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目の症状や病気と予防・治療法

ショート動画は目に負担?スマホ急性内斜視を防ぐ、デジタルとの上手な付き合い方

スマホを手に持ちながら考えている父母と子ども2人

私たちの生活に欠かせない存在となったスマートフォン。
非常に便利な反面、最近では長時間の利用が原因で、目が内側に寄ったまま戻らなくなる「スマホ急性内斜視」のリスクが注目されています。
「ついつい長時間見てしまう」「手元にないと不安」……。そんな依存に近い感覚を抱いている方も多いのではないでしょうか。私自身、2人の子どもを育てる母として、スマホの便利さに日々助けられています。その一方で、小さな画面をじっと見つめる我が子の姿に「目や心への影響は大丈夫かな?」と、ふと不安がよぎることもあります。

そこで今回は、最新の研究知見を交えながら、家族みんなの健康を守るために知っておきたい、目と心に優しいデジタルデバイスとの付き合い方を一緒に考えてみましょう。

20〜30代の約6割が「スマホ依存」を自覚

寝ころびながらスマホを見ている女性

現代人のスマホ利用時間は増加の一途を辿っています。株式会社クロス・マーケティングが行った調査(※1)によると、スマホ依存の自覚がある人は全体で45%にのぼり、特に20~30代では59%と約6割にまで達しています。依存を感じる主な理由として、「無意識に操作してしまう」「手元にないと不安」「手持ち無沙汰になるとすぐ見てしまう」といった声が目立ちます。

(出典:株式会社クロス・マーケティング)

育児中も、つい隙間時間にSNSをチェックしたり、子供がぐずった時に動画を見せたりすることが日常の一部になっている家庭も多いはずです。この無意識な長時間利用が、知らず知らずのうちに、私たちの身体、特に「目」に大きな負担を蓄積させています。
実際に、調査結果によると、直近1か月間に「よく、目が疲れていると思う」は24%、「たまに、目が疲れていると思う」と合わせて65%の人は目が疲れていると実感しており、老眼が進む40~60代は目への疲労感は7割台と高いということがわかりました。

 

「スマホ急性内斜視」のメカニズムとは?

斜視をイラストにしたAI画像
「スマホ急性内斜視」という言葉を初めて耳にする方もいるかもしれません。これは、それまで異常がなかった人の目が、急に内側に寄ったまま戻らなくなる状態を指します。
私たちの目は、遠くを見るときは視線がまっすぐ並行になります。一方で、近くのものを見るときは、目の周りにある「内直筋(ないちょくきん)」という筋肉を使い、両目を内側に寄せます。これを「輻輳(ふくそう)」と呼びます。

スマートフォンを至近距離で長時間見続けるということは、この内直筋をずっと緊張させ続けている状態です。いわば、目の中で深刻な筋肉のコリが起きているようなもの。この緊張が慢性化すると、ふっと遠くを見たときにも筋肉が緩まず、目が内側に寄ったまま固定されてしまうのです。

 主な症状は、一つの物が二重に見える「複視(ふくし)」です。「看板の文字が重なって見える」「歩いていて段差の距離感がつかめない」といった違和感から気づくケースが多いようです。特に子どもの場合、片目を隠して物を見るような仕草をしていたら、内斜視のサインかもしれません。

 

ショート動画が目に与える負荷。瞳孔の激しい動きが疲労を招く

ゲームに熱中する子ども

コンテンツの進化も、目の負担を加速させています。最近のSNSで主流となっているリールやショート動画は、従来の動画視聴や電子書籍よりも、目への負荷が高い可能性が指摘されています。最新の研究(※2)によると、ショート動画は数秒ごとに「場面(明るさ)」や「情報量」が劇的に切り替わるため、目の瞳孔が頻繁に開閉を繰り返すことが分かってきました。瞳孔はカメラの絞りのような役割を果たしていますが、高速で切り替わるコンテンツに合わせて調整を繰り返すと、目の中の自律神経が酷使され、激しい眼精疲労を引き起こします。1分だけのつもりが、脳への強い刺激によってやめられなくなり、結果として過度な近距離作業を長時間続けてしまう。これがショート動画に潜む、視覚的なリスクといえます。

 

読み聞かせが脳を守るクッションになる

本を一緒に読む父と幼い女児

親として特に気になるのは、やはり子どもへの影響ですよね。ケンブリッジ大学の研究(※3)では、乳幼児期のスクリーンタイムの増加が、脳のネットワーク発達や社会情緒能力の低下に関連する可能性が報告されました。
しかし、この研究結果には、私たち親にとって非常に心強いニュースも示されていました。
研究によると、「親子の読み聞かせ時間」が長い家庭では、スクリーンタイムによる悪影響が大幅に弱まることが示唆されています。 デジタルデバイスは、平面的な情報の受け取りが中心になりがちですが、絵本の読み聞かせは「親の声」「温もり」「絵からの想像」「双方向の会話」という多角的な刺激を脳に与えます。
たとえスマホを見る時間があったとしても、それ以上に本の読み聞かせ時間があれば、子どもの脳と心は健やかに育つ力を維持できるのです。
デジタルを完全に排除するのは難しいからこそ、上手な付き合い方をルール化してみましょう。

スマートフォンは、現代の私たちの生活とは切り離せないもの。だからこそ、その影にあるリスクを知り、適切にコントロールすることが大切です。「スマホ急性内斜視」を防ぐために必要なのは、スマホを捨てることではなく、遠くを見る時間と大切な人と目を合わせる時間を取り戻すこと。今日から、スマホを置いて絵本を開く時間を、5分だけ増やしてみませんか?その積み重ねが、家族の健やかな目を守る第一歩になるのではないでしょうか。

参考文献

※1.スマホ依存症の自覚がある人は45%、20~30代は59% 「長時間利用」「無意識な操作」「手元にないと不安」が依存症の理由

※2.Just one hour a day of social media scrolling on your smartphone can cause eye strain

※3. Screen time, brain network development and socio-emotional competence in childhood: moderation of associations by parent–child reading

 

この記事を書いた人

山本 エミ

Webライター、編集者。学生時代は両目視力2.0をもちながら、現在は左右の目の視力差が大きい「不同視(ガチャ目)」に悩む日々。現代病である疲れ目など、目の健康に役立つ記事を中心に執筆している。

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