目と脳の関係は深く、「目は脳の一部」とまでいわれています。
今まで寝ている時しか起こらないと考えられていた脳の老廃物(アミロイドβ)の排出が、視覚の刺激により起きている間にもできるという研究データが2023年3月に公開されています。
認知症予防に大きく期待が膨らむ研究の内容をご紹介いたします。
睡眠中に脳の老廃物を流す
「脳は唯一の疲れ知らずの臓器」と以前の書物には書かれていたりしますが、実際には脳はストレスや加齢、生活習慣の乱れなどから疲労しています。疲労があるとアミロイドβという老廃物が脳に溜まり、脳の機能の低下やアルツハイマー病などの認知症にもつながってしまいます。
認知症を予防するには老廃物を溜めないことが重要となり、老廃物を流すための睡眠は脳をリセットする最も重要な時間といわれています。
起きている間にも脳の老廃物を流す
今回行われた、米国のボストン大学(Boston University)での研究は、「一定の視覚刺激から脳が解放されたとき「脳脊髄液」の量が増加して、脳の老廃物を押し流してくれる可能性」が報告されています。
この研究により、起きている状態でも脳の老廃物を意図的に流せる可能性がでてきました。
「脳脊髄液(のうせきずいえき)」とは
引用元:ナゾロジー
今回の研究で取り上げられた「脳脊髄液」とは、脳と脊髄を囲むように存在する透明な液体で、脳に浮力を与えて頭蓋骨内部で浮かせて脳を守る役割をしています。
加齢にに伴う認知機能の低下やアルツハイマー病は脳脊髄液の流れの減少が影響していると報告されていました。すなわち脳脊髄液が増加すると、認知機能を改善できる可能性があるといわれています。
視覚刺激による脳脊髄液の流れの増加
引用元:ナゾロジー
今回、ボストン大学の研究では起きている間に外部からの視覚の刺激を行うことで脳脊髄液の流れを発生させる方法を調査しました。
明滅する白黒の市松模様を用いた視覚の刺激が行われました。
市松模様が使用されたのはこれまでの研究により市松模様が脳活動を活性化し血流を促進することが知られていたからです。
被験者たちがMRIに入り、1時間に渡って目の前のディスプレイで市松模様と何も映っていない状態が16秒ごとに繰り返される様子を眺めるという調査が行われました。
結果、視覚刺激が行われるとまず脳内の血流量が増加し、画面が暗くなると血流量の減少がみられ、代わりに脳脊髄液の流入が増加しました。
脳脊髄液の流入は睡眠時に比べてわずかながらも、意図的に起こせることがわかったのは今回の研究がはじめてのようです。
今回は被験者を対象に行われているため、脳を摘出して老廃物の増減を確認することはできていませんが、起きているときの視覚の刺激が脳脊髄液の流入の増加につながったという結果の確立ができれば、老廃物の蓄積に脳機能の低下やアルツハイマー病などを防げるようになるのではと期待されています。
まとめ
今まで寝ている時しか起こらないと考えられていた脳の老廃物(アミロイドβ)の排出が、視覚の刺激で起きている間にもできるという研究は、非常に期待が膨らむものです。
限定された模様での報告でしたが、VRなどで楽しく映像を見ながら認知症を予防できるということも近い将来できるのかもしれません。
参考
ナゾロジー
https://nazology.net/archives/124248
元論文
Neural activity induced by sensory stimulation can drive large-scale cerebrospinal fluid flow during wakefulness in humanshttps://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.3002035
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