目の症状や病気と予防・治療法

緑内障ってどんな病気?治療方法や薬についてお薬研究家の原英彰教授が解説

緑内障の見え方の画像

「緑内障」という病気をご存知ですか?

名前の由来は諸説ありますが、緑内障患者の眼が緑色に見えたことに由来するといわれています。以前取り上げた「白内障」と名前が似ていますが全く異なる病気です。緑内障は治療が遅れると失明に至ることもある眼の病気で、日本人の視覚障害ならびに中途失明原因の第1位は緑内障によるものです。[1]

緑内障は恐ろしい病気ですが、適切な治療を行うことで病気の進行を遅らせることができます。今回は、緑内障の症状についての解説や治療薬、さらには最新の研究情報を紹介します。

緑内障ってどんな病気?

緑内障を発症すると、眼はどのようなダメージを受けるのでしょうか。まずは、私たちは眼から得た情報をどのように処理しているのかについて説明しましょう (図1)。

水晶体を通り網膜に届いた光の情報は、網膜に存在する視細胞という細胞で電気の信号へと変換されます。そして、網膜の様々な細胞を通り、最後に視神経を通じて脳へと伝達されます。こうしてようやく「ものが見えた」と認識されます。すなわち、視神経は網膜と脳を繋ぐ電線の様な役目を果たしています。

視神経の働きを説明した図

しかし視神経が様々な要因によってダメージを受けてしまうと、脳に「見えた」という情報が届かなくなり、一部分が見えなくなってしまいます(視野の欠損)。これが緑内障の特徴的な症状です。また恐ろしいことに、一度視神経がダメージを受け視野が欠けてしまうと、現在の医療では二度と元に戻すことができません。そのためにも、早期発見と早期治療が必要です。

なぜ、視神経はダメージを受けてしまう?

なぜ視神経がダメージを受けると緑内障になるのでしょうか。この記事では代表的なメカニズムについて紹介します。

突然ですが、眼科を受診した際、機器で眼に空気を吹き付けられた経験はありませんか。実は、あれは「眼圧」というものを測定しています。眼圧は緑内障の代表的な危険因子なのです。

眼の中には「房水」と呼ばれる体液が存在します。房水は眼の中で産生と排出が繰り返され、それによって眼は一定の圧力を保っています。この時、眼にかかる圧力を眼圧といいます。しかし、房水の産生と排出のバランスが崩壊し、眼の中に過剰な房水が蓄積されると、眼圧が上昇します(図2)。

眼圧上昇の説明図

このような眼圧の上昇に伴い、視神経が圧迫されてダメージを受けることが緑内障の病気になるメカニズムの1つとして考えられています。[2, 3]

緑内障は自覚症状に気づきにくい!

緑内障は大変な病気ですが、さらに厄介な点があります。この病気は、じわじわと見えない部分が広がっていくため、なかなか症状を自覚することができないのです。これは、片方の眼が見えなくても、もう片方の眼で視野を補うため「見えている」と錯覚してしまうからです。さらに、緑内障では周辺部の視野が欠けていても、中心部の視野が比較的維持されるために、視力自体は保たれます。[4]

「視力が維持されるのであれば良いのでは?」と思ったあなた、要注意です。これがもし、車を運転する場合ならどうでしょうか。緑内障に気づかず、視野の中心部だけしか見えない状態で運転をすれば、左右から飛び出してくる人などに瞬時に気づくことができず、交通事故を引き起こす恐れがあります。

実際、40歳以上の男女1万人のドライバーを対象にした調査では、緑内障による視野の欠けを自覚することはめずらしいということをきちんと知っているのは、ドライバーのうち約4割しかいなかったことが明らかになりました。[4]

早期発見・早期治療が重要!

では、私たちはどのように緑内障から身を守れば良いのでしょうか。残念ながら、緑内障の予防は困難である上、現在の医療では緑内障によって一度失った視野を元に戻すことはできません。[5]

したがって、早期発見・早期治療によって、病気の進行を遅らせることが重要となります。緑内障の早期発見のためにも、定期的に眼科を受診し、視力検査だけではなく眼底検査や視野検査なども行うと良いでしょう。

どんな治療薬があるの?

