前回「梅雨時は目が疲れやすいって本当?冊子わかさ生活2024年6月号より」の記事にて梅雨時期の目の疲れについてお伝えいたしました。
その中で気圧や気温、湿度の変動での自律神経の乱れによる目の疲れをお伝えしましたが、自律神経の乱れは「緑内障」にも悪影響があるといわれています。
今回は「緑内障」についてのおさらいや最新治療にも触れていきたいと思います。
緑内障とは
緑内障は日本の中途失明原因の第1位にもかかわらず、世の中にあまり知られていません。
緑内障は、目から入ってきた情報を脳に伝達する役割をもつ視神経が障害されることによって、視野(見える範囲)の一部が欠けていき、症状が進むと失明に至ってしまう怖い病気です。一般的な緑内障は、眼圧が高くなることによって目の神経が障害されていきます。
40歳以上の日本人の20人に1人が緑内障であると言われており、原因の一つとして遺伝のものがあげられます。緑内障を持つ方のお子様は、一般の方に比べて約9倍緑内障になりやすいといわれています。
緑内障は、眼圧が上がるタイプの緑内障か、上がらないタイプの緑内障かによって変わります。眼圧が上がるタイプの緑内障は眼房水の流れが悪くなることでおこり、眼圧が上がらないタイプの緑内障は目の血流の悪さや、酸化ストレスによって視神経がダメージを受けておこります。
緑内障と眼圧
目の知覚神経は前眼部にしかありません。そのため目の中にゴミが入ると痛みを感じますが、目の奥で異常があっても痛みはなく、自覚症状がないのです。緑内障と関連が深い眼圧が高くても、痛みは生じないので気がつきにくいという特徴があります。
そもそも眼圧とは何でしょうか。目の中で循環している眼房水は、毛様体で血液から栄養分のある透明な水がこしとられたもので、これは水晶体や角膜に栄養を届けています。
眼圧とは、目を内側から外に向かって押す力で、つまり目の中の圧力のことです。眼房水が目の中で溜まると、眼圧が高くなります。
眼圧を測るには、眼科で診てもらうことが必要です。眼圧の平均は10~21mmHgで、日本人の平均は14 mmHg程度と言われています。眼圧が高いほど緑内障のリスクが高まります。
眼圧が高い状態でも自覚症状がなく、視野が欠けるようになってから病院に行き、緑内障が発覚するケースもあります。
緑内障とストレスや食生活の関係
緑内障は、ストレスや食生活と相関関係があると考えています。ポリフェノールやフラボノイドなど抗酸化力のある食材を意識して摂ることで緑内障になりにくい、または進行が穏やかになったという論文がいくつかあります。抗酸化力のある成分は、ブルーベリーに含まれる「アントシアニン」や、緑黄色野菜に含まれるカロテノイド「ルテイン」などが代表的なものです。
緑内障の患者様からどのようなことに気を付けたら良いのかと相談されたときは、緑黄色野菜を意識して摂ることや、ストレス緩和のため適度な運動をしていただくようアドバイスしています。
緑内障と血流の関係
最近の研究で、血流が良くない方は緑内障の可能性が高いということが分かってきました。特に手先・足先の細かい血管、毛細血管は体や目の健康状態を顕著に表します。
例えば、顔色が白っぽい、冷え性がある、片頭痛がおこりやすい方などは、低血圧であったり、血流が悪い可能性があります。また近視の方は、目の血流が悪くなっている可能性があります。
しかし、冷え性や近視を持っている方の中にも血流が良い方もおられるので、気になる方は眼科で測定いただくのが良いと思います。
眼科へ通院される前の段階として、毛細血管観察装置「血管美人」という機器があり、解像度の高い顕微鏡で手の薬指の爪の付け根にある毛細血管を観察することができます。
毛細血管は全身の血流や健康状態を表しており、生活習慣や食生活の偏りや、ストレスなどさまざまなことが分かります。最近では目の健康状態と血流の関係をテーマにした研究も進んでいます。
緑内障の治療
世界では眼圧が高いタイプの緑内障が多いのですが、日本人の場合は7割が正常眼圧緑内障だと言われています。眼圧だけでは判断できないため眼底検査が必要になります。
人間ドックで眼底検査をし、視神経乳頭陥凹が見つかった場合、緑内障の可能性が極めて高いです。放っておかず、必ず眼科へ行き、視野検査などを受けましょう。
治療1 目薬
緑内障は原因がはっきりと分からず、進行を止める治療法がないというのが現状です。点眼薬を使うと緑内障の進行が穏やかになるため、最善の治療法であるといえます。
現在、眼圧を下げる点眼薬が20種類ほど出ていますが、自分に合うものをお医者様と相談してください。
治療2 手術
点眼剤などの治療でも眼圧が下がらず、緑内障の視野障害の進行が認められるときに手術療法を考える必要があります。代表的な手術を紹介いたします。
線維柱帯切開術(トラベクロトミー)
線維柱帯切開術は、目詰まりしている線維柱帯を切り開き、本来の流出路であるシュレム管に房水を流す手術です。
これにより房水の流出量が増加して眼圧が下降することを期待する手術です。
線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)
線維柱帯切除術は、線維柱帯を一部分、切除し、房水の出口を別に作る手術です。こちらも眼圧を低げる効果の非常に高い方法です
チューブシャント手術
チューブシャント手術は、前述の濾過(ろか)手術を行っても眼圧を下げることが難しい、いわゆる“難治性緑内障“の眼に対して行います。
2022年から国内で始まった最新の治療に「マイクロシャント手術」と「いうものがあります。
マイクロシャントとは長さ8.5mm、直径0.35mmの極細なチューブ状の医療機器をさし、これを眼球の外側から房水の流れる通りに差し込む手術です。マイクロシャントによって房水が外側に排出され眼圧が下がります。チューブの直径が極細のため、房水が排出され過ぎることはなく、さらに、点眼薬を使わなくてもよくなる方もおられ副作用からも解放されたという声もあります。
最後に
緑内障は房水の流れなどをコントロールし、眼圧を下げることで、失明のリスクを下げることはできますが、1度失った視野を戻すことはできません。
医療の進歩は少しづつ見られますが、何より大切なのは早期発見、早期治療。
そして治療の継続です。
いつまでも「見える」を大切に日々過ごしていきましょう。