会話中に相手のまばたきを意識したことはありますか?
まばたきの役割は目に水分を補給し、乾燥しないようにすることだといわれています。
しかしそれだけではなく、まばたきは人同士のコミュニケーションに影響を与えていることが、2018年12月ドイツのマックス・プランク情報科学研究所の実験で明らかになりました(※1)。
3Dアニメのアバターを使ったユニークな会話実験
ドイツのマックス・プランク情報科学研究所は、人間の会話とまばたきの関連性を知るためにある仮想実験を行いました。
実験では、18歳から38歳までのオランダ人の被験者35名が1人ずつコンピューターの前に座り、3Dアニメーションのアバター3名と会話をするというユニークな方法が用いられました。
画面の中のアバターは、アニメーションであるにもかかわらず人間の動きを正確に再現しています。アバターの口の動きと実際に話しかけられる内容がシンクロしていたり、被験者の話を聞くときにまばたきしたり、私たちとほぼ同様のリアクションをするのです。
実際の人間だと被験者ごとに微妙な変化が出ることが予想されますが、コンピューターで計算されたアバターだとまばたきの長さや回数を統一して実験できるというわけですね。
リアルなアバターを前にした被験者は、会話を進めていくうちにまるで本物の人間と会話をしているような錯覚に陥ったのでは……?
会話の相手であるアバターのまばたきの長さや回数によって、被験者の回答はどのように変化するのでしょうか。今回の実験では、アバターのまばたきによって、回答時間がどう変化するか、詳細な結果を調査することで検証しています。
会話中に長いまばたきをするほど、相手の回答は短くなる
アバターのまばたきや会話の内容は研究員が操作し、被験者に意図を明かさず実験はスタート。
・無反応
・うなずき+短いまばたき
・うなずき+長いまばたき
上記3種類のアバターのリアクションに対し、被験者の反応の変化を計測したところ、次のような結果が明らかになりました。
アバターが無反応な場合、被験者の答えた回答の長さは41.7秒。また、うなずき+短いまばたきの場合は40.82秒と、統計学的な見地から結果に大差はありません。
しかし、アバターがうなずき+長いまばたきの反応を示すと、被験者の回答の長さは37.96秒と短くなりました。
会話中、アバターが短いまばたきをした時よりも、長いまばたきをした時のほうが被験者の回答時間が短いという結果が出たのです。この実験結果は、私たちの日常におけるコミュニケーションの中でどのようなことを意味するのでしょうか。
まばたきは非言語コミュニケーションの要素を持つ
発表された研究論文では、会話中のまばたきは相手とのコミュニケーションに影響を与え、相手のまばたきの長さに応じてコミュニケーションの方法に変化が生まれると考察されています。
誰かと会話をする時、意識してまばたきの回数や長さをコントロールしている人はいないでしょう。また、会話している相手のまばたきに注意を向けることもあまりないと思います。
しかし、私たちが日常的なコミュニケーションの中で無意識に行っているまばたきは、うなずく仕草や相槌と同様に非言語コミュニケーションのひとつの要素であり、人と人のやり取りの質にも影響を与えることが今回の研究により明らかになりました。
まばたきの長さで相手が話しやすくなる可能性も?
今回紹介した実験結果は、私たちの日常のシーンでも役立てることができそうです。
例えば、ビジネスシーンで会議や商談など相手と自分との間で交渉が必要な場面があると思います。そういった場で、まばたきの数が多い人は相手に「不安感」と「落ち着きがない」という印象を与えてしまうこともあるかも。
さらに、場合によっては「何かごまかそうとしているのかな?」なんて思われてしまうことも…。
「コミュニケーションにおいてアイコンタクトは重要!」と多くの方が考えていますが、視線を合わせたりにっこり微笑んだりすることに加え、まばたきもまたアイコンタクトの一種なのかもしれませんね。
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