
視覚障がい者の雇用について考えた際、
「見えないのに仕事が出来るの?」
「身近に視覚障がい者がいないから想像できない」
という方も多いと思います。
そこで考えられたのが視覚の状態を問わず楽しめるボードゲーム「グラマ」を通して視覚障がい者とコミュニケーションをとり、知ってもらった上で企業と当事者のマッチングをして一緒に出来る仕事を探すという新たなサービスです。
目次
視覚障がい者雇用の現状
40人以上の社員が在籍する企業には遵守しなければならない、障がい者雇用の法定雇用率が定められています。そしてその法廷雇用率は障がい者雇用促進法の改正により今後引き上げられる予定です。2025年1月現在2.5%ですが、2026年7月には2.7%に引き上げられます。
しかし、日本に推定30万人以上いるといわれている視覚障がい者の就労はまだまだ進んでいるとは言えません。私も何度か障がい者専門の職業安定所を利用しましたが、マッサージの資格を取らないとほとんど就職先がない状況でした。
雇用が進まない要因
なぜそのような状況が生まれるのでしょうか。
企業の採用担当者が
「まずどこからどのように採用活動を始めたらいいかがわからない」
「どのような障害配慮を行ったらいいかがわからない」
「これまで精神障害のある方を中心に雇用してきたが、中々定着率が安定しない」
「現場の周囲の従業員とのコミュニケーションが上手くいかない」
などの要因により採用が進んでいない現状があるようです。
視覚障がい者雇用専門の総合サポートサービス開始
現状の課題から“『見ても見なくても見えなくても楽しめる』を増やして、一緒にワクワクする世界へ”を理念に掲げ、視覚障がいのある人もない人も楽しめる物の開発やイベントの主催、研修の実施をしている「一般社団法人ビーラインドプロジェクト」とPCを利用した視覚障がい者の職能開発訓練を中心とした社会福祉事業を行う「社会福祉法人日本視覚障害者職能開発センター」が提携し、視覚障がい者雇用専門の総合サポートサービスを開始されました。
全体の総合的なマネジメントと研修部分をビーラインドプロジェクトが、視覚障がい者雇用にまつわる専門的なコンサルティングや助成金、ジョブコーチ派遣手続き等に関する情報提供を「日本視覚障害者職能開発センター」が担当するそうです。
サービスを進めていく上でのポイント
上記2社ではこのサービスを進めていく上で、以下の3つが大きなポイントだと考えられています。
1.採用後の定着率の高さ
「日本視覚障害者職能開発センター」が就労定着支援をおこなっている視覚障がい者が就職して3年後の定着率は、約90%を達成。
2.環境整備を中心とした障害配慮
視覚障害のある従業員への障害配慮は主にPCソフトの整備などの環境整備が中心となっているため環境が整っていればパフォーマンスを発揮しやすくなる。
3.助成金の豊富さ
環境整備を整えるための助成金など、視覚障害のある従業員やそのサポートに対して活用できる助成金が豊富にある。
視覚の状態を問わず楽しめるボードゲーム「グラマ」
上記のポイントからも視覚障害についての理解と事前にどのような環境が必要なのかがわかればもっと雇用が進むはずです。そのきっかけとして「グラマ」を活用した障害理解研修が用意されています。
「グラマ」は、一般社団法人ビーラインドプロジェクトが視覚の状態を問わず重さとコミュニケーションで誰もが楽しめるようにと作られたボードゲームです。
それぞれ重さの違うおもりが入ったきんちゃく袋を配られた4人のプレイヤーが、手持ちのきんちゃく袋の重さをお題に沿って互いに伝えあいながらおもりの量を調整し、全員のきんちゃく袋の重さが同じになるように調整していく新感覚ボードゲーム。
「GOOD DESIGN NEW HOPE AWARD 2022」と「第1回 Boardgame Japan Cup」を受賞し、これまでに視覚の状態を問わず楽しめるイベントや研修を行ない3000人以上の方々が体験されたそうです。
「グラマ」を活用した研修の後のプラン
「グラマ」を活用した障害理解研修の後は企業のさまざまな課題に合わせて複数のプランが用意されていて
「視覚障がい者の就労支援員による配属先の業務切り出しコンサルティング」
「障がい当事者と周囲の従業員のチームビルディング研修」
「視覚障害専門のジョブコーチの派遣手続きサポート」
などサポート体制は充実しています。
終わりに
私は以前「視覚障がい者はマッサージの資格を取らないと就職先はほとんどない」と言われたことがあります。視覚に障害を持つ友人でもマッサージや鍼灸以外の仕事をしている人はほとんどいません。
そんな状況を変えようと始められた視覚障がい者雇用専門の総合サポートサービスにより視覚障がい者の就労機会の増加と職業選択が増加することを期待しています。