハッキリ見えているか」を検査をしてあげてほしいのです。

「ハッキリ見えているか」は視力検査をすれば分かります。視力検査ができるようになるのは3歳頃です。つまり、「3歳児の視力検査が医学的弱視の予防」につながるというわけなのです。

大江:なるほど、だから3歳の視力検査が重要なんですね。

もし、3歳の視力検査で「ハッキリ見えない」ことが分かったときは、どうすればいいのでしょうか?

高橋:「見えない」ことが分かれば、眼科医療機関で「見えない」原因を見つけるための精密検査を受けます。精密検査により「見えない原因」が判明します。
そこから、原因にあった治療を行うことで、「網膜上に焦点を結ぶ」ようにしていきます。

大江:原因にあった治療とは、例えばどんなことでしょうか?

高橋:原因が「遠視や乱視など屈折異常」の場合は、メガネをかけます。「先天白内障や斜視」の場合は、手術をします。「調節不良」の場合は、トレーニングなどがあります。

大江:安心しました、原因がわかれば早いうちから治療する方法があるんですね。

高橋:低年齢で発見し治療を開始すれば、視力不良による負担なく、日常生活を送ることができるようになります。視神経の回路が形成される期間なら、「いつも見る」ことにより、視力は発達していきますからね。

大江:なるほど! 早期発見、早期治療のために、3歳児の視力検査が法律で定められているのですね!

お母さん、お父さん!3歳での「視力検査」を徹底しましょう!

視力検査をする子どもたちの写真

大江:今回、これを知った3歳の子どもをもつお母さんには、「今すぐ視力検査をしなくては!」と思っていただけたのではないでしょうか。

高橋:はい。それに気づいていただき、ぜひ行動を起こしてもらえればと思います。

大江:行動を起こすというのは「幼稚園や保育園、自治体に視力検査の実施を呼びかける」ということですよね。

大人のような視力検査を3歳児がすることは難しいので、高橋教授が発案された「たべたのだあれ」を使うといいと思うのですが。

高橋:はい。視力検査の視標となるランドルト環をドーナツに見立てて、そのドーナツを食べた動物はだれかな? と質問するクイズ遊びの形式なので、お子さんが楽しみながら、しかも正確に視力検査ができます。

大江:「たべたのだあれ」を使った視力検査を実施しているところは、どこですか?

高橋:一部の幼稚園や保育園、病院などが取り入れていますが、まだ数は少ないのが現状なんです。

最近はイベントなどでも体験してもらっていますが、まだ全国規模での開催とまではいかなくて…。

大江:それはもったいないですね。もっと広く「たべたのだあれ」を知ってもらって、これを使った視力検査ができる環境を広めていきたいですよね。

高橋:私一人の力では限りがあります。ぜひみなさんの力をお借りして、一人でも多くの子どもを医学的弱視から救いたいです!

大江:はい!メノコト365編集部でも、皆さんに呼びかけていきたいと思います。

まずはこれを読んでくださったお母さん、お父さん。そして幼稚園、保育園、自治体関係者の皆さん。声を寄せていただくことから、ご協力をお願いいたします!

■幼児期のお子さんがいるお母さん、お父さんへご協力のお願い
メノコト365編集部では、この記事の公開とともに「3歳児視力検査」について、幼児期のお子さんがいるお母さんやお父さんの声をお聞きしたいと考えています。
皆さまからいただいたお声を元に、子どものうちから目の健康が大切であることについて、認知と理解を広めていく活動につなげたいと考えております。
お問い合せフォーム
※「3歳児の視力検査」と記入し、ご意見ご要望をお寄せください。

■幼稚園、保育園、自治体関係者の皆様へご協力のお願い
幼稚園、保育園、自治体関係者の皆さまからのご意見やご要望が、「たべたのだあれ」の普及活動の大きな助けとなります。ぜひお気軽にご質問、ご意見などお寄せください。
お問い合せフォーム
※「3歳児の視力検査」と記入し、ご質問、ご意見などお寄せください。

 

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※ 本サイトにおける各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、医師より適切な診断と治療を受けてください。

この記事を書いた人

大江 絵美

薬学博士

岐阜薬科大学薬効解析学研究室に4年間出向し、目のことやビルベリーの健康効果の研究を行ってきました。目のこと、サプリメントの素材についての研究や調査をもとにした情報発信を行っています。

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