緑内障の一般的な治療は、上昇した眼圧を下げることです。現在は、手術や点眼薬による眼圧下降療法が知られています。
特にここでは、緑内障の治療薬について紹介します。現在使用されている眼圧下降薬には多くの種類があります。それぞれ働きや効果が異なるため、眼科では患者さんに応じて適切な治療薬を選択しています。

緑内障の薬は、あくまで症状の進行を遅らせることを目的としていますので、薬によって症状が改善することは残念ながらありません。しかし、やめると更に症状は悪化してしまうため、治療薬はずっと続ける必要があります。代表的な緑内障薬を紹介します。

房水の流出を促進するもの

ラタノプロスト:全身性の副作用はほとんど無く、幅広く利用されています。ただし、まつ毛の伸長作用などの副作用があるため、薬液が眼以外の他の部位に付着しないように、点眼後には涙嚢(眼と鼻の付け根当たりの部分)を清潔な手で押さえると良いでしょう。同じようなはたらきを持つ点眼薬には、タフルプロストビマトプロストなどもあります。

房水の産生を抑制するもの

チモロールマレイン酸:こちらもしばしば用いられる薬剤ですが、気管支喘息やその既往歴のある患者さんなどには用いることはできません。

緑内障患者さんは上記をはじめとする複数の点眼薬を長期にわたって使用する可能性があります。そこで近年では、患者さんの手間を軽減するため、2種類の点眼薬を1つにした「複合剤」という種類の点眼剤も開発されています。[6] その1つに、ラタノプロストとチモロールとを配合したものもあります。このように、製薬会社では患者さんの使いやすさを考慮した薬づくりも行なっています。

緑内障研究の動向について

近年、緑内障の研究として、患者に近い症状を持つ動物(病態モデル動物)を使った研究が盛んに行われています。その例として、私たちの研究グループにおける最新の研究内容を紹介します。

私たちは、サルの眼の正面からレーザーを照射し、房水の排出場所を詰まらせることで眼圧が上昇する実験モデルを開発し、緑内障の患者さんと同じようなメカニズムで視神経が障害される過程を研究しています (図3)。[7]

視神経萎縮の様子の説明図

緑内障は眼圧以外にも多くの危険因子が関与するとされており、病気のメカニズムにはまだまだ多くの不明点が残されています。そこで私たちは、このモデルを使て緑内障の病気のメカニズムを解明し、視神経をダメージから守る新しい薬の研究開発にも取り組んでいます。

さらに、上で述べたように、緑内障は患者さんが自覚症状に乏しいという点も発見が遅れる要因です。そこで私たちは、緑内障の進行度合いを体液(血液や房水など)で診断できる手法(バイオマーカー)の研究にも挑戦しており、より簡単で手軽に緑内障を発見できる方法の確立を目指しています

まとめ

緑内障では、一度失った視野は元には戻せないことから、早期発見・早期治療が極めて重要となります。加齢と共に緑内障は増加する傾向にあるので、40歳を超えたら定期的な眼科の受診を行うのが良いでしょう。

参考文献
[1] Morizane Y. et al. Jpn J Ophthalmol. 2019 Jan;63(1):26-33.
[2] 公益社団法人 日本眼科医会ホームページhttps://www.gankaikai.or.jp/health/49/04.html
[3] 参天製薬ホームページhttps://www.santen.co.jp/ja/healthcare/eye/library/glaucoma/nattoku/about-gla/eye-pressure/
[4] ドライバーに気を付けてほしい緑内障のリスク  http://www.myclinic.ne.jp/imobile/contents/medicalinfo/gsk/top_topic/topic_104/mdcl_info.html
[5] 千寿製薬ホームページ
http://www.senju.co.jp/consumer/note/disease_ryokunai.html
[6] たき眼科ホームページ
https://takieyeclinic.com/ryokunai/
[7] Shimazwa M. et al., PLoS One. 2012; 7(1): e30526.

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この記事を書いた人

原 英彰

薬学博士/薬剤師

岐阜薬科大学副学長。薬効解析学研究室教授。製薬会社の研究所で抗片頭痛薬、脳卒中治療薬、抗緑内障薬など新薬の研究開発に従事。現在は脳や目の病気の解明とその治療薬の研究、健康食品の研究などを行っています。

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