
写真を撮ったときに、赤ちゃんの片方の瞳だけ白く光って写っていた——。
そんなちょっとした違和感が、実は病気のサインであることがあります。
その名前は「網膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)」。小さな子どもの目にできる、稀ながんのひとつです。
網膜芽細胞腫とは?こんなサインに気をつけて

網膜芽細胞腫は、目の奥にある網膜という神経の膜にできる“悪性腫瘍”の一種です。主に5歳以下の小さな子どもに発症し、約15,000人に1人の割合で見られます。片方の目だけにできる場合もありますが、両方の目にできることもあります。網膜芽細胞腫で最もよく見られるサインが、「白い瞳」です。スマートフォンやカメラのフラッシュで写真を撮ったとき、通常は赤目になりますが、片方の目だけ白く光って写ることがあります。網膜芽細胞腫は、早く見つければほとんどが治る病気です。視力を保てる可能性も高く、治療成績は年々向上しています。「白い瞳」「赤目が写らない」「視線がずれる」など、小さな変化に気づくことが、子どもの命と未来を守る第一歩になります。
網膜芽細胞腫は遺伝するの?
「子どもの病気は、親から遺伝したものなの?」網膜芽細胞と診断を受けたとき、多くのご家族がまず気にされるのがこの疑問です。結論から言うと、網膜芽細胞腫には“遺伝するタイプ”と“遺伝しないタイプ”の2つがあります。原因の多くは、RB1(アールビー・ワン)という遺伝子の異常によるものです。一部は生まれつき遺伝的に起こりますが、多くは偶然に発生するもので、誰にでも起こり得ます。
✓非遺伝性網膜芽細胞腫
網膜芽細胞腫はほとんどのケースが遺伝しないタイプです。この場合は、RB1遺伝子の異常がたまたま網膜の細胞の中で起こったもので、親から受け継いだものではありません。
このタイプでは片方の目だけに発症することが多く、兄弟や将来の子どもに同じ病気が起こる可能性は、ほとんどないと考えられています。
✓遺伝性網膜芽細胞腫
一方、遺伝性のあるこのタイプは、RB1という遺伝子の異常が原因です。この遺伝子は、細胞の増えすぎを抑える「ブレーキ役」。ところがこのブレーキがうまく働かなくなると、網膜の細胞がコントロールを失い、腫瘍ができてしまいます。遺伝性の網膜芽細胞腫は、生まれたときから体のすべての細胞にこの遺伝子の変化があるため、両方の目に発症する(両眼性のことが多く、将来的に他の場所にも腫瘍ができる可能性があります。また、この遺伝子の変化は親から子どもへ50%の確率で受け継がれることがあります。そのため、家族や兄弟姉妹に同じ変化がないかを調べる「遺伝子検査」や「遺伝カウンセリング」がすすめられる場合もあります。
網膜芽細胞腫には遺伝性と非遺伝性がありますが、どちらの場合でも、早期発見と適切な治療で多くの子どもたちが回復しています。
治療と早期発見──「命」と「視力」を守るために
網膜芽細胞腫の治療の目的は、「命を守ること」そして「できるだけ視力を残すこと」です。病気の進行度や腫瘍の場所によって、複数の治療法を組み合わせて行います。
主な治療法には次のようなものがあります。
| 化学療法(抗がん剤) | 腫瘍を小さくしてから局所的な治療を行うことも。 |
| レーザー・冷凍療法 | 小さな腫瘍を焼いたり凍らせたりして治療する方法。 |
| 眼動脈内注射 | 抗がん剤を目の血管に直接送り込む、体への負担が少ない最新の治療法。 |
| 眼球摘出 | 進行が進んだ場合、命を守るためにやむを得ず行われることもあります。 |
治療後も再発を防ぐための定期検査が欠かせません。また、義眼の装着や心理的サポートなど、子どもと家族が前向きに生活できるような支援も整っています。義眼の技術も進歩しており、外見上はほとんど気づかれないほど自然に見えるケースもあります。一枚の写真の気づきが、子どもの未来を救うことがあります。小さな瞳の中の光を、どうか守ってください。
参考文献
https://www.shouman.jp/disease/details/01_05_029/
http://www.japo-web.jp/info=page12