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4月の最終水曜日は「国際盲導犬の日」(2023年4月26日)。 盲導犬は視覚障がい者の目と心に光を灯してくれる大切なパートナー 前編

訓練している盲導犬たち

盲導犬は視覚障がい者にとって大切なパートナー。世界初の盲導犬が誕生して約100年。日本でも80年以上の歴史があり、普及のための様々な活動が行われていますがまだまだ理解は進んでいません。4月の最終水曜日(2023年は4月26日)に制定されている「国際盲導犬の日」をきっかけに少しでも盲導犬について知っていただきたいです。

盲導犬とは

ハーネスをつけた盲導犬が座っている画像盲導犬は視覚障害があっても自由に外出できるよう視覚障がい者の目となり障害物や段差、曲がり角などを教えてくれる大切なパートナーです。
盲導犬が体につけている白または黄色の胴輪をハーネスといい、ハーネスを通して盲導犬の動きを視覚障がい者が感じ取ることで周囲の状況を知ることができます。
よく盲導犬が視覚障がい者を目的地まで連れて行ってくれると思っている方が多いのですが、あくまで盲導犬は周囲の状況をパートナーに伝えることが仕事であり、どのように目的地まで行くかを決めるのは視覚障がい者自身です。活躍している犬種としては、大きさや順応性などの性格、可愛さなどの面からラブラドール・レトリバーが最も多く、その他にゴールデン・レトリバーやミックスブリードも活躍しています。
盲導犬は道路交通法や身体障害者補助犬法という法律もあり、特別な訓練を受けています。そのため、公共施設や交通機関をはじめ、飲食店やスーパー、ホテルなど様々な場所に一緒に行くことが認められています。ただ現状は認知が乏しく、飲食店や病院でも入店を断られるケースがまだまだ多いようです。

世界初の盲導犬

盲導犬が誕生して100年以上の歴史があります。ドイツで戦争により失明した兵士たちの視力的なサポートが軍用犬(シェパード)を訓練すればできるのではないかと考え、世界で最初の「盲導犬訓練学校」が設立されました。
そして、1916年に学校で訓練を受けた軍用犬が兵士たちに提供されたのが世界初の盲導犬だと言われています。
その後、盲導犬訓練学校がドイツ各地に創られ、多くの盲導犬を育成できるようになると世界へ盲導犬が広がっていきました。日本にも1939年にドイツから4頭のシェパードがやってきました。これが日本初の盲導犬です。
そこから日本での盲導犬育成が始まり、財団法人日本盲導犬協会や盲導犬の育成センター(2023年3月現在 全国11ヵ所)の設立、繁殖やキャリアチェンジ、引退後の犬を飼育するボランティアなど盲導犬の育成に関する仕組みと多くの方の協力により日本でも盲導犬が増えていきました。

どんな一生を過ごすの?

多くの方の協力の元育てられている盲導犬ですが、どんな一生を過ごすのでしょうか。

1歳までは愛情たっぷりに

まず、盲導犬の候補犬は健康で盲導犬に向いている性格の両親(繁殖犬)から産まれます。産まれた仔犬は、繁殖ボランティアさんのもとで生後約50日まで母犬や兄弟犬と一緒に過ごします。その後は、パピーウォーカーと呼ばれるボランティアさんの元で1歳になるまでの約10ヵ月間家族の一員として愛情をたっぷり受けながら、人間社会のマナーやルールを学びます。この期間に人との信頼感を学び、様々な経験を通して、仔犬は社会性を身につけることで、将来視覚障がい者との生活がスムーズに送れるようになるのです。

楽しく訓練

適性が認められた仔犬は1歳を過ぎると、盲導犬になるために盲導犬訓練センターに移ります。
訓練では最初に「グッド」と褒められることが楽しいことだと学び、続いてシット(座れ)、ダウン(伏せ)、ウェイト(待て)などの基本的な指示を学習します。
その後街の中で視覚障がい者を安全に誘導するために「曲がり角や段差・階段を教える訓練」や「看板、自転車、車などの障害物をよけて歩く訓練」、「駅のホームでの安全な歩行や電車・エスカレーターの乗り降りの訓練」などを行います。
また、視覚障がい者が持つ白杖では高い場所にある障害物(大型トラックのミラーや木の枝など)に顔をぶつけてしまう可能性がありますが、盲導犬は高いところにある障害物も避けられるように訓練するそうです。
訓練する犬は一番楽しいと思えるように訓練され、その中で盲導犬として大切なことを覚えていきます。
しかし、訓練を受けた内、最終的に盲導犬となれるのは2割〜3割程度で盲導犬に向かないと判断された場合はキャリアチェンジすることになります。
盲導犬普及推進活動の場でデモンストレーションなどを行う「PR犬」や手足が不自由な方のサポートをする「介助犬」になることもあれば、「キャリアチェンジ犬飼育ボランティア」のもとで暮らすなど様々です。

盲導犬として活躍

そして、盲導犬に向いていると判断された犬はパートナーとなる視覚障がい者との共同訓練を行います。これは、約4週間訓練センターに一緒に宿泊し、街の中でパートナーと歩く訓練をします。
この期間に視覚障がい者は盲導犬との交通機関の利用の仕方や排泄や給餌など犬の世話についても学びます。共同訓練が終わると、約8年間盲導犬として活躍します。

引退後は

盲導犬は、10歳前後で引退します。まだまだ元気な年齢ですが、少し早めに引退して、引退犬飼育ボランティアの家で家族の一員として新しい生活を楽しんだり、引退犬のための部屋が整えられている「盲導犬の里富士ハーネス」で仲間たちとのんびり過ごしたりします。

次回は盲導犬育成の現状についてお伝えします。

引用:公益財団法人 関西盲導犬協会

 

この記事を書いた人

山本 旭彦

わかさ生活ヘルスキーパー。網膜色素変性症によって視野が狭くなり、暗いところも見づらい症状をもつ。視覚障がいへの理解、気軽にサポートできる環境を広めようと、「あきひこさんの一日」と称した出張授業を小学校などで継続的に実施しています。

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