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見えない・見えづらい方へのお役立ち情報

聴覚・触覚を使わない第三の感覚で空間情報を得られる『人工視覚通電知覚技術』とは

未来を予想する女性の目のイメージ画像

視覚障がい者をサポートしてくれる機器やアプリの開発が多く進められていますが、どれも「音を聞く」「振動を感じる」ことで「視覚」を補うものばかりです。今回、まったく新しい感覚で空間情報を得られるという技術が発表されたのでどのようなものなのかご紹介できればと思いました。

今までにない技術を実装した眼鏡型機器の誕生

群馬パース大学大学院 保健科学研究科の木村朗教授が技術を試されている画像

群馬パース大学大学院 保健科学研究科の木村朗教授が眼鏡型カメラとAI(コンピュータビジョン)、モールス通電信号を統合した「人工視覚通電知覚技術」の実装に成功しました。この技術を使えば、全盲の視覚障がい者でも聴覚や触覚を使わず対面する人の位置を自分で特定できるという画期的な開発です。
木村教授の知人である沖縄県立沖縄盲学校のスタッフが参加。視覚障害教育と職業訓練の専門家の視点からモールス信号パターンの最適化、職場での実用性の検証、学習カリキュラムの開発などのフィードバックに協力されての開発です。

 

人工視覚通電知覚技術とは

眼鏡型カメラが視線方向にいる人を認識し、AIがリアルタイムでその人の位置・距離を解析。その情報をモールス符号に変換し、微弱な電流を皮膚に伝達。伝達された情報を脳が視覚的情報として知覚するというものです。

 

技術の実装が成功したことによる社会的意義

木村教授は、この技術の実装が成功したことに2つの大きな社会的意義があると考えています。

1.視覚障がい者の雇用促進と生産性向上

視覚障がい者を雇用する際の課題の一つに「毎日安全に通勤できるのか?」という点があります。この眼鏡があれば混雑した公共交通機関でも一人で利用できるようになるので、介助者なしでの通勤の安全性が向上します。
また、仕事では、パソコン操作をしながら周囲の状況を把握しやすくなるので、会議の内容の理解が深まる・同僚とのコミュニケーションがとりやすくなるなど生産性が向上するのではと考えられています。

2.高齢化社会による視力低下者の増加

日本には165万人以上の視覚障がい者がいるといわれていますが、そのうちの70%以上がすでに60歳を超えています。
また、健常者でも、40歳以上の人の20人に1人が緑内障(主に眼圧が高くなることで見える範囲が狭くなっていく)、60歳以上の人の70%以上が白内障(視界がかすむ・太陽の光が以前より眩しく感じる・視力低下などの症状がある)といった目の病気になる人の数は高齢化が進むことでさらに増えることになります。
人工視覚通電知覚技術は視覚障がい者だけでなく高齢化で増える見えづらさを感じている方にも有効的だと期待されています。

木村教授のメッセージ

視覚障害は誰にでも起こりうることです。誰もが避けられない老化により、いずれ眼鏡では視力を保てなくなる日が来ます。そのとき、通勤できなくなって仕事を辞めるのか?人工視覚通電知覚技術は、単なる代替技術ではなく、新しい知覚能力の獲得です。聴覚・触覚を失うことなく、第三の感覚で空間情報を得られる。これにより、視覚障がい者が職場で健常者と同等のパフォーマンスを発揮できます。そして、この技術は高価な医療インフラを必要としません。先進国でなくても、途上国でも導入可能です。APHA(米国衛生学会・世界最大の公衆衛生フォーラム)で、この技術と誰もが現実的に使用できることを保証する政策を提言します。誰もが年を重ねても、視力を喪失しても、安全な行動が担保され、自分らしく生きられる社会を実現したい。

 

終わりに

今後は2026年中に製品化に向けたプロトタイプを開発し、2027年以降、WHO・ILOとも連携し、国内・国際での普及を目指し展開されます。
しかも移動支援だけでなく、あらゆる日常生活でのQOL向上に加え、高齢者の転倒防止やロービジョンの方たちへの保完技術としても展開を予定されています。
汎用性がとても高く、導入も簡単ということで商品化されるのがとても楽しみです。

参考URL

群馬パース大学大学院 保健科学研究科 身体活動学研究室

上毛新聞

この記事を書いた人

山本 旭彦

わかさ生活ヘルスキーパー。網膜色素変性症によって視野が狭くなり、暗いところも見づらい症状をもつ。視覚障がいへの理解、気軽にサポートできる環境を広めようと、「あきひこさんの一日」と称した出張授業を小学校などで継続的に実施しています。

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