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目にまつわるお役立ちニュース

6月10日は「こどもの目の日」。知っておきたい子どもがかかりがちな目の病気

「こどもの目の日」の由来


近年、健康への意識が高まる中、子どもの視機能の発達や近視予防への取り組みが重視されています。2022年には、3歳児健康診査での屈折検査が導入され、また、2023年4月の「こども家庭庁」創設を機に、乳幼児から青少年期の眼の健康へのサポート充実が期待されています。

赤ちゃんは生まれたばかりの頃は視力がほとんどありません。しかし、成長に伴い、視力は発達していきます。6歳ごろになると、通常の視力1.0に達することが期待されています。一方で、視力1.0に届かない「弱視」の早期発見と治療、そして低年齢での近視発症予防の観点から、6歳の時点での視力1.0獲得は大きな節目となります。

そこで、「6歳で視力1.0を育もう」という願いを込めて、2023年に日本眼科医会が6月10日を「こどもの目の日」と定め、この記念日を通じて、子どもの目の発達への関心を高め、国民への広く周知を目指すさまざまな取り組みがスタートしています。

子どもがかかりがちな目の病気


子どもの目は成長過程にあり、未発達な部分もあるため、さまざまな目の病気のリスクが高くなります。また、子どもは目の健康状態を正確に伝えにくいこともあり、病気が見逃されがちです。保護者は子どもの目の変化に注意を払い、早期発見・早期治療に努める必要があります。子どもの目の機能は 3 歳頃までに急速に発達し,6歳~8歳ぐらいまでにほぼ完成します。

公益社団法人日本眼科医会が行った2022年度「3歳児眼科健康診査の現状に関するアンケート調査」によると、3歳児健診の精密検査で発見された眼疾患の実人数は上位から次のような結果となっています。

①屈折異常(37.7%)

屈折異常とは、遠視、近視、乱視のことを指します。遠視は物が近くで見えにくい状態、近視は遠くが見えにくい状態、乱視は像がぼやけて見える状態です。

②弱視計/屈折弱視(19.0%)

屈折異常が原因で起こる弱視です。遠視や乱視による像のぼけや、近視による調節力の低下などにより、正常な視力が得られない状態をいいます。

③弱視計/不同視弱視(14.7%)

両眼の視力や屈折状態のアンバランスが原因で起こる弱視です。たとえば片眼が遠視、もう片眼が近視だと、一方の眼からの像が常にぼやけてしまい、その眼の視力が低下します。

④弱視計/斜視弱視(4.0%)

斜視(内斜視、外斜視など)の状態が続くと、両眼の視野がずれ、二重視を防ぐために、一方の眼からの像を無視するようになり、その眼の視力が低下する弱視です。

⑤斜視・斜位[弱視を除く](7.5%)

斜視とは眼球が適切な位置からずれている状態で、視線が適切に合わない状態をいいます。斜位とは先天的に眼球の位置がずれている状態です。弱視はなくても、両眼視機能や立体視が損なわれる可能性があります。

いずれの場合も、早期発見・早期治療が大切で、放置すると永久的な視力障害を残す恐れがあります。

 

9歳からは『近視』に注意


近年、子どもの近視が世界的な問題となっています。特に近視の割合が高いのはアジアの先進国で、日本でも40年前と比べると著しく増加傾向にあります。近視の原因には遺伝と環境の双方が関与すると考えられていますが、最近の子どもの近視増加の要因は主に環境にあると指摘されています。デジタル機器の長時間使用、読書、運動不足など、さまざまな生活環境の変化が大きく影響していると見られています。

子どもの視力低下は、将来的な生活の質にも関わる深刻な課題です。近視への対策は待ったなしの状況で、子どもを取り巻く環境改善が急務とされています。保護者をはじめ、社会全体で子どもの眼の健康維持に取り組む必要があります。近視の多くは小学3~4年生頃に発症しますが、最近は6歳未満での発症も珍しくありません。年齢が上がるにつれ近視が進行する傾向があるため、予防は早めに取り組むことが大切です。一時的な近視状態は治療で改善する場合もありますが、近視による視力低下は主に眼軸長の伸びが原因です。一度伸びた眼軸長は元に戻らないため、近視は予防が何より重要なのです。検診で指摘があれば早めに眼科を受診しましょう。

オーストラリア・ブライアン・ホールデン・ビジョン研究所の試算では、2050年には近視が世界人口の約半分にまで膨らむと予測されています。近視発症リスクが高まっている子どもたちの視力を守るためには、適切な対策が重要です。

一見、スマホやタブレットなどのデジタルデバイスのみが大きな影響を及ぼしていると思われがちですが、実は絵本などの読書も目と見ているものとの距離、さらに見ている時間の長さが大きく関わってきています。読書やタブレット使用など、近くを見る作業を行う際は、対象から30cm以上離れ、30分ごとに20秒以上目を休めることが推奨されています。さらに、背筋を伸ばし良い姿勢を保ち、部屋を明るく保つ、機器の輝度を適切に調節するなどの配慮も欠かせません。また、複数の研究から、「1日2時間以上の屋外活動が近視進行を抑制する」と報告されています。生活環境を見直し、こうした対策を実践することで、子どもの眼の健康を守り、近視発症や進行のリスクを低減できます。

子どもの目を守るためには


中国では、高校生の近視率は約8割に達し、日本の7割を大きく上回っています。中国政府は2018年、子どもの近視対策として大規模なプロジェクトとして、2030年までに、高校生の近視率を現在より約10%低い70%以下に抑えることを目標に掲げています。この取り組みの一環として、全ての学校に対し「1日2時間以上の屋外活動時間を設けること」が義務付けられています。
さらに陝西省(せんせいしょう)の一部の小学校では、視力専用の教室を設置し、休み時間中に視力低下の子どもに視力保持訓練を行わせています。

このように、中国では幼少期から継続的に近視対策に取り組むことで、子どもの近視進行を抑制しようと努めています。適切な生活習慣の定着と、視力低下の早期発見・対処が重要視されているのです。世界的な課題である子どもの近視問題に対し、中国は強力な施策を展開しており、その成果が注目されています。

参考資料
「強い近視から、失明の危機に直面した人も」世界で急増する近視 日本と中国の対策最前線【報道特集】

この記事を書いた人

山本 エミ

Webライター、編集者。学生時代は両目視力2.0をもちながら、現在は左右の目の視力差が大きい「不同視(ガチャ目)」に悩む日々。現代病である疲れ目など、目の健康に役立つ記事を中心に執筆している。

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