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目の症状や病気と予防・治療法

若者からはじめる 人生100年時代の瞳ケア習慣

瞳ケア習慣

医療も進み、今後、100歳まで長生きする方が増えていくと予測されています。
にもかかわらず、一説によると目の寿命は約70年と言われています。
せっかく長く生きられるようになっても、目が見えなくなることにより楽しみが無くなってしまうのはさびしいことです。
この記事では、これからの時代に大切な瞳ケアについてお伝えします。
まだ目が元気な若い方にこそお伝えしたい内容です。

ちょっとした目のトラブルが生活の質を低下させる

目が辛そうな女性画像

総務省の『通信利用動向調査』(令和3年)[1] によると、20~49歳では約9割がスマートフォンを利用しているそうです。
スマートフォンなしの生活はもう考えられなくなってきています。

電子機器が必須になった現代では、ちょっとした目のトラブルが生活の質を落としやすくなっています。
たとえば、ドライアイになるだけで、抑うつ気分や不安感が高まる可能性があるという報告があります [2]。
生活の質も大きく低下させてしまいます [3]。
原因はいろいろと考えられますが、ひとつには電子機器の奥に広がる数々の楽しみを味わえなくなることが挙げられるのではないでしょうか。

ドライアイですらここまで生活の質が低下してしまうので、ドライアイ以上に深刻な目の障害だともっと大きなことになることが予想されます。

ロービジョンで認知症リスクが増加する

物忘れがある女性

深刻な目の症状といえば「ロービジョン」。
「ロービジョン」とは日本語で「弱視」と言い、眼鏡やコンタクトレンズ、医療介入では矯正できない視力障害のことを意味します。
治そうと思っても今の医学では治すことがむずかしい深刻な目の症状です。
加齢黄斑変性や白内障、緑内障、網膜色素変性症など様々な症状があります。

ロービジョンとなると、うつ病リスクが上がったり生活の質が低下、認知症リスクも増加してしまう可能性もあります。
人生100年時代の後半でも「見ること」によっての楽しみを続けていきたいものです。

若い方にこそ瞳ケアが必要!

元気に過ごす女性

「自分には関係のないこと」と10~30代の方は思っておられるかもしれません。しかし、私は若い方にこそ瞳ケアを徹底してほしいと思っています。
というのも、傷ついてしまった細胞が元に戻ることは難しいからです。
「自分は若いから大丈夫」と、何も対策していないとどうなるでしょうか?
目が悪くなることを自覚する中年世代になったときに、もう手遅れな状態にまで症状が進行している可能性があります。

目の老化は、自覚するのが中年以降なだけで、20歳から始まっていると言われています。
人生の最後まで生活の質を落とさず過ごすには、若い頃からしっかりケアしていく必要があるのです。

瞳ケア3

瞳の画像

では、具体的にどういうふうに瞳をケアすればいいのでしょうか?
瞳ケアの方法はたくさんあるので、すべてを紹介しきれないのですが、以下の3つの習慣はおさえておきたいところ。

❶ 目に良い食事をとる

❷ 目を刺激しすぎない

❸ すこしでも目で気になることがあれば眼科へ

目のケアで最も大事なのは毎日の食事かもしれません(❶)。
というのも、私たちの身体は食べたものでできています。
悪い食生活をつづければ、目を含む身体全体に影響があるのは当然です。

目に良いと報告されている代表的な成分

①アントシアニン

食品 / ブルーベリー、カシス、赤キャベツ、ブラックベリー、紫いもなど。

②ルテイン(&ゼアキサンチン)

食品 / ほうれん草、ロメインレタス、ピスタチオ、卵黄、ニンジンなど。

③アスタキサンチン

食品 / エビ、カニ、ニジマス、サケ、イクラなど。

④オメガ3脂肪酸

食品 / マグロ、サンマ、ブリ、サバ、アジなど。

⑤ビタミンD

食品 / イワシ、カツオ、サンマ、マグロ、きのこなど。

食事でなかなかとれない成分はサプリメントで補給するのもおすすめです。

 次に、目を刺激しすぎないことが大事です(❷)。
自分が気づかないだけで、無意識に目をかいたり、アイメイクやコンタクトレンズの取り扱いなどで指を入れたりしてしまうこともあります。
目はむき出しの臓器と言われています。
ほかの臓器とはちがって骨に守られていません。

心臓や肝臓を指で直接押すなんて怖いと思いますよね?
それなのに、目はむき出しているので簡単に触れてしまうことができるのです。

基本的に目はできるだけ物理的な刺激を加えないようにしましょう。
電子機器を使うときにはブルーライトカットメガネをかけるなどして、目は大切にしすぎるくらいがちょうどいいです。
また目は疲れる前に休ませてあげましょう。
アイマスクやホットタオルもおすすめです。

 最後に、何か少しでも目に違和感があればすぐに眼科に行きましょう(❸)。

たとえば、飛蚊症(ひぶんしょう)。
飛蚊症とは、視界に蚊や糸くずのような物体が見える症状のこと。
眼を動かすと、それを避けるように糸くずが視界のすみへ動くのを見たことはありませんか?
飛蚊症が気になる時は眼科へ行き、症状を確認しましょう。ひどい場合は網膜裂孔や網膜剥離の可能性もあります。
このような目の小さな変化に気づいたら、すぐ眼科へいくようにしましょう。

まとめ

この記事では、人生100年時代における瞳ケアの重要性や具体的なケア方法をご紹介しました。
目が悪くなってから瞳をケアし始めていては、すでに遅い場合があります。
若いうちから瞳ケアを習慣づけたいものです。
目に困っている方はもちろんのこと、目に困っていないという方にも、今回お話した内容を知っていただきたいと思っています。

参考

[1] 総務省. (2022). 令和3年通信利用動向調査の結果
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05a.html

[2]  Wan, K. H., Chen, L. J., & Young, A. L. (2016). Depression and anxiety in dry eye disease: a systematic review and meta-analysis. Eye (Lond), 30(12), 1558-1567.
https://doi.org/10.1038/eye.2016.186

[3] Uchino, M., & Schaumberg, D. A. (2013). Dry Eye Disease: Impact on Quality of Life and Vision. Curr Ophthalmol Rep, 1(2), 51-57.
https://doi.org/10.1007/s40135-013-0009-1

 

 

 

この記事を書いた人

吉田朋生

奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 博士前期課程 修了。視神経系が構築されるしくみについて研究していました。サイエンスにかぎらず、歴史や哲学、社会学などにも興味があります。多角的な視点で情報発信してきたいと思います。

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