今年も夏がいよいよ到来!
今年は、新型コロナウイルスの心配もあるので、屋内レジャーよりも屋外での活動に興味がある人が多いのではないでしょうか?そんな時に心配なのは、紫外線による肌の日焼け!
全身の日焼け止め対策はバッチリというあなた、大事な部分の対策を忘れているかも。それは、「目」です。目の対策を忘れたことによって、肌の日焼けにつながるかもしれません!
そのメカニズムは?どんな対策をすればいいの?そんな疑問にお答えします!
紫外線とは?
紫外線とは、地球に到達する太陽光のうち、波長が短く、エネルギーが高い光のことです。太陽光線には、波長の違いによって紫外線、可視光線および赤外線に分かれています。ヒトの目で見ることができる光は可視光線と呼ばれます。
可視光線は、波長が380~780ナノメートル程度で、波長の違いによって紫から赤までの色を感じることができます[1]。可視光線の中で波長が最も短いものは紫色に、最も長いものは赤色に見えるため、紫色より波長の短いものを「紫外線」、赤色より波長の長いものを「赤外線」と呼びます。
紫外線は可視光線の紫色の光よりも短い波長の光ですが、紫外線の中でも、波長の違いによってさらに3つの種類に分けられます[2]。
波長の長い方から、
- UV-A (315-400 nm)
大気に吸収されずに地表に到達します。太陽光の中に数%含まれます。UV-Aによる日焼けでは肌はゆっくりと黒くなり、シワやたるみを引き起こします。
- UV-B (280-315 nm)
成層圏オゾンにより大部分が吸収され、その残りが地表に到達します。太陽光にしめる割合は0.1%程度です。UV-Bをたくさん浴びると、すぐに肌は炎症を起こし赤くなります。肌でメラニンが作られてシミや色素沈着の原因になります。
- UV-C (100-280 nm)
成層圏及びそれよりも上空のオゾン層で吸収され、地表には到達しません。
これら3種類の紫外線が存在しています。
紫外線は1年中地上に降りそそいでいますが、季節によって量が変わります。紫外線量は7月から8月にかけての真夏に増えると思われがちですが、実は5月ごろから一気に増加します。
グラフ:気象庁「日積算UV-B量の月平均値の数値データ表(2019年つくば)」より作成
紫外線によって肌が日焼けする原理は何でしょうか。UV-Aによって肌が黒くなる日焼けと、UV-Bによって肌が赤くなる日焼けでは原理が異なります。エネルギーの弱いUV-Aが体内に侵入すると、皮膚細胞がダメージを受けないようメラニン色素を増やし、そのメラニン色素の影響で皮膚の褐色化や黒ずみを引き起こします。
エネルギーの強いUV-Bを浴びると、数時間後に皮膚が赤くなって、ヒリヒリとした痛みが現れるだけでなく、熱が出たり、水ぶくれなどができることもあります[3]。メラニン色素は、肌を黒くしてしまう色素ですが、本来は肌を守るための色素なのです。
日焼け対策の盲点。目から紫外線が入るとどうなる?
肌が紫外線を浴びると、赤くなったり黒くなったりといった日焼けの症状が出てしまいますが、肌に日焼け止めさえ塗っていれば、対策は万全なのでしょうか?
実は、そうではないのです。日焼け対策の落とし穴は、目の紫外線対策です。
どうして、肌だけを守っていてもダメなのでしょうか。それを裏付ける研究データがあります。過去の研究では、マウス(実験用ネズミ)の耳だけに紫外線を当てると、マウスは耳だけ日焼け(メラニンが増加)したのですが、マウスの目に紫外線を当てると、全身が日焼け(メラニンが増加)したそうです[4]。
紫外線が目に入ると、目の表面にある角膜がダメージを受けますが、角膜が受けたダメージがストレスとなることで、体が防御反応としてメラニンを作ってしまいます。日焼けをした時に肌が黒くなる原因の物質はメラニンですが、紫外線だけでなくストレスを受けることでも作られてしまうのです。
実際にストレスとメラニンの量の関連性を調べた研究では、抑うつスコア(落ち込んだり沈んだりする気持ち)が高い人ほどメラニンの量が多く、精神的なストレスは肌が黒くなる原因のひとつである可能性が示されています[5]。
日焼け以外にも⁉目を紫外線から守るべきこれだけの理由
紫外線が目に入ることで起こる悪影響は、日焼けだけではありません。紫外線は、目の病気やトラブルの原因にもなるのです。例えば、目の前半分(前眼部)で起こる病気やトラブルでは、角膜に障害が起こる表層角膜炎や翼状片など。
また、光の通り道になっている水晶体のトラブルでは、長期的に紫外線を浴び続けることによる白内障のリスクもあります。目の奥の部分(後眼部)の網膜で起こるトラブルでは、黄斑変性などがあります。白内障や黄斑変性はすぐに症状が出る病気ではないので、注意が必要です。
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日焼けも病気もイヤだ!目の正しい紫外線対策は?
目に紫外線が入ると、全身の日焼けや目のトラブルの原因になりかねません。そのため、正しい紫外線対策をしましょう。
まずは、目に届く紫外線を物理的にカットするために、サングラスや日傘、帽子などを使いましょう。サングラスはUVカット率が高く、顔との隙間のないものを選ぶのがおすすめです。また、サングラスはレンズの色が濃すぎると瞳孔が開き、かえって目の奥にたくさんの光が入ってくる原因となりますので、レンズの色は薄めのものを選びましょう。
つばの広い帽子や日傘もサングラスと併用し、上からの紫外線を防ぎましょう。帽子をかぶるだけで、目に入ってくる紫外線の量は約20%カットできます[6]。紫外線は上空から降り注ぐだけでなく、地面に当たって下から照り返してくることもあるため、日傘の内側は黒や紺色など濃い色のものが良いでしょう。
さいごに
全身の日焼け対策はばっちりだと思っていたあなた!意外なところに落とし穴がありましたね。今年は、万全の紫外線対策で夏を乗り切りましょう!
※ 本サイトにおける各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。個別の症状について診断、治療を求める場合は、医師より適切な診断と治療を受けてください。
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【参考】
[1]大辞林 第三版 三省堂
[2]気象庁
https://www.data.jma.go.jp/gmd/env/uvhp/3-40uv.html
[3]武田健康サイト
https://takeda-kenko.jp/navi/navi.php?key=hiyake_zenshin
[4]参天製薬ニュースリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000010872.html
[5]伊藤康宏 他、学生の皮膚メラニン度数と抑うつの関係、Jpn J Psychosom Med59:52-59, 2019.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/59/1/59_52/_pdf
[6]紫外線環境保健マニュアル 環境省
https://www.env.go.jp/chemi/uv/uv_pdf/01.pdf