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見えない・見えづらい方へのお役立ち情報

視覚障がい者を助けてくれる歩行支援アプリ『Eye Navi(アイナビ)』

Eye Naviアプリ紹介画像

私は網膜色素変性症という視力低下・視野障害(見える範囲が狭くなっていく)・夜盲症(暗い場所で見えづらくなる)が少しずつ進行する目の病気をもっています。見えづらいことで出来ないことや困ってしまうことが沢山あるのですが、サポートしてくれる機器やアプリの開発によって一人でも出来ることが増えてきました。今回は4月に、新たに誕生した視覚障がい者歩行支援アプリをご紹介します。

視覚障がい者にとっての外出

Eye Naviアプリのスマホの画像

視覚障がい者は見え方によって「全盲」と「弱視(ロービジョン)」に分かれています。
「全盲」は視力が全くなく光も感じない状態で、弱視(ロービジョン)は少し見えているが、目の病気などにより目の機能に問題が起こったり、脳の機能に原因があることによってメガネやコンタクトレンズでの矯正が難しい状態です。
視覚障がい者は見えない・見えづらいために、日常生活において困ってしまう場面が沢山あるのですが、その一つに「一人での外出」があります。
白杖、盲導犬、同行援護サービス(外出時の移動時のサポートや外出先での代筆や代読などの視覚的情報の支援を行う仕組み)などサポートは様々ありますが、盲導犬に関しては年々頭数が減っており、同行援護も自由に利用できるわけではありません。
そんな視覚障がい者の外出時の悩みを少しでも解決したいと開発されたのが『Eye Navi』です

『Eye Navi』アプリ開発の想い

『Eye Navi』は、株式会社コンピュータサイエンス研究所の代表取締役 林秀美(はやし ひでみ)さんの「視覚障がいのある方が、もっと自由に行きたい場所へ行けるような世の中にしたい」という想いから誕生したアプリです。
林さんは20年程前に盲導犬ロボットの開発を試みられましたが、当時の技術では画像認識や解析、ロボットの自動走行、音声認識技術などが未成熟だったため断念されています。しかし、視覚障がいを持つ方々との交流を続ける中でやはり「一人で移動する際の補助となる実用的なツール」が必要と感じ2015年に起業され開発をスタートしました。

『Eye Navi』ってどんなアプリ

Eye Navi設定画像『Eye Navi』は、AI(人工知能)を使った画像認識による障害物の有無と、視覚障害があってもわかりやすい経路案内の2つの機能を備えたiPhone専用の視覚障がい者歩行支援アプリです。
視覚に障がいを持つ方が簡単に操作でき、初めて通る道でも一人で安心して歩くことができるよう開発されました。

アプリを起動すると「道案内」「お散歩」「設定」の3つのボタンがあります。

道案内

お散歩の機能に加えて自宅や目的地までの経路案内が利用できます。

お散歩

20種類以上の目標物や障害物(点字ブロック・フェンスやガードレール・人・車・歩行者信号が赤か青か等)の認識とカフェ・銀行・コンビニ・交通機関など周辺にある施設を音声メッセージで教えてくれます。

設定

音声メッセージのスピード(5段階)や通知する障害物の種類を決めることなどができます。視覚障がい者は視力や見える範囲が人によって違うため、自分の見え方や必要な情報だけを得られるように細かく設定できるようになっています。

※実際に使用する際に、iPhoneを手に持ち本体のスピーカーから音声メッセージを聞くことはできますが、ネックポーチでiPhoneを首から下げ、Bluetoothのイヤホンを使用することでより安全に利用することができます。

シンプルで使いやすい

昨年、わかさ生活と株式会社コンピュータサイエンス研究所とのご縁があり、私も『Eye Navi』のテスト版を利用いたしました。
私がアプリの説明を聞いて興味を持ったのは、周囲のお店や施設を調べられることと横断歩道や歩行者信号が青か赤かを音声で教えてくれるところです。
アプリを起動してみると画面もシンプルで、iPhoneの音声読み上げ機能「Voice Over(ボイスオーバー)」で簡単に自分に必要な情報だけを得られるよう設定することができました。
そして、職場の近くにどんなお店があるのかほとんど知らなかったので、「お散歩」で周囲500m以内の施設やお店を確認してみると50ヵ所以上見つけることができました。
「お散歩」で見つけたお店で行ってみたい場所が見つかったので「道案内」を使って行ってみることにしました。
まず目的地を登録しナビゲーションをスタートすると「○○○まで260mです 4回曲がります 60m進んで左です 40m進んで右です・・・最後に30m進むと目的地です。」と最初に音声メッセージが流れるので、出発前に目的地までの経路を頭で思い描くことができます。経路を確認し歩き出すと「正しい方向です」とメッセージが流れ、そのまま歩いていくと「横断歩道です 信号は青です」とメッセージが流れました。いつも渡っていいのか迷ってしまう音響信号のない横断歩道も問題なく渡ることができました。
その後もメッセージに従い進んでいくだけで初めての場所に一人で行くことができました。これまで様々なナビゲーションアプリを使ってきましたが、このアプリはとても使いやすいと感じました。

まとめ

視覚障がい者の外出はサポートしてくれる仕組みや機器・アプリの開発が進んできていますが、危険な場面に遭遇することはまだまだ多いです。
そんな中で『Eye Navi』のようなアプリが無料で利用できるのは本当に嬉しいです。
株式会社コンピュータサイエンス研究所ではアプリをカメラ付きのアイウェアに組み込むことや自立走行できる盲導犬タイプのロボット開発も見据えているとのことで、さらに開発が進み視覚に障害があっても気兼ねなく外出できる未来が来ることを願っています。

参考

わかさ生活ショッピング『Eye Navi』
https://shop.wakasa.jp/cp/eye_navi/

視覚障がい者歩行支援アプリ『Eye Navi』
https://eyenavi.jp/

身体障害者補助犬実働頭数
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000165273.html

 

この記事を書いた人

山本 旭彦

わかさ生活ヘルスキーパー。網膜色素変性症によって視野が狭くなり、暗いところも見づらい症状をもつ。視覚障がいへの理解、気軽にサポートできる環境を広めようと、「あきひこさんの一日」と称した出張授業を小学校などで継続的に実施しています。

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