ついにヒトで効果を実証~子どもの近視化と「クロセチン」の研究結果を紹介

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クチナシ由来の黄色い色素成分「クロセチン」が、子どもの近視化を防ぐという研究結果が2019年1月に発表されたのをご存じでしょうか。

▼クロセチンが、近視の進行を抑制する可能性を示した研究とは?
近視に食べ物のアプローチ!クチナシ色素のクロセチンが子どもの近視進行を防ぐ!?

これまではマウスによる実験結果でしたが、今回はついにヒト臨床試験で子どもの近視に対して有効であることが発表されたのです。

そこで、このクロセチンの近視に対する効果を調べた、慶應義塾大学医学部眼科医の坪田一男教授らの研究グループの研究成果を紹介します。

近視を単なる視力の低下と思っていませんか?

近視はいま日本を含む東アジア圏で特に多いというデータがあります。また、WHOの報告でも、およそ30年後の2050年には、世界人口の52%が近視に該当するようになると予測されているほど、近視が目の大きな問題になっていることを皆さんはご存じでしょうか?

「視力が悪いなら、メガネやコンタクトレンズを装着すれば済む話なのでは?」そう思う人も多いでしょう。しかし、幼いうちに近視が進行して強度近視にまでなれば、実は、緑内障や網膜剥離、黄斑変性などの失明疾患を発症するリスクも高まることが知られています。

それでは、近視の進行を遅らせるためには、いつから気をつける必要があるでしょうか。近視の進行は成長期の子どもの頃は早く進むといわれています。そのため筆者としては、お子さんの将来のためにも、できるだけ早い時期から近視対策に取り組む必要があると保護者の皆さんに呼びかけています。

そこで今回は、最近新たに子どもの近視を防ぐ効果が示された、いま注目の食品成分「クロセチン」について、研究結果とともに紹介します。

クロセチンはいま最も近視予防が期待されている食品成分

皆さんは「クロセチン」と聞いてもなかなかピンとこないかもしれません。以前の記事にも書いていますが、クロセチンは、クチナシやサフランに含まれる黄色のカロテノイド成分で、よく食品の着色料としても使用されている身近な色素成分です。

慶應義塾大学医学部眼科医の坪田教授らの研究グループにより、2019年の初めに発表された研究論文(※1)では、動物実験においてクロセチンが近視の指標である眼軸長(がんじくちょう:前眼部から後眼部までの距離)の伸長を抑える働きをもつことや、近視を防ぐために重要なEgr-1(Early growth response protein 1)遺伝子を活性化させる作用が特に高い成分であることが報告されました。しかし、クロセチンが本当に人でも同じように近視を防ぐ効果を発揮するのかについては、疑問が残されていました。

クロセチンは人でも効果を発揮する?子どもを対象とした実験とは

そこで今回、坪田教授らの研究グループは、近視が進みやすい子どもを対象に、新たにヒト臨床試験を行った(※2)のです。

試験では、6歳から12歳までの軽度な近視の子ども69名(平均年齢10.2歳)を2グループに無作為に分け、片方のグループ(39名)にはクロセチン7.5mgを含むカプセルを、もう一方のグループ(30名)にはクロセチンを含まないプラセボカプセルを渡し、6ヵ月間(24週間)毎日1粒ずつ飲み続けてもらいました。その過程で、近視の指標である屈折度数と、眼軸長の変化を測定しています。

なお、試験に参加した子どもは、少なくとも片親が近視であり、目に病気がなく、乱視は無いか低度であり、近視矯正の眼鏡をかけていて、コンタクトレンズは装着していない、などの条件で集められています。

ついに子どもの近視の進行を抑える効果が示された!

試験の結果、なんとクロセチンを7.5mg毎日飲んでいた子どもたちは、プラセボカプセルを摂取していた子どもたちと比べて、飲みはじめてから4週間で屈折度数の低下が、また12週間で眼軸長の伸長が抑えられました。最終的には、屈折度数の低下は20%、眼軸長の伸長は14%も抑えられたそうです。

つまり、クロセチンを飲用し続けたことで眼軸長の異常な伸長を防ぐことができ、結果として屈折度数の低下、すなわち近視の進行が抑えられることが示されました。

また、動物実験でも近視によって脈絡膜(みゃくらくまく:網膜の外側にある膜)が薄くなることが知られていることから、今回のヒト試験でも脈絡膜への影響も検討されていました。その結果、プラセボを摂取していた子どもたちは後眼部の脈絡膜の厚みが6ヵ月間で平均9.2μm薄くなっていたのに対し、クロセチンを飲んでいた子どもたちの脈絡膜は、逆に平均34.1μmも厚くなっていたのです。

クロセチンは子どもだけでなく大人にも?さらなる可能性に期待

今回は新たに分かったクロセチンのヒト試験の結果を紹介しました。子どもの近視進行だけでなく、大人の強度近視の進行においても、クロセチンの摂取が有効である可能性がある、と坪田教授らの研究グループは考察しています。

近視の人は「クロセチンを摂りはじめないと」と思うかもしれません。しかし、近視が気になる人はまず医師に相談しましょう。そのうえで、生活習慣の改善の一環として、サプリメントなども取り入れてみることを筆者はおすすめします。

 

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※ 本サイトにおける各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。個別の症状について診断、治療を求める場合は、医師より適切な診断と治療を受けてください。

【参考】
※1 : K. Mori, et al. Oral crocetin administration suppressed refractive shift and axial elongation in a murine model of lens-induced myopia. Sci. Rep. 9, 295, 2019.
※2: K. Mori, et al. The effect of dietary supplementation of crocetin for myopia control in children: A randomized clinical trial. J. Clin. Med. 8, 1179, 2019.

【画像】
milatas / Shutterstock

この記事を書いた人

編集部員

小川 健二郎

宮崎大学 農学系食品科学研究領域 テニュアトラック助教。博士(薬学)。目の健康をテーマに宮崎県産の食品の健康機能の研究を行う。プライベートでは視覚障がい者マラソンに伴走者として参加。活動を通じて知り合った全盲の女性と結婚し家庭をもつ。目に障がいをもつ妻とともに歩んでいるからこそ見えてくる苦労や目の大切さを多くの人に伝えたい。そんな思いから、メノコト365では目の研究分野を中心に、病気や障がいを防ぎ健康維持に役立つ情報の発信を心掛けている。

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