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目の基礎知識

いまさら聞けない視力の話。目がいい、悪いってどうやって決めているの?

視力検査をする少年の画像

皆さんこんにちは。
4月になり、通常なら新学期や新生活が始まるこの季節になると、多くの人が経験する「健康診断」。

皆さんも、身長や体重、耳の聞こえなどといっしょに、視力検査を受けたことがあるはず。しかし、「視力」と一口に言ってもその中身は実に様々。今回は、視力とは何か。目のいい悪いはどのように決められるのかに焦点を当てていきましょう。

視力とは?

視力とは、私たちの『見える力』を数値化したものです。対象となるものを、どれだけ細かく細部まで識別できるかの指標です。

学校や眼科での視力検査では、アルファベットのCのようなマークやひらがなが並んだ視力表が一般的に使われます。このアルファベットのCのようなマークはランドルト環と言い、世界共通の視力検査用の記号です。視力検査では、これを見て「あいている方向を言ってください」と、指示されますね。

一般的な視力検査は、視力表から5メートル離れて行います。視力表で視力1.0に該当するランドルト環は、高さ7.5ミリ、文字の太さ1.5ミリ、文字の切れ目部分の幅1.5ミリです。5メートル離れたところからランドルト環の向きがわかれば、1.0の視力があることになります。ちなみに、視力0.5用のランドルト環の大きさは1.0用の2倍、0.2用は5倍、視力表の一番上にある0.1用は1.0用の10倍の大きさです。

ランドルト環の図

ランドルト環は1909年にイタリアで開かれた国際眼科学会で国際的な標準指標として採用されることが決まり、それ以後、視力検査は世界的にこの図形で行われているそうです。

ひと言で「視力」といってもその種類はさまざまで、メガネを作る前の視力測定では、ありのままの視力を示す「裸眼視力」、メガネを着用した際の視力を示す「矯正視力」などの測定が必要とされます。

遠くのものを見る視力は「遠見視力」、逆に近くのものを見る視力は「近見視力」と呼ばれます。このほか、動いているものを見分ける能力を「動体視力」、静止しているものを見る能力を「静止視力」なども聞いたことがあるのではないでしょうか。

学校で行う視力検査や、運転免許更新、メガネ作りの時に実施する視力検査は、遠くのものを見る「遠見視力」と止まったものを見る「静止視力」の両方の検査を行うものとされています。

視力検査はどうして必要なの?

子供のころの視力検査をきっかけに、メガネやコンタクトレンズの使用を開始したという体験はありませんか。

幼稚園、小・中学校、高等学校、大学では学校保健法に基づいて学校健診が実施されます。学校教育の現場では、目が見えにくいというのは授業中の黒板の文字が見えにくかったり、教科書の文字が見づらかったりと、視力がそのまま学習や日常生活の不便さに直結してしまう可能性があります。そのため、こういった現場では教室の中での見え方に基づいた視力検査を実施しています。

また、視力検査は目の病気を発見する役目もあります。例えば、裸眼視力が0.1の人でもメガネで矯正することによって1.0になるのであれば問題ありませんが、メガネで矯正しても0.8だった場合、その背景に何かしらの病気が隠れている可能性があります。

近視や遠視などの屈折異常がないのに1.0以上の良好な矯正視力が得られず、調べたところ子どもさんの場合、心因性の視力障害が見つかったり、成人の場合は円錐角膜などの眼球の病気が見つかったという事例もあります。(※屈折異常については次項を参照してください)

重篤な病気ではなくても、視力が出なければ、仮性近視や、近視、遠視、乱視などさまざまな原因が考えられ、それぞれ治療方法も矯正方法も異なります。

視力検査をしているイラスト

どうして視力は落ちるの?目が悪くなるの?

では、なぜ視力は年齢や環境によって変化するのでしょうか。まず、私たちが目でものを見る仕組みについてご紹介します。

人間の目がものを見る仕組みは、カメラとよく似た構造になっています。私達の目の前方にある角膜や水晶体は、カメラで例えるとレンズに相当し、目の奥にある網膜はフイルムに相当します。

ものを見るときには、ものの色や形が光の情報として目の中に入ってきて、角膜・水晶体(カメラのレンズ)で屈折し、網膜上(カメラのフィルム)に光が集まる(=焦点が合う)ことで、網膜上にはっきりと画像が映し出されます。その映し出された画像情報が脳に伝達されることで、私たちははっきり見えていると感じるのです。

近視や遠視などの屈折異常は、本来は網膜上で焦点が合うはずだった映像が、近視は網膜よりも手前で、遠視は網膜よりも後ろで、網膜からずれた場所で焦点を結んでしまうために起こるのです。

網膜上に光が集まる(=焦点が合う)ようにするため、目の中では水晶体が厚みを変えてその役割を担っています。

水晶体についている毛様体筋という小さな筋肉によって、水晶体の厚みを変えることでピント調節を行います。このピント調節がうまくいくと網膜上にきちんと光が集まり、画像がはっきりと映し出されるので、私たちはものがはっきり見えていると感じます。

