最近、目の疲れや目の痛みなどの不調を感じていませんか?新型コロナウイルスの影響で、パソコンを活用したテレワークスタイルやオンライン授業が増えています。もともとパソコンを使う仕事をされていた方も、会議や商談がリモートになったことで、さらに画面を見る時間が増えてしまったのではないでしょうか。
さらに、離れて暮らすご家族やお友達ともパソコンやスマートフォンを介したコミュニケーションの機会が増えているとしたら、必然的に画面を見る時間が増えてしまいますよね。休日も屋内で過ごすことが多い現在、それにともなって目の不調を感じる人が増えているようです。様々な調査結果や研究結果をもとに、新型コロナウイルスによる自粛生活と目の健康について解説します。
目次
自粛生活で目に不調!?調査結果
今年行われた調査では、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の前から後にかけて、テレワークを導入している企業は約2.5倍に増加しています [1]。また、新型コロナウイルスの影響で休校中の高校生の14%、大学生の46%はオンライン授業の経験があるそうです [2]。そして、「外出自粛が続くことによって疲れを感じることが増えた体の部位はどこか」を調べた調査結果では、肩や首などを抑えて「目」に疲れを感じるという人が最も多いということが分かりました [3]。
スマホやパソコンの使用で目に不調が出る原因は?
スマホ(スマートフォン)やパソコンといった液晶ディスプレイをもっている機器は、VDT(Visual Display Terminal) 機器と呼ばれます。VDT機器を使用する時間が増えるにともなって、目や肩、首に悪影響を及ぼす可能性があります。実は、仕事でVDT機器を使用する人の7割以上は肩や首のコリを感じており、目の疲れや痛みを感じている人はなんと9割以上にものぼるそうです [4]。
スマートフォンやパソコンを使用すると、同じ姿勢で近い距離を長時間見ることが増えます。近くを見る時は目の筋肉である毛様体筋を伸縮させて水晶体の厚さを変えることで、ピントを調整しています。長い時間、近くを見続けると筋肉に力が入り続けるため筋肉がこり固まり、これが目の疲れの原因となります。
一時的な目の疲れなら、睡眠などで目を休ませれば解消されるため、身体への影響は小さいです。しかし、目の疲れが継続し眼精疲労になってしまうと、目の痛みや視力低下、肩こり、頭痛のように全身におよぶ症状が出てしまいます。
また、スマートフォンやパソコンの使用時は背中を丸めて姿勢が悪くなりがちです。頭は大変重いので、悪い姿勢を続けると肩や首に負担がかかるため、それによっても肩や首を痛めます。
その症状、スマホ老眼かも!?
近年、20代や30代の人の間でも「老眼」と同じような症状を感じることが増えているようです[5]。本来、手元が見づらくなる症状のことを老眼(老視)といい、これは加齢による老化現象の一つです。一般的には40代くらいから「老眼」を自覚することが多いようです。
しかし、老眼になっていないにもかかわらず同じような症状が現れる人が増えているそう。これは、スマートフォンなどの至近距離の画面を見る時間が長くなることで、毛様体筋がこり固まりピント調節がスムーズに行われなくなるからと考えられます。老眼と似た症状なので、「スマホ老眼」といわれています。寝る前にスマートフォンを見る時間が増えて、「スマホ老眼」になったりしていませんか?
加齢による「老眼」はピント調節をする筋肉そのものや水晶体の硬化など老化が原因となっているため、元に戻すことは難しいですが、「スマホ老眼」はピント調節を行う毛様体筋の働きを取り戻せば改善が期待できます。長時間の使用を控えることは基本ですが、目の周囲を温めて毛様体筋のこりをほぐしたり、目のストレッチ、目に良い栄養を摂ることもおすすめです。
目の疲労感対策その①「アントシアニン」研究情報を紹介
アントシアニンは、ビルベリーやナスに含まれる青紫色の天然色素で、身体のさび付きを防ぐ抗酸化作用を持ちます。
スマートフォンやパソコン作業を続けると、目に疲労感を感じます。アントシアニンを4週間にわたって摂り続けると、摂らない人と比べてスマートフォンやパソコン作業によるピント調節力の低下を防ぎ、目の疲労感が改善したという研究結果があります [5]。
他にも、1日4時間以上パソコンのモニターの光を浴びることによる眼精疲労の自覚症状をもつヒトに、アントシアニンを含むビルベリーエキス160mgとそのほか25種類の成分を含むサプリメントを1日3粒、12週間摂取してもらうというパソコンのモニター光による眼精疲労に関する研究があります。
その研究によると、眼精疲労についてのアンケート全20項目のうち、18項目で改善がみられたとの報告もあります [6]。このことから、アントシアニンを含むビルベリーエキスが、パソコンなどのVDT作業による急性および慢性の眼精疲労の自覚症状を軽減する可能性があることが示されました。
目の疲労感対策その②目のストレッチですっきり
目の疲労回復にはぐっすり眠って目を休ませるのが一番ですが、仕事中や授業の間など、眠っている場合ではない時もあります。そんな時におすすめなのが、目のストレッチ。実は、疲労回復や疲れにくい目を育てるために効果的です。
今回は、目の疲れを回復する基本のストレッチを紹介します。
※眼圧が高い方は、目に力を入れ過ぎないようにしてください
※目に病気のある方は、眼科の先生に相談の上実施してください
※ストレッチ中に目の痛みを感じた場合はトレーニングを中止して、眼科を受診してください。
①まばたき…目をギュッと閉じてパッと開く
②ぐるぐる…視線を右→上→左→下と動かしたら、今度は反対に左→上→右→下と動かす
③えんきん…20㎝~30㎝先にあるモノと5m~10m先にあるモノを交互に見る
ポイントは、眼球を動かす筋肉やピント調節に関わる筋肉をしっかり動かしてあげること。目の周りの血流が良くなり凝りがほぐれます。
※頭を動かさず視線だけを動かすのがポイント!
疲れを感じ始めた頃にストレッチしても良いですが、できれば毎日の習慣として、一日の始まりやお昼の休憩時間などに続けてくださいね。
最後に
パソコンやスマートフォン作業による疲れは長時間近くを見続けることによるもの。画面とは50㎝程度離れ、連続での使用は50分程度までにとどめるようにしましょう [7]。
※ 本サイトにおける各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。個別の症状について診断、治療を求める場合は、医師より適切な診断と治療を受けてください。
【参考文献】
[1]東京商工会議所 「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」調査結果
[2]LINEリサーチ
[3]ライオン株式会社「外出自粛下の“目の疲れ・不調”に関する実態調査」
https://lion-corp.s3.amazonaws.com/uploads/tmg_block_page_image/file/7181/20200522.pdf
[4]厚生労働省 「技術革新と労働に関する実態調査」
[5]トレンド総研「新たな現代病!?『スマホ老眼』の実態を調査」
[6]小齊平 麻里衣,他.薬理と治療,Vol.43 no.9 2015https://diamond.jp/articles/-/203930
[7]濱舘直史, 他. Progress in Medicine, 34, 2041-2051, 2014.
[8]日本眼科医会