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見えない・見えづらい方へのお役立ち情報

10月15日は「国際白杖の日」最先端の技術とAIで視覚障がい者が持つ白杖が進化!

視覚障がい者用の白杖をもつ高齢者

視覚障がい者である私にとって欠かせない白杖。
その白杖が最先端の技術とAIによって日々進化しています。白杖の意味や役割を多くの人に知っていただきたいと制定された記念日のことや、開発が進んでいる新たな白杖を紹介します。

「国際白杖の日」とは

1970年、白杖の意味や役割を一人でも多くの方に知っていただくことで視覚障がい者の安全な歩行や生活への支援につなげたり、視覚障がい者に対しての理解をより深めてもらえるようにと世界盲人連盟(現在の世界盲人連合)によって10月15日を「国際白杖の日」と制定されました。
その後、日本では広島県広島市の視覚障害者の集い「白い三輪車の会」が同日を日本記念日協会に申請し、2022年に認定されました。

視覚障がい者のための白杖の歴史

「国際白杖の日」ができたのは1970年、では白杖そのものはいつ生まれたのか。それは1915年ごろフランス人のジャン・ドラージュが視覚障がい者用の杖を考案し、白い杖の協会を設立この杖が現在の白杖の原型だといわれています。その後、1925年にライオンズクラブ国際大会にてヘレン・ケラー女史が「ライオンズクラブのみなさん闇を開く十字軍の騎士になってください。」と呼びかけたことで世界のライオンズクラブの盲人福祉活動が始まりました。そして、1931年にカナダのトロントで行われたライオンズクラブ大会にて「国際的に白杖を視覚障がい者の歩行補助具に」という決議がされ、世界に白杖が広まっていきました。

 

白杖の役割

白杖は全く見えない方(全盲)だけでなく、少しだけ見える方(弱視)、視野(見える範囲)が狭い方などさまざまな見え方の人に役立っています。
主としては杖先で段差や路面の状況を把握する、杖で障害物に体がぶつかるのを防ぐ、周囲の方に視覚に障害があることを知っていただく、杖先で地面を叩きその反響音で周囲の状況を把握することなどです。
視覚に障害があっても白杖があればある程度は安全に歩くことができますが、危険な場面は大変多いです。そんな白杖とAIを組み合わせることで危険を少しでも減らすことが出来ればと新たな技術の開発が進められています。

※視覚障がい者だけではなく、聴覚に障がいがある方や並行機能障害の方も白杖を持つ場合もあります。

1.スマート白杖「WeWALK Smart Cane」

最先端の技術とAIを活用した視覚障がい者のためのスマート白杖スマートケーン紹介画像スマートケーンアプリ

引用画像:PR TIMES

1つ目に紹介するのは、イギリス発のスタートアップ企業の「WeWALK」が開発を進めている最先端の技術とAIを活用した視覚障がい者のためのスマート白杖「WeWALK Smart Cane(ウィウォークスマートケーン)」です。
従来の白杖では路面や足元、腰の高さ程までの障害物しか確認できず、高い位置にあるトラックのミラーや看板、木の枝などにほとんど気がつくことができません。
「WeWALK Smart Cane」は、超音波を利用して白杖では確認できない頭や胸の高さにある障害物を検知し、利用者に振動で危険を伝えます。さらに、モバイルアプリと連携することで、タッチパッドを通じたアプリ操作や、周辺施設の案内、音声アシスタントの利用が可能となり、両手を塞ぐことなく外出することができます。
WeWALKは「すべての視覚障がい者が行きたいところに自由に行けるようにする」というビジョンのもとNEC Innovation Challenge 2022にて、NEC X賞を受賞したことで「WeWALK Smart Cane」にNECの北米研究所の映像解析技術を使った空間認識機能を実装するというコラボレーションプロジェクトが開始されました。
私は障害物から顔を守るために帽子をかぶることが多く、視覚障がい者の友人は木の枝などから目を守るために伊達メガネをかけています。「WeWALK Smart Cane」が完成すれば、そんな心配も減りそうです。

 

2.視覚障がい者のための歩行アシストAIカメラ seeker

駅のホームや横断歩道、街中の段差など危険な状況を検知するシーカー紹介画像

引用画像:株式会社マリス

2つ目に紹介するのは九州工業大発のスタートアップ企業である福祉機器開発会社「株式会社マリス creative design」の「seeker(シーカー)」です。
マリス creative designは九州工業大の大学院を修了後、日立やソニーでエンジニアとして働いていた和田康宏氏が2018年に創業した企業です。
和田氏は脊髄を損傷し車いす生活となった自分の母親の介護を続けてきた経験を踏まえ、大学院時代は盲ろう者のための福祉機器の研究に取り組まれていたそうです。卒業後、エンジニアとして働いていたときに視覚障がい者や高齢者の方々が自由に安心して出かけられるようにと同社を創業。母校の指導教員からの技術的な支援や学生からの協力も得ながら開発を進めているそうです。
機器が実用化された際には、頭部に取り付けたカメラとセンサーで取り込んだ情報を、エッジコンピューティングAIを使って処理し、駅のホームや横断歩道、街中の段差など危険な状況を検知すると使用者の白杖に取り付けた機器が振動し危険を知らせるという仕組みになるようです。
警察庁によると、音響信号機が設置されているのは全国の信号機のうち1割程度にとどまっている上に、近隣住民への配慮から音が鳴る時間を午前7時頃から午後8時頃までに限定していることが多いです。
私は駅のホームで落ちそうになったり、音が鳴らない交差点の横断は勘に頼ることが多いので実用化されるのが待ち遠しいです。

最後に

今回紹介した技術以外にも私たち視覚障がい者の安全な外出をサポートしてくれる機器やアプリを開発しようと頑張っていただいている方はたくさんいます。
しかし、交差点を横断中に車にはねられたり、駅のホームで転落したりして、視覚障がい者が事故に遭うのは後を絶ちません。数ヵ月前、後輩が駅のホームから転落しました。幸いケガはありませんでしたが他人ごとではないと思っています。
もし白杖を持っている方を見かけたときは見守りや声かけなどしていただけるととても助かります。

参考
NEC X、視覚障がい者のためのスマート白杖・アプリを開発
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000511.000078149.html

株式会社マリス creative design
https://maris-inc.co.jp/

 

この記事を書いた人

山本 旭彦

わかさ生活ヘルスキーパー。網膜色素変性症によって視野が狭くなり、暗いところも見づらい症状をもつ。視覚障がいへの理解、気軽にサポートできる環境を広めようと、「あきひこさんの一日」と称した出張授業を小学校などで継続的に実施しています。

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