視力矯正やおしゃれの一環としてコンタクトレンズを使用している人が多くいるのではないでしょうか。
現在、日本国内において1,500万人以上の人がコンタクトレンズを使用しているといわれています (1)。コンタクトレンズは便利である一方、適切に使用しなければ眼に悪い影響を与えてしまいます。今回は、コンタクトレンズによって生じる眼のトラブルやコンタクトレンズを適切に使用することの重要性についてご紹介します。
コンタクトレンズの基礎知識
コンタクトレンズってなに?その仕組みは?
コンタクトレンズは視力を矯正するための医療機器です (2)。
通常、眼に入ってきた光は角膜と水晶体で屈折し、網膜で像を結びます。これによって物をはっきりと見ることができます。
光の屈折は角膜や水晶体によって調節されていますが、この調節がうまくいかなくなるとピントが合わず、視力の低下が起こります (3)。
光の屈折を調節し、視力を矯正してくれるのがコンタクトレンズです (2)。
図1:コンタクトレンズの仕組み
コンタクトレンズの種類
コンタクトレンズは、硬いレンズで視力を矯正する力が強いハードコンタクトレンズと、柔らかくずれにくいソフトコンタクトレンズの2種類に分けられます。更に、ソフトタイプのコンタクトレンズには使い捨てのものと、何度も洗って使用できるものがあります (4)。
図2:コンタクトレンズの分類
コンタクトレンズによる眼のトラブル
コンタクトレンズによって起こる眼のトラブルにはどのようなものがあるのでしょうか。また、それらはなぜ起こってしまうのでしょうか。眼のトラブルとその原因、治療や予防方法についてご紹介します。
ドライアイ/角膜上皮障害
夕方になると眼がしょぼしょぼする、画面を長時間見ていると眼が乾燥して視界がぼやけると感じる人は多いのではないでしょうか。コンタクトレンズを長時間つけていると、コンタクトレンズの表面が乾燥します。更に、乾燥したコンタクトレンズは涙を吸収するため、眼がしょぼしょぼする、視界がぼやけるといったドライアイの症状がでてきます (4)。ドライアイの人は、角膜へ酸素や栄養を運ぶ力が低下しているため、角膜血管新生を起こしやすくなります (5)。
また、コンタクトレンズそのものや、コンタクトレンズに付いたゴミによって、角膜に傷がつくと、角膜上皮障害が起こり、眼の痛みや充血、異物感などが生じます (5)。これらの治療には、目薬や眼軟膏が使用されています (6)。
(画像引用:日本角膜学会 | (cornea.gr.jp))
感染症
代表的なコンタクトレンズによる角膜感染症には、アカントアメーバ角膜炎があります (6)。
アカントアメーバは水の中で生きる原虫で、川や池だけではなく水道水にも生息しています (7)。洗浄液を使用せず、水道水でコンタクトレンズを洗っている人は要注意です。水道水中のアカントアメーバが角膜に移り、眼のゴロゴロ感や痛み、角膜の濁りや視力の低下を引き起こします (7)。アカントアメーバ角膜炎を治すお薬は存在しません。そのため、角膜を削ってアカントアメーバを取り除く必要があり、視力障害が残ってしまうことがあります(7)。
低酸素/血管新生
コンタクトレンズを長時間つけたままでいたり、コンタクトレンズをつけたまま寝たりすると、角膜は酸素不足になります。酸素不足になると酸素を求めて新しい血管が生えてきます。これが角膜血管新生です。角膜は光を通すために透明になっていますが、血管が侵入してきた角膜は濁ってしまい、視力低下の原因になります (8)。また、酸素が不足した角膜は、傷つきやすく、菌が入りやすくなるため、感染症や角膜上皮障害のリスクが高まります (8)。
レンズの使用を中止し眼鏡で生活する、あるいは酸素をよく通すコンタクトレンズに変えることで症状を抑えることができます (5)。
(画像引用:Menicon HP)
トラブル予防
汚れや細菌によるトラブルを防ぐために、レンズを扱う前の手洗いを徹底するようにしましょう。レンズやレンズケースの洗浄をしっかり行い、清潔を保ちましょう。ドライアイは、人口涙液で眼に潤いを与えたり、まばたきを多くするよう気を付けたりすることで防ぐことができます。また、酸素を通しやすいコンタクトレンズを選ぶことで角膜での酸素不足を予防することができます。
図3:トラブル予防
少しの注意でこれらのトラブルを防ぐことができます。自分自身のコンタクトレンズの使用方法を一度振り返り、見直してみてください。
新型コロナウイルス感染症とコンタクトレンズ
現在、新型コロナウイルス感染症が世界中で流行しています。新型コロナウイルス感染症は、目や口などの粘膜から感染することが知られています。眼に直接触れるコンタクトレンズは、新型コロナウイルスへの感染リスクをあげてしまうのでしょうか。実際には、コンタクトレンズの着用が、新型コロナウイルスへの感染リスクをあげるという証拠は得られていません (9)。
ただし、眼に直接触れるレンズや、コンタクトレンズを触る手にウイルスがついていれば、感染のリスクが高くなる可能性は十分にあると考えられます。とにかく重要なのは、手洗いです。清潔な手でコンタクトレンズを扱うことは、眼のトラブル予防や新型コロナウイルス感染症予防にとても効果的です。
適切な使用の重要性
コンタクトレンズによるトラブルが原因で視力障害が一生残ってしまうこともあります。トラブルを起こさないためにも、コンタクトレンズの適切な使用はとても重要です。コンタクトレンズを使用する際には、眼科を受診し、眼科医の指示に従いましょう。また、自覚症状がない場合でもトラブルが起き始めていることがあります。定期的に眼科を受診し、眼の健康を保ちましょう。
【参照】
(1)コンタクトレンズと角膜 | 日本角膜学会
(2)一般社団法人 日本コンタクトレンズ協会
(3)日本近視学会 HP
(4)コンタクトレンズ Menicon
(5)コンタクトレンズ診療ガイドライン(第2版) (clgakkai.jp)
(6)公益社団法人 日本眼科医会
(7)アカントアメーバ角膜炎について | メディカルノート (medicalnote.jp)
(8)コンタクトレンズ障害 | ワキタ眼科 (wakita-ganka.com)
(9)一般財団法人 日本コンタクトレンズ協会