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目にまつわるお役立ちニュース

自動車の運転中、なんだか見えづらいなと感じたときに相談できる「運転外来」とは

運転する高齢者男性

自動車事故は目の病気や認知症などさまざまな原因で起こっています。今回は、事故の中でも目の病気により見えづらいことで起こってしまう事故を減らしたいと開設された「運転外来」について、そして事故につながる可能性がある目の病気のことを紹介します。

「運転外来」とは

目の病気で視野が狭くなっていないか検査をしに運転外来を受診する高齢者引用:毎日新聞

「運転外来」とは、目の病気で視野(見える範囲)が狭くなっているかを検査し、視野が狭くなっている場合、自動車を運転するときにどのように注意すれば、安全に運転できるのかを専用のドライビングシミュレーター(以下DSと表記)を使って検証し、アドバイスや指導をしてくれるところです。

 

 眼科医療機関では日本初

「運転外来」を開設したのは西葛西・井上眼科病院 副院長でもある医学博士の國松志保さんです。元々緑内障が専門だった國松博士は病院に来院した患者さんから「自動車事故を起こしてしまった」という話を聞き、詳しく聞いたところ緑内障により視野が狭くなっているために起きた事故ではないかと考えました。そこから見え方と交通事故の関係を調べる活動を始められました。
そして、國松博士の活動に共感した自動車大手メーカー「HONDA」が自社で持っていたDSのプログラムを運転中の事故と視野の関係を調べられるよう変更し提供されています。
そのDSを使って検証したところ、視野の上の方が狭くなっている人は信号が見えないことによる事故を起こし、左下の視野が狭くなっている人は左から突然歩行者や自転車が出てきたように感じ、事故につながったなどの検証結果が得られました。
これは、視野が狭くなったときの見え方として視界の一部が黒く見えるわけではなく、欠損して見えない部分にも景色があるように見えること(脳の補完機能)が関係しています。その後國松博士はもっと多くの方が自動車を運転するときに見え方で困っているのではないかと考え、2019年に眼科医療機関では日本初となる「運転外来」を開設されました。

視野が狭くなる目の病気

視野が狭くなる病気、緑内障などの見え方の様子、周辺部が黒く見えていない景色

「運転外来」には緑内障や網膜色素変性症の方が相談に来られることが多く、2つの症状とも進行性の目の病気です。

緑内障は、目から入ってきた情報を脳に伝達する役割をもつ視神経が障害されることによって、視野の一部が狭くなっていき、症状が進むと失明に至ってしまう病気です
40歳以上の日本人の20人に1人が緑内障であると言われており、日本における失明原因の第1位です。
しかし、早期発見・早期治療により進行を遅くすることができ、日常生活に影響なく過ごすことができる方も多いといわれています。

網膜色素変性症は、目の奥の網膜に存在している光を感じる細胞(視細胞)に異常が生じる遺伝性、進行性の病気です。視力低下や暗い場所で見えづらくなる夜盲症、視野が狭くなるというのが主な症状です。
日本では4,000から8,000人に1人発症するといわれており、治療法はまだ確立されておらず日々研究が行われています。

どこに行けば見てもらえるの

現在、全国に3ヵ所の「運転外来」があります。

西葛西・井上眼科病院

東京都江戸川区西葛西3-12-14
Tel.03-5605-2100
https://www.inouye-eye.or.jp/nk-hospital/
※運転外来は完全予約制です

神戸市立神戸アイセンター病院

神戸市中央区港島南町二丁目1番地の8
Tel.078-381-9876
https://kobe.eye.center.kcho.jp/outpatient/
※外来案内に従ってご予約ください

新潟大医歯学総合病院

新潟県新潟市中央区旭町通一番町754番地
Tel.025-227-2615
https://www.nuh.niigata-u.ac.jp/departments/medicine22
※外来案内に従ってご予約ください

最後に

視野がかなり狭くなった重度の緑内障の方は、視野が正常な方と比べておよそ3倍の確率で交通事故を起こしてしまうという調査結果もあります。
自動車はとても便利な交通手段で免許の更新ができれば乗り続けたいと思っている方も多いと思いますが、もし見え方に不安を感じた場合はまず近くの眼科で相談をしていただくことからはじめましょう。

参考URL
西葛西・井上眼科病院
https://www.inouye-eye.or.jp/nk-hospital/news/info_20200401/

この記事を書いた人

山本 旭彦

わかさ生活ヘルスキーパー。網膜色素変性症によって視野が狭くなり、暗いところも見づらい症状をもつ。視覚障がいへの理解、気軽にサポートできる環境を広めようと、「あきひこさんの一日」と称した出張授業を小学校などで継続的に実施しています。

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