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目の症状や病気と予防・治療法

近見視力 ~近くを見るのに必要な視力~

近くを見るのに必要な「近見視力きんけんしりょく」って知ってる?

視力には、遠くを見る遠見視力と近くを見る近見視力があります。例えば、教室で遠くの黒板の文字を見るのに必要なのは遠見視力、ノートや教科書など近くの文字を見るのに必要なのが近見視力です近見視力は、手を伸ばした範囲内の作業(近業といいます)の時に使われています。近見視力に問題があると、近くのものがはっきりと見えないだけでなく、目の疲れ、頭痛や肩こりなどの症状、集中力の低下などの弊害も起こりやすくなります。

また、日本政府は、ICT教育環境整備5か年計画(2018~2022年度)を策定し、教育現場ですべての児童生徒に情報端末を配備し、2020年度からタブレット端末を使った授業を実施する計画です。これにより、学習形態は「黒板中心」から「タブレット中心」へと変化します。

しかし、学校では「黒板の文字を判読する」遠見視力検査しか実施されておらず、「タブレット画面の文字を判読する」ために必要な近見視力が不良の子どもは、学習能率の低下が懸念されます。

日常生活では、こんなに近見視力を使っています

読書、筆記、スマートフォン操作、パソコン作業、料理など、私たちの日常生活は、世代を問わず近業をしている時間が大半を占めています。このようにみると、近見視力を普段いかに長時間使っているかがよくわかります。

近くを見続けることは、もともと目に大きな負担をかけています。その上、近見視力に問題があるとなると、目への負担がさらに増えてしまうことになるのです。

学校の視力検査の結果はよかったけど近くが見えにくい

一般的な視力検査は、5m離れた視標(しひょう)で測定する遠見視力検査です。近見視力検査は、眼前30cm(または50㎝)の位置に視標を提示して検査します。

学校の健康診断では近見視力検査が行われないため、「遠くが見えれば、近くも見えている」と思いがちなので、近見視力不良には気付きにくいようです。

大人の場合は、VDT作業に従事する人にはVDT健診が義務づけられており、その項目に近見視力検査(50㎝)があります。

オンライン化によりタブレット端末を使った授業を開始するなら、大人同様に、学校で近見視力検査を行い、近くが見えにくい子を見つけてあげるべきです。

あなたの近見視力は大丈夫?

「本や新聞が読みにくい」「近くがぼやけて見える」。そんな人は、近見視力に何らかの問題があると考えられます。ここでは、気を付けたい点について解説します。

老眼(老視)は年齢による近見視力の衰えです

老眼(老視)とは、加齢により近くのものにピントが合いにくくなることで、目の水晶体の弾力が失われたり、水晶体を支えている毛様体筋が衰えるために起こります。小さな文字を読み間違えたり、近業の後に疲れ目や肩こり、頭痛などがする場合も老眼のサイン40歳以上で、気になる症状があるという人は、眼科を受診して適正な治療や矯正を行うことが大切です。

子どもの近見視力不良は気付きにくい

学校では遠見視力の測定しか行わないため、近見視力不良はなかなか発見されませんしかも、近くが「はっきりと見える」という経験を持ったことのない子どもは、見えていなくてもそれが普通だと思っています。よく見えていないことが原因で、学習や運動の能力をうまく発揮できずにいるケースも実際にあります。視力の発達は、6歳頃に完成するといわれています。現在、近見視力検査は行われていませんが、周囲の大人が子どもの日常生活を観察することにより、目の異常や疾病の早期発見につながります。

読書や文字を書く時はこんなところをチェック

□文字や行をとばしてしまうことがある
□目を細めたり、目をこすったりする
□頭を動かして読む
※気になるところがあれば、眼科での近見視力検査を受けましょう。

まとめ

近見視力は、日常生活に欠かせない視力であり、学習や仕事の能率にも大きな影響を及ぼします。日頃から目を疲れさせないよう心掛け、気になる症状があれば、眼科を受診するなど早めの対策を行いましょう。

※2018年12月21日の記事を更新しました。

監修:桃山学院大学法学部 健康教育 教授 高橋 ひとみ先生

この記事を書いた人

メノコト365編集部

目の健康に関するあらゆる情報を発信しています。子どもたちが健やかな目で生活できるように、小さなうちから正しい健康習慣を身につけてもらうための健育イベントを開催するなど、目の健康について意識を高めるきっかけになることを願い様々な活動をしています。

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