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目の症状や病気と予防・治療法

5月こそ紫外線から目を守ってほしい!その理由とは!?

まぶしそうにする女性

夏になると紫外線から肌を守るため、日焼け止めを塗ったり日傘をさしたりする方も多いと思います。

ところが、5月の紫外線が思った以上に多くなっていることをご存じでしょうか。気象庁がまとめた、日本の紫外線量を月別平均値で見たところ、2019年の東京では8月の次に5月が多くなっており、6月・7月の紫外線量を上回っているのです。(※1)

日焼けや皮膚ガンなど紫外線が肌に与える影響についてはよく知られていると思いますが、紫外線が私たちの目にどんな影響を与えるのかについては、あまり知られていません。

世界保健機関(WHO)が示す、紫外線対策の指標となる「UVインデックス」も、肌の日焼けに対するものであり、目に対する指標はまだないようです。(※2)
しかし、紫外線を継続的に浴びると、皮膚が赤くなる(紅斑)などの変化が起き、これが長年にわたって繰り返されると、皮膚ガンや白内障の発症率の増加など健康に悪影響を与えることが知られているのも事実です。

目は肌と違い、「むき出しの臓器」といわれることもあるくらいなので、肌以上に紫外線が直接あたるリスクを考えるべきではないでしょうか。そこで紫外線について、目に与える影響や、そこから繋がる病気のリスクはどのようなものがあるか紹介したいと思います。

目が紫外線を浴びるとどうなるの?

紫外線は波長によって種類が分けられており、波長が短いもの(UV-C)はオゾン層と大気中の酸素分子で吸収されるためほとんど地表に届きません。私たちの目や肌に影響を与えるのは波長が長い紫外線(UV-A、UV-B)です。では、目が紫外線を浴びるとどうなるのでしょうか?

まず、紫外線は私たちの目の表面にある角膜にあたります。角膜に紫外線があたると、表面の細胞が傷つき、痛みや異物感が生じるなど自覚症状が現れることがあります。

また、紫外線の中には角膜を通過して水晶体に届くものもあります。紫外線は老化と関連する「活性酸素」を体内に発生させる性質を持ち、この活性酸素が水晶体を構成するタンパク質を酸化させると考えられています。このように、水晶体のたんぱく質が白く濁る原因の一つに紫外線があるのです。

そして、角膜や水晶体でガードしきれなかった1〜2%の紫外線は、水晶体の奥にある網膜まで届き、ダメージを与えることもあるのです。

さらに、目が紫外線UV-Bを浴びると肌の日焼けの原因に繋がるということが国内のマウスを用いた研究結果として報告されています。紫外線によって角膜が炎症を起こすと、脳がこれを察知して、全身のメラニン産生細胞を刺激するホルモンが分泌されるというのです。「目が紫外線を浴びることで肌が日焼けをする」なんて、ちょっとびっくりしますね。

紫外線が引き起こす代表的な目の病気

私たちが意識していないところで、意外と目は紫外線の影響を受けているようですね。紫外線の強さや浴びている時間によっては、目が深刻なダメージを受け病気になってしまう可能性もあるので注意が必要です。

紫外線が原因と考えられる目の病気にはどのようなものがあるのでしょうか。代表的な3つの目の病気を見ていきましょう。

白内障(はくないしょう)

 「白内障」は目のレンズの役割を担う水晶体が濁り、見え方の質が低下する病気です。進行すると失明する可能性もあります。

加齢や糖尿病など様々な危険因子がありますが、紫外線も原因の一つといわれています。特に、日本人に最も多く見られる「皮質白内障」は紫外線と関係があるようです。

 翼状片(よくじょうへん)

 「翼状片」の原因はまだ完全には解明されていませんが、紫外線の影響が示唆されています。

白目の部分の薄い膜が異常繁殖し、黒目の部分に侵食してくる病気です。充血したり、目の異物感を感じたりするなどの自覚症状があります。環境庁によると、農業や漁業従事者など戸外での活動時間が長い人に多発しているため、紫外線が原因の一つと考えられています。

 紫外線角膜炎(しがいせんかくまくえん)

 強い紫外線を浴びたことで角膜の表面に細かい傷がつく病気です。

スキー場やスケート場など紫外線の反射が強い場所で起こりやすく「雪目(ゆきめ)」とも呼ばれています。紫外線を浴びている時には自覚症状はありませんが、数時間後に痛みや違和感が生じるのが特徴です。スキー場やスケート場から帰った後に、目がゴロゴロしたり涙が止まらなくなったりしたら、「紫外線角膜炎」の可能性が考えられます。

 デリケートな目を紫外線から守ろう

むき出しの臓器」である目はとてもデリケート。

だからこそ、普段から意識して肌と同じくらい、もしくはそれ以上に目の紫外線対策を行うことが必要ではないでしょうか。

目の紫外線対策としては、日傘や帽子を使用するのも良いですが、より目の近くで防御できる UVカット機能のサングラスやコンタクトレンズの使用がおすすめです。

また、正午ごろの日差しは頭上から感じると思いますが、車を運転していて夕日のまぶしさに困ったことはありませんか?日光は1日の中でも高度を変えて差していますので、横から差し込む紫外線にも注意が必要です。

UV カットグラスを使用した眼鏡やサングラスを着用される場合も、なるべく顔との隙間が少なくなるようにフィットしたものや、つるが太いものを選び、隙間から入ってくる紫外線も防ぐようにしましょう。

コンタクトレンズを使用されている方も、UVカット機能のレンズを選びましょう。最近では 光に合わせてレンズの色が変わり、目に入る光の量を自動的に調節することで、まぶしさなど光のストレスに負けない快適な見え方が期待できるものも開発されています。(※3)

他にも、体の中からの紫外線対策で注目されている栄養素として「ルテイン」があります。ルテインはカロテノイドの一種で、動植物に広く存在する黄色の天然色素です。目の老化を引き起こす活性酸素を抑えたり、有害な光によるダメージを抑えたりすることで、目を守る働きをしていることが知られています。

最近では、健康番組で紹介されたり、眼科など医師から勧められたりとご存知の方も多いのではないでしょうか。

紫外線から目を守る方法はいくつかありますが、日差しの強い時期だけでなく、毎日の習慣にすることが大事。ぜひ日頃から目の紫外線対策に意識を向けてみましょう。

公開日2019/6/28 更新日2020/5/4

※ 本サイトにおける各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。個別の症状について診断、治療を求める場合は、医師より適切な診断と治療を受けてください。

<参考>
※1.気象庁
https://www.data.jma.go.jp/gmd/env/uvhp/link_uvindex_month54.html
※2.紅斑紫外線量について
https://www.data.jma.go.jp/gmd/env/uvhp/uv_a01.html
※3.調光機能付きコンタクトレンズhttps://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000039.000019830.html

【画像】myboys.me /Shutterstock

 

 

 

この記事を書いた人

大江 絵美

薬学博士

岐阜薬科大学薬効解析学研究室に4年間出向し、目のことやビルベリーの健康効果の研究を行ってきました。目のこと、サプリメントの素材についての研究や調査をもとにした情報発信を行っています。

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