「目の正月」という言葉を、聞いたことはありますか?
目の正月なんていうと、「お正月みたいに、目が宴会しているような騒がしい状況のこと?」、逆に「お正月くらいは、目を休ませてあげましょうね」という意味なのかなと思った人もいるかもしれませんが、どちらも違います。
実は、とっても美しい古くからある日本の言葉なんですよ。
今日はお正月にちなんで「目の正月」の意味や使い方について説明しますね。
あの松尾芭蕉も俳句で詠んでいた「目の正月」の意味とは?
「月の鏡 小春に見るや 目正月」
これは、松尾芭蕉が24歳のときに詠んだ句です。
「小春」は秋の穏やかな日のことで、小春日和ともいいます。こんな時期に、鏡のように澄んだ美しい月を見るのは、まるで目の正月のようだ。
そんな気持ちを詠んだ句なのだそうです。
つまり「目の正月」とは、美しいものや珍しいものを見て楽しむことを例えた言葉。今使うとしたら、大自然の絶景スポットに行って「この絶景ならインスタ映えしそう! まるで目の正月のようね」といった感じでしょうか。
日本人にとってお正月といえば、一年に一度の大切な日。特に昔の人にとっては特別な一日だったことでしょう。その「正月」という言葉を使っているなんて、すてきですよね。
昔の人も「美しいものが目にいい」と思っていた?
この言葉はいつ頃から使われていたのか…とさかのぼってみると、古くは江戸時代の歌の中でも詠まれていることが分かりました。
江戸時代前期の狂歌集狂歌・後撰夷曲集に、「春ならで 目の正月は こよひぞと 向ふかがみの もち月のかげ(※1)」という句があるようです。
この時代の目を喜ばせる美しいものといえば、自然の景色や夜空の星を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
ここでふと気づいたのは、「自然の景色」や「夜空の星」は見て楽しいだけではなく、目をリラックスさせてくれると昔の人も考えていたのかなぁ、ということです。
遠くを見ることは、毛様体筋を緩めて緊張した目をほぐすのにいいと言う人もいるようですし、また自然の緑を見ることは、視細胞がリラックスできるので目を休ませてくれる、と考える人もいるようです。
昔の人が目の仕組みを知っていたかどうかは分かりませんが、美しいものを見ると目が喜ぶということを何となく感じていたのかもしれませんね。
2019年は「目の正月」を体感してみましょう!
こうして目の正月の言葉の意味を知ったとき、お正月に真っ先に思い浮かんだのは「初日の出」でした。今年は見ましたか? 山に登り自然の緑に触れ、遠くに見える朝日を眺める…これって、とても目が喜んでくれる光景、まさに「目の正月」って感じですよね。
初日の出を見逃したという方も、今年は自然の緑に触れたり星空や青空を眺めたりして、ぜひ「目の正月」を体感してみてはいかがでしょうか。
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【参考】
※1 : 後撰夷曲集(江戸前期の狂歌集)10巻4冊 生白堂行風(せいはくどうぎょうふう)編 寛文12年(1672)刊
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