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目の症状や病気と予防・治療法

増えている子どもの弱視。早期発見と早期治療のために

現在、子どもの弱視は年間30,000人のペースで増えていると言われており、50人に1人が弱視だと言われています。
本人、家族や周囲も気がつかないことが多く、大人になってから日常生活や仕事に支障が出ることもあります。
早期に発見すればほとんどの場合治療が可能だと言われていますので、今回は早期発見のポイントや治療について紹介します。

視力の発達と弱視

弱視症状人間の目は生まれてしばらくはぼんやりとしか見えませんが、数ヵ月経ち、クリアな映像を見ることができるようになると脳が刺激を受けて急激に発達します。
3歳くらいで視力が0.6程度となり、6歳では1.0、8歳くらいには視力の発達が完了すると言われています。
しかし、斜視や強い遠視、乱視などにより視力の発達が妨げられることで、メガネを使用しても視力が十分でない“弱視”になってしまうことがあります。
子どもは“弱視”の状態であることに気がつかないことがほとんどで、周りの大人ができる限り早く発見し、視力の発達が完了する8歳くらいまでに治療や訓練を行うのが有効とされています。

上記のイラストでチェックしてみてください。

※視力の正常値は1.0以上で、裸眼視力が悪くても、メガネを使用して1.0以上見えていれば弱視ではありません。

子どもの弱視の種類

子どもの弱視は大きく2つに分類され、未熟児網膜症などの眼球の病気が原因で治療や訓練でも視力発達が難しい「器質弱視」と治療や訓練により視力発達の可能性が高い「機能弱視」があります。
そして、「機能弱視」は更に4種類に分類されます。
①屈折異常弱視(くっせついじょうじゃくし)
両目とも遠視や近視、乱視が強いために起こる弱視。
②不同視弱視(ふどうしじゃくし)
片目だけ遠視や近視、乱視が強いために起こる弱視。
③斜視弱視(しゃしじゃくし)
斜視(右目と左目の向いている方向がずれている状態)が原因で起こる弱視。
④形態覚遮断弱視(けいたいかくしゃだんじゃくし)
生まれつきの白内障や眼瞼下垂などにより、視力の発達時期に視覚情報が遮断されて起こる弱視で、片目だけの場合と両目ともの場合があります。

機能弱視の治療と訓練

メガネをかける子ども機能弱視の一般的な治療としては、「メガネをいつもかけておくこと」です。
遠視や近視、乱視がある場合は、メガネをかけて網膜にピントを合わせることでクリアな映像が脳まで届き、視力の発達が促されます。
また、生まれつきの白内障や眼瞼下垂(がんけんかすい)がある場合はまず手術を行い、その後、屈折矯正の治療用メガネ(子どもの弱視等の治療用メガネ等に係る療養費の支給制度があります)を使用します。
片目だけ弱視の場合は、メガネをかけるだけでは視力が発達しない場合があり、そのような場合は、同時に遮閉訓練(しゃへいくんれん)を行います。
遮閉訓練は、視力の良い方の目に遮閉具のアイパッチを付け、視力の悪い方の目でしっかり見るように促す訓練です。
しかし、遮蔽訓練は子どもが嫌がることが多く、家族の協力も必要で、治療効果の低減が問題になっているようです。そんな遮蔽訓練の負担を減らそうと子ども向けの弱視治療用アプリの開発が進んでいます。

開発中の子供向けVR弱視治療用アプリ

VR弱視治療用アプリ画像

このアプリは、VR上で左右の目に異なる映像を映し出すことで、アイパッチによる遮蔽訓練と同程度の効果の実現を目指し開発が行われています。
弱視の目の方にはクリアなけん玉の映像を、正常な視力の目の方にはぼやけているけん玉の映像を映すことで弱視の目の方を使う仕組みになっています。
このアプリの対象となるのは不同視弱視と斜視弱視で、VR上で毎日けん玉遊びをするだけで弱視治療につながります。
適切な治療を行わなければ弱視のまま大人になってしまう可能性がありますので、負担が少なく、続けやすい治療法の一つとして臨床研究、治験、薬機法に基づく承認取得を進め2025年度中の承認申請が期待されます。

少しでもおかしいなと感じたら眼科へ

ここまで治療について紹介してきましたが、まずは保護者の方や周りの方がお子さんの目の異常に気が付けるかどうかが重要です。現在は3歳児検診時に屈折検査を行うことで早期発見、早期治療が可能になってきています。また普段の生活の中で「転んだり、人にぶつかることが多い」「テレビを見るときに異常に近くに寄ったり目を細めたりする」「頭を傾けたり、横目で見たりする」「塗り絵をしていて線からはみ出すことが多い」など見えづらそうなどと感じたらできる限り早く眼科医への相談をしてみましょう。

まとめ

今回は子どもの弱視について考えるきっかけになればとお伝えしました。
3歳児検診や日常生活の中で弱視であることが早期に発見できれば治療ができ、正常な視力を取り戻すことができる可能性が高くなりますので、あなたの大切なお子さまの目を今一度確認していただくと嬉しいです。

参考URL
・日本眼科学会:小児弱視治療用眼鏡等の療養費支給について
https://www.nichigan.or.jp/member/journal/syaho/ryoyohi.html

・小児向けVR弱視治療用アプリの共同開発について
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000048.000034298.html

・子どもの弱視・斜視 | 目についての健康情報 | 公益社団法人 日本眼科医会
https://www.gankaikai.or.jp/health/betsu-003/

 

 

この記事を書いた人

山本 旭彦

わかさ生活ヘルスキーパー。網膜色素変性症によって視野が狭くなり、暗いところも見づらい症状をもつ。視覚障がいへの理解、気軽にサポートできる環境を広めようと、「あきひこさんの一日」と称した出張授業を小学校などで継続的に実施しています。

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