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目にまつわるお役立ちニュース

スマホやタブレットが奪う子どもの視力。「近視パンデミック」から目を守る3つの鉄則

子ども2人がスマホでゲームをしている様子

今、私たちの社会で静かに、そして確実に進行している健康危機があります。それは「近視パンデミック」です。

スマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスが生活の一部となり、子どもたちが屋外で過ごす時間が減った現代。その結果、世界的に近視人口が急速に増加しています。2050年には世界人口の半分が近視になると予測され、特に東アジアではこの傾向が顕著です。日本の小学生の約3人に1人が裸眼視力1.0未満というデータからも、その深刻さがうかがえます。
「たかが近視」と放置すれば、将来的に失明リスクのある重篤な目の病気につながる可能性も高まります。これは、単にメガネが必要になるというレベルの話ではありません。

本記事では、この静かに進行する健康危機の現状と、家庭で実践できる近視パンデミックから目を守る3つの鉄則を徹底解説します。

なぜ今、近視が世界的に急増しているのか?

子どもが眼科で検査を受けている

「パンデミック」と聞くと、感染症の世界的流行を思い浮かべるかもしれません。

「近視パンデミック」はスマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスが生活の一部となり、子どもたちが屋外で過ごす時間が減った結果、世界的に近視人口が急速に増加しています。特にアジア諸国での増加は顕著になっています。

オーストラリアのブライアン・ホールデン視覚研究所の予測によると、このままでは2050年には世界人口の約半分(約50億人)が近視になり、そのうち約10%が失明につながりかねない「強度近視」になるとされています。

日本の状況も例外ではありません。2024年度の文部科学省の統計では、日本の小学生の約36.8%が裸眼視力1.0未満となっており、子どもの視力低下はもはや無視できない社会問題です。これは、単に「メガネが必要になる」というレベルの話ではなく、子どもの未来の健康に関わる重大な危機なのです。

近視が進行する2大要因

学生がスマホをみている

近視には遺伝的な要因も関係しますが、近年の爆発的な増加は明らかに後天的な環境負荷によるものです。主な原因は次の2つです。

要因①デジタルデバイスの長時間利用

近視が進行する最大の要因は、「目を近くで使う作業」の継続です。スマホ、タブレット、ゲーム機などを長時間、至近距離で見続けると、目の奥行き(眼軸)が伸びてしまい、遠くを見たときに網膜の手前でピントが合ってしまう「近視」の状態が固定化されていきます。現代のデジタル生活は、まさに近視を加速させる環境と言えます。

要因②太陽光を浴びる時間の減少

意外に思われるかもしれませんが、屋外活動(太陽光を浴びる時間)の減少も、近視進行の大きな原因の一つです。太陽光に含まれる特定の波長の光が、近視の進行を抑える効果があることが研究で明らかになっています。子どもの遊びが外遊びから室内でのゲームや動画視聴にシフトしたことが、このパンデミックを加速させているのです。

子どもの目を守る!家庭で実践したい「3つの鉄則」

外で遊ぶ子どもたち

子どもの大切な視力、そして未来の健康を守るために、親や学校、社会全体で今すぐできることがあります。特に家庭で実践できる「3つの鉄則」をご紹介します。

外に出て太陽の光を浴びる

近視予防において最も重要で、科学的な効果が認められているのが屋外活動です。1日2時間程度、太陽光を浴びながら屋外で活動することで、近視の発症リスクや進行リスクが大幅に減少することが分かっています。特別な運動でなくても構いません。散歩、公園での遊び、通学時間などを活用し、積極的に太陽光を浴びる機会を設けましょう。

「20-20-20ルール」で目を休ませる

デジタル機器や勉強で目を酷使する際は、意識的な休憩が必要です。20分近業作業(目を近くで使う作業)をしたら、20秒間、220フィート(約6メートル)以上遠くの景色を見る、というルールです。このルールを生活に取り入れるだけで、目の緊張が和らぎ、疲れ目や近視の進行を防ぐのに役立つと言われています。タイマーを活用して習慣化しましょう。

タブレット・スマホ利用の「制限と習慣化」

デジタル機器の使用時間そのものを管理するとともに、使い方を見直します。利用時間の制限:子どもの年齢に応じて、1日あたりの使用時間を明確に決めましょう。画面と目の距離は最低でも30cm以上離れるように習慣づけましょう。また、寝転がっての操作や、暗い部屋での操作は厳禁です。

近視が進行すると、将来的に失明につながる病気のリスクが高まります。「近視」は単にメガネをかければ解決する問題ではありません。子どもの近視を早期に発見し、進行を抑制することは、将来の重篤な眼病を予防することに直結します。

 

未来の視力を守るために、今すぐ一歩を踏み出そう

通学途中の女の子と男の子

近視パンデミックは、私たち自身のライフスタイルが引き起こした現代病です。しかし、近視は予防・抑制ができる病気です。今日から「3つの鉄則」を意識し、デジタル機器との付き合い方、そして屋外活動の時間を意識的に変えていきましょう。子どもの健康な視力を守ることは、将来の目の健康と豊かな生活を守ることにつながります。静かに進行するこの健康危機に対し、家庭から具体的な対策を一歩ずつ実行していきましょう。

参考文献

大切な子どもの目と未来を守るwebメディア 子どもの近視ナビ

 

 

この記事を書いた人

山本 エミ

Webライター、編集者。学生時代は両目視力2.0をもちながら、現在は左右の目の視力差が大きい「不同視(ガチャ目)」に悩む日々。現代病である疲れ目など、目の健康に役立つ記事を中心に執筆している。

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