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手術なしでロービジョン改善?VRゴーグルで視力回復した事例を紹介

ゴーグルをつけた男性画像

ロービジョンを改善するには手術するしかないと思っている方も少なくないでしょう。
しかし、近年VRゴーグルを使用することで視力が回復した事例を、国内外問わず見かけるようになりました。
今後はノーリスクで視力を回復する治療が当たり前になるかもしれません。
果たして、VRゴーグルで本当に視力は回復するのでしょうか?
本記事では、VRゴーグルを使用して視力や斜視が改善した事例を紹介しています。
なぜVRゴーグルを使用することで視力が回復するのかについても詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

VRゴーグルとは

そもそもVRとは、「Virtual Reality(バーチャルリアリティ)」の略で、仮想現実と呼ばれることもあります。
VR技術を使えば、実際にそこにいなくてもいるような感覚を味わえるので、ゲームや映画といったエンタメ分野で利用されることが多いです。
VRゴーグルは、VR体験をよりリアルに感じられるデバイスです。ゴーグルを装着すると、360度映像に囲まれるので、より没入感の高い体験が味わえます。例えば月の上に立つ体験や、ゲームの中にいるような仮想体験も可能です。

VRゴーグルで視力が回復した事例

VRゴーグルを使用した弱視の治療は、米国で盛んに行われています。日本国内での事例はまだ少ないのですが、SNSではVRゴーグルを使用したら視力が上がったという報告も確認できました。
VRゴーグルを使用することで、目にどのような効果をもたらすのでしょうか。2つの事例から詳しくみていきましょう。

Luminopia Oneで子供の視力が向上

弱視の子供向けに開発した「Luminopia One」を用いたVR治療法が、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されました。臨床試験では1日1時間(週6日まで)、VRビデオの視聴を約3ヶ月続けたところ、参加者の62%に視力の改善がありました。日本ではまだ承認されていませんが、近い将来子供の視力を改善する1つの手段になりそうです。

1つ注意して欲しいのは、子供がVRゴーグルを使用するのは最低でも13歳からということです。
目の成長途中でVRの使用は、目に大きな負担がかかります。VRゴーグルの使用は、目の成長も考えて13歳以上からにしましょう。

Vivid Visionで成人の斜視が改善

両目を使ってものを立体的に見るのが難しい斜視などの弱視の方に向けて開発されたのが「Vivid Vision」です。開発者自身が幼少期から斜視を患っており、1日何時間も治療やリハビリを実践していましたが、斜視は改善しませんでした。
そこで、今回自ら開発したVivid Visionを使用したところ、斜視の改善がみられたのです。
Vivid Visionを用いた実験によると、被験者の90%以上が物体を立体に捉える認識機能が向上したという報告がありました。さらに、実験前よりも文字が読みやすくなるなど、基本的な視力の向上にも関係しているので、様々なケースでの利用が期待できます。

なぜVRゴーグルで視力が回復するのか

VRゴーグルの利用で視力が回復する理由として、目の焦点距離が長いことが挙げられます。
焦点距離は、簡単に言うと目と目で捉える対象物の距離を表しています。
スマホやPCの焦点距離は、0.3〜0.45メートルです。一方で、VRゴーグルを利用した場合、焦点距離は1.7メートルといわれています。すなわち、VRゴーグルを利用すると目は遠くを見ている状態になります。
スマホやPCの利用が増えたことによって、遠くを見る機会が少なくなりました。
VRゴーグルを使用することによって、普段使わない目の筋肉が刺激され視力の改善につながると考えられます。

おすすめのVRゴーグル

本記事を読んで、VRゴーグルに興味を持った方も多いでしょう。おすすめは「Meta Quest 2」です。「Meta Quest 2」は、PCやスマホなど他の機器に接続しなくてもすぐ利用できます。
初心者の方にも使いやすいVRゴーグルです。
今回紹介した事例はすべて高機能VRゴーグルが使用されています。瞳孔間距離が設定できる「Meta Quest 2」などの高機能VRゴーグルを利用するのがいいでしょう。

※瞳孔間距離
右目の黒目(瞳孔)の中心から、左目の黒目(瞳孔)の中心までの距離を測ったもの

まとめ

VRゴーグルの活用はゲームなどのエンタメ分野から始まりましたが、今では医療分野にまで活用されています。視力の改善だけでなく、弱視の治療にも役立つVRゴーグルは、今後もさまざまな方面で普及していくでしょう。現在は米国を中心に研究が進められていますが、日本でも当たり前に使われるのもそう遠い話ではありません。

※注意事項

  • VRゴーグルを治療目的で使用される際は、必ず眼科医に相談しましょう。
  • VRゴーグルの使用は、目の成長に影響が出ないよう13歳以上から利用しましょう。
  • 長時間使用すると「VR酔い」する可能性があるので、注意しましょう。

【参考文献】

Luminopia Oneが米国食品医薬品局(FDA)に承認される
https://www.businesswire.com/news/home/20211020005896/en/Luminopia-Announces-FDA-Approval-of-Digital-Therapeutic-that-Uses-TV-Shows-to-Improve-Vision-in-Children-with-Lazy-Eye

Vivid Vision研究結果
https://www.roadtovr.com/vivid-vision-amblyopia-vr-treatment-efficacy-study/

中国・北京の研究機関アドバンスド・イノベーションセンターの研究資料
http://n3.sinaimg.cn/sina_vr/647a35e2/20170612/YingWenBaoGao.pdf

この記事を書いた人

矢込郁

Webライター。筆者自身も網膜色素変性症で、視野が狭く暗い場所が見えづらいなかで生活を送っている。専門分野であるWeb・ITの知識と目に関する自身の経験を織り交ぜながら、視覚に問題のある方に寄り添った記事を執筆。

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