
最近、視界が狭くなったと感じたり、鏡を見るたびに目が小さくなったような気がしませんか?
朝起きても、なんだか目が重くてパッチリと開けづらい。頑張って目を開けても、おでこにシワが寄ってしまう…。そんな症状に心当たりがあるなら、それは単なる「疲れ」や「老化」ではないかもしれません。あなたのその不快な症状は、もしかすると目の上まぶたが垂れ下がってしまう病気、「眼瞼下垂(がんけんかすい)」が原因かもしれません。
放置すると日常生活にも影響を及ぼしかねない眼瞼下垂について、その症状や原因、そして適切な対処法を一緒に見ていきましょう。
目次
眼瞼下垂とは?まぶたが垂れ下がるメカニズム

眼瞼下垂とは、何らかの原因によって上まぶたが垂れ下がってしまう状態です。まぶたが十分に上がらなくなるため、視界が狭く感じたり、見た目に影響が出たりします。まぶたを上げる役割を担っているのは、主に「上眼瞼挙筋」という筋肉と、「ミュラー筋」という筋肉です。眼瞼下垂は、この筋肉や腱の働きが弱まったり、神経の機能が低下したりすることで起こります。
眼瞼下垂は、大きく分けて「先天性」と「後天性」に分けられます。
先天性眼瞼下垂:生まれつきのまぶたの筋肉の弱さ
生まれつきまぶたを上げる筋肉(上眼瞼挙筋)の働きが弱いことが原因で、生まれた直後から症状が見られます。下を向かないと物が見えにくいため、無意識のうちに顎を上げて上目遣いになったり、おでこにシワを寄せて眉毛を持ち上げたりして物を見る癖がつくことがあります。程度が強いと視力の発達に影響することもあるため、眼科で視機能のチェックを受け、適切な時期に手術を検討することが大切です。
後天性眼瞼下垂:加齢やコンタクトが原因に?
大人になってから発症するもので、最も多いタイプが後天性眼瞼下垂です。年齢を重ねるにつれて、まぶたを上げる筋肉の「腱(スジ)」が伸びて緩んでしまうことで起こります。家の窓のブラインドのヒモが緩んでしまうようなイメージです。特にハードコンタクトレンズを長期間使っている方に増えています。レンズを着脱する際の刺激などが繰り返されることで、加齢性と同様に腱が伸びてしまうと考えられています。糖尿病や脳動脈瘤などによる神経の麻痺、外傷、重症筋無力症など全身の病気が原因で起こることもあります。この場合は、他の体の症状を伴うことが多いので注意が必要です。
眼瞼下垂の治し方と放置するリスク

眼瞼下垂の基本的な治療法は手術です。加齢やコンタクトレンズが原因の、比較的軽度な眼瞼下垂であれば、手術によって改善が見込めることが多くなります。しかし、神経麻痺など病気が原因の場合は、原因疾患の治療を優先したり、手術の効果に限界があったりすることもあります。「目が開けづらい」状態を放置すると、無理に目を開けようとすることで頭痛や肩こりを引き起こすこともあります。あなたの症状が「単なる疲れ」なのか、「眼瞼下垂」なのかを判断し、適切な対処法を見つけるためにも、一度眼科医に相談してみることをおすすめします。
「眼瞼下垂」と診断されても、手術に踏み切れない人が多数
医療法人社団鉄結会(形成外科クリニック「アイシークリニック」運営)が、30歳以上の全国の男女1,500名を対象に行った実態調査から、眼瞼下垂に関する興味深い実態が明らかになりました。調査の結果、「眼瞼下垂と診断されたことがある」と答えた人のうち、実際に手術を受けたことがある(「はい」と回答)のは25%強にとどまりました。つまり、診断はされても手術は受けていない人の方が圧倒的に多いことが判明しました。手術を受けなかった人を年代別に見ると、全体の8割弱が60代でした。これは、加齢による眼瞼下垂(後天性)の発症が多いことを示唆しています。

一方で、30〜40代の若年層での発症も確認されました。これは、生まれつきの先天性の可能性に加え、コンタクトレンズの使用やまぶたを擦る習慣(アトピー、逆さまつげ、花粉症など)といった後天的な要因が関わっていると考えられます。
眼瞼下垂と診断されながらも手術を受けなかった38名に対し、その理由を尋ねたところ、手術を断念する最大の理由は「金銭的な不安」が最も多い回答となりました。

眼瞼下垂は保険診療が適用されるケースもあります。金銭的な不安を感じている場合は、一度専門医に相談してみると良いかもしれません。
【受診の目安チェックリスト】こんな症状が出たら専門医へ

「目が開けづらい」という症状は、日常生活に大きな影響を及ぼします。下記のようなサインが複数見られたら、一度専門の医師に相談することをおすすめします。
| ☐視界が狭いと感じる | 特に上方を見上げる際などに、まぶたが邪魔をして物が見えにくい。 |
| ☐目が疲れやすい | 目を無理に開けようとするため、目がすぐに疲れてしまう。 |
| ☐額にシワが寄る | まぶたを上げるために、無意識のうちに額の筋肉を使って眉毛を持ち上げている。 |
| ☐肩こりや頭痛がひどい | 目の筋肉だけでなく、額や首の筋肉にも負担がかかることで、慢性的な肩こりや頭痛を引き起こしている。 |
症状によって、相談すべき専門科が変わります。目の機能の改善をしたい場合、まずは眼科を受診しましょう。眼瞼下垂の原因や視機能への影響を正確に診断してくれます。症状が進んでいて、二重のラインを整えるなど見た目の改善も希望する場合は、形成外科や美容外科に相談することも選択肢の一つです。
額にシワが寄る、目が疲れやすいなどのサインに心当たりがある方は、まずは眼科へ相談しましょう。眼瞼下垂は保険適用となるケースもあります。ご自身の症状の原因を特定し、適切な治療法を知ることが、快適な視界と健康な日常を取り戻すための第一歩です。
参考文献
PR TIMES
眼瞼下垂の病名の認知度は17.7%とやや低水準、さらに眼瞼下垂保険適用手術の認知度が低いことが判明
公益社団法人 日本眼科学会
眼瞼下垂