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目の症状や病気と予防・治療法

自分の涙に合わせよう!ドライアイ治療薬の選び方をお薬専門家、原英彰教授が解説

皆さんは長時間スマートフォンやパソコンの画面を見続けた時、目が乾く、見えにくい、目が疲れるといった経験はないでしょうか。その症状はもしかするとドライアイかもしれません。

ドライアイは失明などの重篤な障害が起こることは少ないですが、慢性的な目の不快感や疲れをもたらすため、生活の質 (QOL) を著しく下げる病気であり、現在、日本では800万〜2200万人の患者がいるといわれています 。

しかし、皆さんはドライアイの治療薬についてちゃんと知っていますか? このように多くの方が悩まれているのに、治療薬や治療法の知識を持っている方は多くありません。今回はドライアイの仕組みから、どんな治療薬があるのか最新情報を交えて紹介します。

ドライアイってどんな病気?

ドライアイがどのような病気なのかを知るには、まず、人の目における涙の働きを知る必要があります。涙は、目の表面全体を覆うことで、酸素や栄養を目の表面全体に行きわたらせたり、ゴミや老廃物を洗い流したり、細菌の侵入を防ぐなど目を保護する役割を果たしています 。

ドライアイの患者の目では、表面を覆っている涙の状態が不安定になり、それによって目の表面を潤す力が低下します。その結果、目の乾燥、目の疲れ、目がごろごろするといった症状が引き起こされるのです。

どうしてドライアイになってしまうの?

正常の涙の構造の図

図⒈正常の涙の構造

ドライアイの涙の構造の図

図⒉ドライアイの涙の構造

涙は二重構造をしており、油層と液層から成り立っています (図1)。 油層は涙の外側を覆い、涙が蒸発するのを防ぐ働きがあります。一方で、液層はムチンというタンパク質を含んでおり、このムチンが目の表面に涙を保つために重要であるとされています。

ドライアイの病態では、これらの層のバランスや、構成成分のバランスが崩れることによって涙の分泌量や働きが不安定になり、目の表面の角膜を覆うことができなくなってしまっているのです (図2)。

それでは、どうしてドライアイになってしまうのでしょうか。

ドライアイになる原因はさまざまですが、生活習慣としては、以下の項目がよく挙げられます。

1) エアコンの使用などによって室内の空気が乾燥していること

2) パソコンやスマートフォンなどを長時間見続けること

3) コンタクトレンズの着用

また、加齢や、一部の抗コリン作用を持つ薬 (例えば、血圧を下げる薬や向精神薬) の副作用、涙液を分泌する涙腺に慢性的な炎症が起こるシェーグレン症候群などの疾患なども原因となるようです。

ドライアイの検査や治療にはどんなものがあるの?

ドライアイの検査としては、涙の質を調べる「涙液層破壊時間 (tear break up time; BUT) 検査」、涙の量を調べる「シェルマー検査」が一般的です。

一般的なドライアイの治療法としては、主に点眼薬が使用されます。現在使用されている点眼薬は多くの種類があります。眼科医がそれぞれの患者さんの目の状態などにあわせて、使用する点眼薬を選択します。

薬で効果が見られない場合は、手術によって治療することもあります。手術治療は、涙を排出する働きがある涙点に栓をすることで、目の表面に涙を貯めることを意図したものがよく聞かれます。

目の状態に合わせて選ぶ点眼薬のタイプ

現在使用されているドライアイのための点眼薬には多くの種類があります。それぞれ作用や効果が違うので、眼科ではドライアイのタイプや重症度に合わせて、適切な点眼薬を治療薬として選択しています。下記で一例を紹介します。

人工の涙液を補充する薬 (マイティア)

マイティアなどの人工涙液は涙に近い成分を目に補充することで、一時的な安息効果を得る目的で使用されます。症状が軽い方に使用される薬です。

ヒアルロン酸製剤 (ヒアレイン)

ヒアレインは主成分としてヒアルロン酸を含んでおり、目の表面に水分を保持する作用があります。ドライアイ以外の疾患に伴う角膜上皮細胞の障害に対する治療薬としても使用されている薬です。人工涙液と同じように、症状が軽い方の一時的な保水目的で使用される薬ですが、人工涙液よりも作用時間が長いとする向きもあり人工涙液よりも作用時間が長く、広く使用されている薬です 。

ムチンや水分の分泌を促進する薬 (ジクアス)

ジクアス (成分:ジクアホソナトリウム) は、目に水分を補給する治療薬と異なり涙の安定性に関わるムチンというタンパク質の分泌を促進するという新しい作用を持つ治療薬です。また、同時に水分の分泌を促進する作用も有するため、涙液を「分泌量」と「安定性」の両方の面で改善することができ、比較的重いドライアイの患者に対する有効性が期待されています。

ムチンの産生を増やす薬 (ムコスタ)

ムコスタ(成分:レバミピド) もジクアスと同様にムチンの産生を促進することで涙を安定化させる作用を有する薬です。粘膜を保護する飲み薬としても使用されています。ムコスタはジクアスと異なり、角膜上皮に作用するため、重症なドライアイで上皮障害を有する患者にも効果が期待できる薬です。

日常生活で気をつけることは?

ドライアイのための様々な点眼薬が生み出されていますが、薬を使って治療する前に、ドライアイにならないように心がけることが大切です。

ドライアイになる主要な原因は、日常生活の目の使い方と深くかかわっています。

画面作業中には、画面を見下ろす形で作業をすること、目が乾燥しないように意識的に瞬きをすること、目を休めるために休憩をはさむことが大切です。その他、室内の空気が乾燥しないように加湿器などを使って湿度を保つことも有効でしょう。

また、コンタクトレンズを着用している方は、コンタクトレンズの着用頻度を減らすことや、適切な手入れを行うことで、目の乾きが抑えられるでしょう。

このように、目に過度な負担を与えない生活を心がけることでドライアイになるリスクは大きく緩和することができるといわれています。

涙の状態を正しく知り、適切な薬を使うことが大切

ドライアイの治療薬には症状別に多くの種類があり、目の状態によって点眼薬を使うことが大切ということが分かっていただけたでしょうか? 細かく見れば、もっとたくさんの点眼薬があるのですが、今回は涙の症状に合わせて代表的なものを紹介させてもらいました。

一般的な点眼薬は今回説明の通りですが、ドライアイの症状を感じたら、病院で診察を受けるのが鉄則。自己判断で市販の薬を購入せず、病院へ行ってご自身の涙の状態を検査しましょう。医師に相談し、涙の状態によって適切な点眼薬を選んでもらってくださいね。

 

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※ 本サイトにおける各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。個別の症状について診断、治療を求める場合は、医師より適切な診断と治療を受けてください。

【画像】
kitsune05 / Shutterstock

この記事を書いた人

原 英彰

薬学博士/薬剤師

岐阜薬科大学学長。製薬会社の研究所で抗片頭痛薬、脳卒中治療薬、抗緑内障薬など新薬の研究開発に従事。現在は脳や目の病気の解明とその治療薬の研究、健康食品の研究などを行っています。

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