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目の症状や病気と予防・治療法

子どもの頃から紫外線対策って必要⁉ 太陽の光が目に与える影響

太陽の光を気持ちよく浴びている男の子

4月に入り、紫外線が強くなり始めました。
4月から9月は1年間のおよそ70%から80%もの紫外線が降り注ぐといわれています。
紫外線は浴びすぎると皮膚に悪影響を及ぼす可能性があるため、子どもの頃から紫外線を浴びすぎないよう意識してほしいと、「良い皮膚」の語呂合わせから「4月12日」を『子どもを紫外線から守る日』と制定されています。
紫外線は皮膚だけではなく目にも影響を与えるといわれていますので、子どもの目に対する紫外線の影響を心配される親御さんが増えています。

そこで今回は、様々な研究結果から子どもの目を紫外線から守る必要性、また紫外線対策を行いながら適度に太陽の光を浴びることで目に良い影響があることも研究されていますので紹介いたします。

 

太陽の光の種類とエネルギー

可視光線(7色) の光を目でみているイラスト

太陽の光には目に見える「可視光線(赤から紫まで7色)」と目に見えない「赤外線(IR)」と「紫外線(UV)」があります。
そして、それぞれ波長が違い 赤外線→可視光線→紫外線 の順に波長が短くなっていき、波長が短いほどエネルギーが強く生物に与える影響も大きくなります。
このことから私たちはエネルギーの強い紫外線から身を守る必要があるのです。

 

紫外線の種類

UV-AとUV-Bが肌に悪い影響を受けて困っている女性のイラスト

紫外線はさらに「UV-A」「UV-B」「UV-C」の3つの種類に分かれていて、一番エネルギーが強いのが「UV-C」です。エネルギーが強いと聞くと不安になるかもしれませんが、「UV-C」はオゾン層などに吸収されるため、地上に到達することはありません。
私たちに影響を与えるのは、「UV-A」と「UV-B」で、「UV-A」は肌の深部(真皮)や目の奥(網膜)に到達し、「UV-B」は肌の浅いところや目の角膜・水晶体に吸収され、肌や角膜の炎症などを起こしたり、目の病気の原因となります。
紫外線は晴れの日だけではなく、曇や雨の日でも降り注いでいますので、これからの季節は天気に関係なく対策が必要です。

 

年々紫外線の量は増えている

紫外線を浴び、帽子を被って手でまぶしさを防いでいる女性

そして、この20年間で紫外線の量は緩やかに増えています。
日本でも1998年以降から母子健康手帳にあった赤ちゃんの「日光浴」の記述が「外気浴」に変わりました。外気浴とは直接日光に当たることではなく、戸外の空気に触れることです
成長過程にある子どもの目は、大人よりも光を通しやすいため、小さい頃からの紫外線対策が大切です。
対策を怠ると、一時的なものとしては紫外線の強い場所(スキー場、海水浴場、高山など)で長時間遊んだ後に「雪目(ゆきめ)」という角膜炎が起こることがあります。
そして、小さい頃から紫外線を浴びる機会が多いと、白目の一部がシミのように黄色く濁り盛り上がる「瞼裂斑(けんれつはん)」や水晶体が白く濁る「白内障」などになるリスクが高くなります。

 

太陽の光を浴びることも大切

ここまでの話で紫外線は良くないものだと感じている方も多いと思いますが、しっかりと紫外線対策をし、外出やスポーツなどで適度に太陽の光を浴びることで、骨にとって重要なカルシウムの代謝を調節するビタミンDの合成を助けてくれます。
また慶応大医学の坪田一男名誉教授の研究により太陽の光に含まれる「紫色」の光には、近視の進行を抑えることが分かってきました。

 

近視の進行抑制効果を持つ紫色の光

慶応大医学部の眼科学教室教授として、太陽光に注目して研究されてきた坪田一男名誉教授の研究により、太陽の光に含まれる紫の光(バイオレットライト)と近視の関係が明らかになりました。坪田教授は強度近視の方に眼内レンズを用いた屈折矯正手術を続けていく中で、術後に近視が進む方と進まない方がいることに気が付きました。
調査をした結果、バイオレットライトを通す眼内レンズを装着した患者が「近視の進行が抑制されている」ということに気がつき、コンタクトレンズでも調査したところ同様の結果が得られたそうです。
そして、マウスやヒヨコなどの基礎研究の結果も重ね、バイオレットライトを浴びることが近視の進行抑制に効果があることを発見したのです。
では実際どのくらい太陽の光を浴びればよいのでしょうか。様々な研究結果から1日2時間程度屋外で過ごすのが良いとされています。
窓際で太陽の光を浴びれば良いのではと考える方もおられると思いますが、最近の窓ガラスはバイオレットライトを通さないので、紫外線対策をして直接太陽の光を浴びることが必要です。

 

どんな紫外線対策をすればいいの

ではどのような紫外線対策が良いのか。

屋外の活動の際は帽子とメガネの両方を使用するのが効果的です。
帽子はつばが7cmあるものをかぶれば、顔に当たる紫外線の60%をカットできるといわれています。そして、メガネは子ども用のサングラスだけでなく視力を矯正するための通常のメガネでも紫外線を予防する働きがあります。日差しが強い時間(特に10時から14時)の外出などをできる限り避けることが有効です。

 

まとめ

太陽の光には様々な種類があり、その中でも紫外線はエネルギーが強く、肌や目にダメージを与える悪いところもあります。
しかし、しっかりと対策をした上で1日2時間を目安に太陽の光を浴びることで、ビタミンDの合成を助けてくれたり、近視の進行抑制といった良いところもあります。
紫外線対策をしながら、うまく太陽の光を健康に活かしていきましょう。

 

☆参考URL
○環境省・紫外線環境保健マニュアル2008
https://www.env.go.jp/chemi/uv/uv_manual.html

〇バイオレットライトによる近視進行抑制技術
https://www.kll.keio.ac.jp/ktm2017/pdf/28_tsubotalab.pdf

この記事を書いた人

メノコト365編集部

目の健康に関するあらゆる情報を発信しています。子どもたちが健やかな目で生活できるように、小さなうちから正しい健康習慣を身につけてもらうための健育イベントを開催するなど、目の健康について意識を高めるきっかけになることを願い様々な活動をしています。

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