一方でピント調節がうまくいかず、網膜の手前や後ろの位置で焦点が合うと、カメラでいうところのピンボケ状態となり、網膜上で画像がぼやけて映し出されるので、私たちはものをはっきりと見ることができません。

視力が落ちる、目が悪くなるということの多くは、この水晶体と毛様体筋によるピント調節がうまくいっていないことが原因と考えられます

スマートフォンやテレビゲーム、長時間の読書など近くを見る作業を長時間続けると、毛様体筋が同じ姿勢で頑張りすぎてしまい、とっさに遠くのものにピントが合わないことがあります。こちらは仮性近視の例ですが、仮性近視の状態が長く続くと、仮性ではなく本当の近視になってしまうことも考えられますので注意が必要です。

視力の種類

私たちが普段学校や眼科で検査する視力は、遠くのものを見る「遠見視力」と止まったものを見る「静止視力」とお伝えしました。視力には、様々な種類があるのでそれぞれをご紹介します。

  • 静止視力…数メートル先の止まったものを見る(ランドルト環の方向を見分ける)視力。学校や眼科、メガネ店で行われる視力検査の多くはこれ。
  • 動体視力…動くものを見る能力。野球や卓球、ボクシングなどの一流選手は動体視力が良いとよく言われますね。走る電車の車窓から、通過する駅の看板の文字を読むことができたり…というのも動体視力です。適切なトレーニングによって高めることができます。
  • 深視力…遠近感、立体感、奥行きを捉える視力の一つです。大型免許などを取る際には深視力の検査が必要です。バスケットボールで3ポイントシュートをスパスパ決めるトッププレイヤーにも必要と考えられています。
  • 遠見視力…5メートル離れた地点から調べる、動かないものを見る視力検査です。ものが見えにくい、二重に見えるなどの症状があるときに、最初に行なわれる基本的な検査です。
  • 近見視力…30cmの距離で視力検査表を片目ずつ見て、どの大きさまで見えるかを調べます。老眼や調節障害などを判定する際に調べます。また、子どもの弱視の早期発見のため、3歳児検診の際も行われます。
  • 裸眼視力…メガネやコンタクトレンズをしない状態の視力です。
  • 矯正視力…メガネやコンタクトレンズによって「矯正」した状態での視力です。
  • 片眼視力…右眼、左眼片方の眼だけで見た時のそれぞれの視力です。学校での検査はこれですね。
  • 両眼視力…両方の眼で見たときの視力です。通常は片眼ずつの視力よりも良くなります。うまく見えないときは、両眼視機能がうまく働いていない可能性があります。
  • 実用視力…通常の視力検査のように検査条件を設定した状態での視力でなく、日常下で、どの程度の視力が出ているかを調べた視力のこと。普段の「平均的」な視力と考えられます。運転手さんなど、継続して一定の視力を必要とされるお仕事をされている方には重要です。ドライアイや白内障などの眼疾患の発見に役立ちます。

少年のイラスト

最後に

「視力」とひとまとめにしても、こんなにも多くの種類が存在しています。「目が良い」という状態は、様々な『見る力』が複合的に働いているのです。

また、一部を除くと、現在の医療では一度悪くなってしまった「視力」を元に戻すことはできません。目が悪くならないような生活には、目の健康に役立つとされている栄養を含んだ食事やサプリメントの摂取、たっぷりの睡眠による休息、さらに暗い場所で読書やゲームをしないことが大切です。

ゲームや読書を長く続ける場合は、1時間続けたら10~15分の休憩をとるようにしてください。良い視力が維持できるよう、日常生活でも気を付けましょう。

※ 本サイトにおける各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。個別の症状について診断、治療を求める場合は、医師より適切な診断と治療を受けてください。

<参考情報>
大阪府眼科医会
http://osaka-ganka.jp/column/column_05/
三和化学研究所
https://www.skk-net.com/health/me/c02_0202.html
千寿製薬
http://www.senju.co.jp/consumer/resteye/zatsugaku/002.html
日本眼科医会
https://www.gankaikai.or.jp/school-health/3da61df5c0c07a1365092b83670e9395.pdf
コンタクトレンズメーカー 株式会社ユニバーサルビュー
https://orthokeratology.jp/eye-structure-function/
スマイル眼科クリニック
https://www.smile-eye.com/faq/1_3.htm
那須自動車学校
https://www.nasu-ds.jp/License/big/deepvision.htm
海谷眼科
http://www.kaiya-eyes.com/checkup/012/
学研 まんがひみつ文庫 眼鏡と視力のひみつhttps://kids.gakken.co.jp/himitsu/library159

 

この記事を書いた人

大江 絵美

薬学博士

岐阜薬科大学薬効解析学研究室に4年間出向し、目のことやビルベリーの健康効果の研究を行ってきました。目のこと、サプリメントの素材についての研究や調査をもとにした情報発信を行っています。

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