一般的に賢い人をイメージすると、メガネをかけている人を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。なんと、2018年に「視力の低さに影響を与える遺伝子と認知機能には相関関係が見られる」という研究結果が発表されたのです。
この論文は英「The Guardian」をはじめ、「ニューズウィーク日本版」「カラパイア」など国内外の複数のメディアで取り上げられ話題になりました。果たして、メガネと認知機能に関連性があるという説は本当なのでしょうか? 実際の論文内容を検証してみたいと思います。
30万人のデータ分析の結果、認知機能と視力に関連する遺伝子の相関を発見
スコットランドのエジンバラ大学の研究チームは、認知症や脳卒中に罹患していない16歳から102歳まで30万人以上のヨーロッパ系の人々のデータを集めて、人々の認知と遺伝子のデータを分析(※1)しました。
研究チームが参加者たちを対象に、一般認知機能を出すための思考テストと遺伝子分析を実施した結果、一般的な認知機能に関連する148の「遺伝子座」と709の遺伝子を見つけたと報告しています。「遺伝子座」とは、染色体やゲノムなどの遺伝子情報における遺伝子の位置のことを指しています。
認知機能と遺伝子的に相関が見られたのは、視力に関連する近視や遠視、メガネの着用についてです。そのほかにも、高血圧や心疾患にまで関連性が報告されたのです。
認知機能が高い人はメガネをかけている確率が高い。その理由は?
この研究で発表されたことは、「認知機能と視力には負の相関があった」ということです。
認知機能がより高い人は、そうでない人に比べメガネ、もしくはコンタクトレンズが必要な遺伝子をもつ確率が約30%高いと判明しました。
細かく結果を見ていくと、メガネをかけることに関しては近視である遺伝表現型とは正の相関がみられた一方、遠視の場合は負の相関がみられました。
しかしながら、この論文では、「なぜ相関関係があるのか」その理由までは断定されていませんでした。
「メガネをかけている人は遺伝子的に賢い」とは言い切れない
メディアに取り上げられ、「メガネをかけている人は遺伝子的に賢いのかも」と話題になった研究でしたが、しっかりと論文を検証すると、相関があることが分かっているだけで、なぜ相関関係があるのかまでは明確になっていないということが分かりました。
しかし、これだけ膨大な被験者数で解析を行っているため、たくさんの相関遺伝子が見つかったことは大変価値のあることではないでしょうか? この研究によって新たに分かった事実が、次の研究の足掛かりになるかもしれませんね。
今後、認知機能と視力になぜ相関性があるのかまで明らかになることを期待します。
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